NVIDIA ロボティクス向けエッジAI「Jetson」と開発を効率化する「Isaacシミュレータ」と「Omniverse」の拡充を発表

NVIDIAは「GTC 2023」において、クラウドサービス「Omniverse Cloud」をMicrosoft Azureで提供することを発表した(関連記事「NVIDIAがアマゾンロボティクスの物流倉庫等のデジタルツイン事例を紹介「Omniverse Cloud」をMicrosoft Azureで提供へ」)。
これは、AIベースのロボットの開発、および、管理するためのNVIDIAのプラットフォーム「Isaac Sim」にアクセスしやすくなることも意味する。そして併せて、「Jetson Orin モジュール」の全てのラインナップが利用可能になったことも発表し、エッジAI、および、ロボティクスアプリケーションに対して飛躍的なパフォーマンスを提供するとしている。

NVIDIAの創業者/CEOであるジェンスン フアン(Jensen Huang)氏は基調講演で「世界の主要な産業は物理的なものを製造していますが、それらをデジタルで構築したいとも考えています。Omniverseは、デジタルとフィジカルを橋渡しする産業向けデジタライゼーションのプラットフォームです」とOmniverseが担う役割を述べている。


「Isaac Sim」グローバルチームがリモートで共同作業が可能に

現実の世界でロボットを構築するためには、ゼロからデータセットを作成する必要があり、時間と費用がかかるばかりか展開にも時間がかかってしまう。そのため開発者は合成データ生成 (SDG)、事前トレーニング済みのAIモデル、転移学習、ロボティクスシミュレーションに注目。これを活用することでコストを削減、展開に要する時間を短縮している。


「Omniverse Cloud」がMicrosoft Azureで提供されることで、あらゆる場所のAzure開発者が高度な機能を手に入れることができるようになる。これにより、企業はSDGなどのロボティクスシミュレーションワークロードをスケールできるようになる。開発/運用チームは「Isaac Sim」を活用しながらコード変更を共有リポジトリで作業できるため継続的な統合と運用を行うことができるようになる。



Isaac Simは、フォトリアルで物理的に正確な仮想環境を推進するロボティクスシミュレーションアプリケーションおよびSDGツール。



NVIDIA Omniverseプラットフォーム上でIsaac Simを使用すると、グローバルチームがリモートで共同作業を行うことができ、ロボットの構築、トレーニング、シミュレーション、検証、展開を行うことができる。


また、クラウド上でIsaac Simにアクセスできるようになることで、企業のチームメンバーは最新のロボティクスツールとソフトウェア開発キットにアクセスし、より効果的に共同作業を行うことができるようになる。

Omniverse Cloudは、自己管理型コンテナーにIsaac Simを使用する既存のクラウドベースでの使用、仮想ワークステーションやAWS RoboMakerなどの完全に管理されたサービスでのIsaac Simでの使用に加えて、Microsoft Azureからのアクセス方法が追加され、企業に対して今より多くのを選択肢を提供するとしている。

また、Isaac SimのSDGエンジンであるOmniverse Replicatorを活用することで、エンジニアは量産品質の合成データセットを構築、堅牢なディープラーニング認識モデルをトレーニングできる。


Amazon、BMW GroupもIsaac Simを使用

AmazonではOmniverseを使用し、現実世界へ展開する前にデジタルツインシミュレーションを使用して自律型倉庫の自動化、最適化、計画立案をおこなっている。Amazon RoboticsはIsaac Simを使用して、最新の自律走行搬送ロボット (AMR) であるProteus機能改善も行っており、これによりAmazonはコストと時間の効率的な方法で数千件の注文に応えることができるようになった。



BMW Groupは、オートメーション企業のidealworksと協力し、OmniverseのIsaac Simを使用してAMRや工場ロボットのテストやトレーニングのための合成データの生成やシナリオの実行を行っている。




Jetson Orinはあらゆる範囲のエッジAIおよびロボティクスアプリケーションをサポート

NVIDIA Jetson Orinベースのモジュールは、1秒あたり最大40TOPS(兆回/秒)のAIパフォーマンスを提供する最小JetsonモジュールJetson Orin Nanoから高度な自律動作マシン向けに275TOPSを提供するJetson AGX Orinまでラインナップを揃えており、あらゆる範囲のエッジAIおよびロボティクスアプリケーションをサポートする製品として利用可能となっている。


新しいJetson Orin Nano開発者キットは、前世代のJetson Nanoと比較して80倍のパフォーマンスを実現。開発者が高度なロボティクスモデルを実行できる。電力効率に関しても1ワットあたりのパフォーマンスは50倍となったため、電力効率に優れたエントリーレベルのAI搭載ロボット、スマートドローン、インテリジェントビジョンシステムなどを構築・展開が出来るようになる。

Jetsonプラットフォームで実行されるNVIDIA Isaac ROSやDeepStreamなどのアプリケーション固有のフレームワークは、Omniverse上のIsaac SimやNVIDIA Metropolisなどのクラウドベースのフレームワークと密接に統合されている。また、最新のNVIDIA TAO Toolkitを使用して、NVIDIA NGCカタログから事前トレーニング済みのAIモデルをファインチューニングすることで、開発者が展開までの時間を短縮できる。



現在、Amazon Web Services、キヤノン、Cisco、Hyundai Robotics、JD.com、John Deere、小松製作所、Medtronic、Meituan、Microsoft Azure、Teradyne、TK Elevatorなど、 NVIDIA Jetsonプラットフォームは100万人を超える開発者と6,000を超える顧客が活用。

ハードウェア、AI ソフトウェア、アプリケーション設計サービスからセンサー、コネクティビティ、開発者ツールまで、70以上のJetsonエコシステム パートナーがOrinベースのソリューション、幅広いサポートを提供している。


Jetson Orin Nano開発者キットは2023年4月に出荷を開始。日本国内では2023年3月22日からを菱洋エレクトロ株式会社、株式会社ネクスティ エレクトロニクス、株式会社マクニカが先行予約販売を開始している。
Jetson Orinシリーズについては別の記事「【NVIDIA Jetson Orin Nanoレビュー(1)】予約販売開始!新時代のAIエッジデバイスを最速で「開封の儀」」で詳細を解説し、レビューをお届けしているのでそちらも参照していただきたい。

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ロボスタ編集部

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