NVIDIAは開催中の「GTC2023」基調講演で、アマゾンロボティクスのスマート物流倉庫にデジタルツイン「Omniverse(オムニバース)」が活用されていることを改めて詳しく発表した。
そして、企業がコア製品とビジネスプロセス全体でデジタル化を統合できるようにするPaaS(Platform as a Service)プラットフォーム「NVIDIA Omniverse Cloud」が一部の企業で提供開始されたことも発表した。Omniverse Cloudの最初のクラウドサービスプロバイダーは「Microsoft Azure」となる。
基調講演でジェンスンフアン氏は「Omniverseはデジタルとフィジカルを橋渡しするためのプラットフォームで、企業は製品や工場をデジタルで設計し、構築し、運用して最適化した上で、物理的な製品や工場に反映している」とデジタルツインの導入が進んでいて、効率化とスピード、コスト削減に多くの企業が成功していることを語った。
その一例として、Siemens、Amazon Roboticsの導入事例などを紹介した。
■シーメンスの工場のデジタルツイン事例
Amazon Roboticsの工場全体デジタルツイン化事例
特にAmazon Roboticsの事例では、同社の担当者が解説し、新たに導入した自律搬送ロボット「プロテウス」の学習や移動制御、群管理、物流製品のラインの流れ、アームロボットのトレーニングを含めて、工場とその機器類をデジタルツイン化することで、大きな効果を生んでいることを紹介した。
■Amazon Roboticsによる物流倉庫のデジタルツイン事例
棚ごとロボットが入出荷スタッフの元に運んで来るシステムはAmazon Roboticsが最初に開発・導入したもの。
デジタルツインで設計、運用、棚や商品保管位置の変更などがデジタル空間で試されてから、リアル現場に実装される。これに新たに「プロテウス」ロボットが加わった。
「プロテウス」もデジタルツインに組み込まれて、仮想空間で試され、学習、効率的な運用を検討する。
発送する製品の流れやアームロボットもデジタルツインで設計、変更、試行がおこなわれる。システムはNVIDIAの「Omniverse」や「Isaac Sim」(シミュレータ)「Omniverse Replivcator」が活用されている。
これらOmniverseをCloudで提供するのが「Omniverse Cloud」。これによりAzureクラウドサービスの規模とセキュリティを備えたOmniverseソフトウェアアプリケーションとNVIDIA OVXインフラストラクチャのフルスタックスイートにアクセスできるようになる。
動画は基調講演のタイムライン約57分あたりから視聴できる。
GTC2023公式サイト
産業用メタバースのクラウド環境とプラットフォーム機能を提供
NVIDIAとMicrosoftはMicrosoft Azure上で提供するOmniverse Cloud通じて、産業用メタバースアプリケーションの設計、開発、展開、管理を行うためのフルスタッククラウド環境とプラットフォーム機能を提供する。
PaaSに含まれている基盤アプリケーションは下記の通り。
Universal Scene Description (USD)フレームワークに基づいたアプリケーションを組み立て、産業用仮想世界を構成し、デジタルツインを作成。
●Omniverse USD-GDN Publisher
製品コンフィギュレーターなどのインタラクティブな USDアプリケーションをNVIDIA Graphics Delivery Networkに公開し、デバイスや場所を問わずストリーミングできるようにする。
●NVIDIA Isaac Sim™
AIベースのロボットのトレーニングとシミュレーションを行う。
●NVIDIA DRIVE Sim™
自動運転車をテストおよび検証する。
●Omniverse Replicator
3D合成データを生成し、コンピュータービジョンAIネットワークのトレーニングと精度を加速する。
「Omniverse Cloud」は2023年後半から利用可能に
尚、NVIDIA OVXコンピューティングシステムを搭載したOmniverse Cloudは、2023年後半にMicrosoft Azureで利用可能になるとしている。
Omniverse Cloud
GTC2023 基調講演(日本語字幕付き)
NVIDIA and Microsoft to Bring the Industrial Metaverse and AI to Hundreds of Millions of Enterprise Users via Azure Cloud