セコム株式会社と、株式会社ディー・エヌ・エーは、ロボットを使ったシニア向けのコミュニケーションサービス「あのね」を共同で開発し、4月3日(月)に発売開始する。
ロボットにはユカイ工学のコミュニケーションロボット「BOCCO emo」を使用し、挨拶やリマインダー等はシステムが支援して自動で発話するが、利用者との会話はオペレータセンターでスタッフが遠隔でおこなうため、心の通った会話を届けることができる。
また、家族との通話を利用者は「BOCCO emo」を通しておこなうことができる。「BOCCO emo」には通信用SIMカードがセットされていて、Wi-Fi環境は不要。届いたら、すぐに使い始めることができる。なお、カメラはあえて搭載していない。
システムはセコムとDeNAが開発し、オペレータセンターはDeNAが24時間365日体制で担当する。
料金は、「あのね」仕様の「BOCCO emo」本体が初期費用と52,800円、ほかに月額として利用料金4,950円が毎月かかる(ともに税込)。
セコムとDeNAは、発表に先がけて、報道関係者向けに説明会と体験会を開催した。
■「あのね」イメージ紹介動画
高齢化社会の健康促進と安心見守りにロボットを活用
高齢化の進展に伴い、一人暮らしの高齢者の数は年々増え続けている。独居高齢者の約半数は2、3日に1回以下しか会話をしていないというデータが内閣府「高齢者の健康に関する調査」(平成29年度)にあり、孤立が続くと認知機能や身体機能の低下をはじめとしたリスクにつながる恐れがあることから、同社らは早期の対策ソリューションが必要と考えた。
ロボットとの会話や、見守りを通じて、シニアのQOL(Quality of life=生活の質)向上を目指す。同社ら担当者は「いつも誰かとつながっている安心感を感じていただきながら、孤独の解消を図り、リスクの低減を目指します」とコメントしている。
「あのね」では利用者の生活リズムに合わせた声がけをロボットが自動で行う。利用者からの話しかけには、コミュニケーターが内容に応じた返信操作をする。そのため自然な雑談を楽しむことができる。会話内容にはセコムが2015年から多くのシニアのお困りごと解決をサポートしてきた「セコム暮らしのパートナー久我山」で培った知見や、400名のモニターから得た意見や感想などが活かされている。
■体験会で紹介されたシニアと「BOCCO emo」(あのね)との実際の会話
「あのね」の特長
1.24時間365日、人によるリアルな返信操作
利用者に配信するメッセージは24時間365日、コミュニケーターがシステムを活用しながら作成して返信する。利用者のは自然なおしゃべりが可能となる。メッセージの内容は2015年から10,000件以上、シニアのお困りごと解決をサポートしてきた「セコム暮らしのパートナー」で培ってきた知見が活用されているという。
2.利用者に寄り添ったメッセージの配信
一人ひとりの利用者の生活パターンに合わせた最適なタイミングで、1日約10回、定期的な声がけをおこなう。メッセージは朝・昼・夜など生活リズムに合わせた声かけや服薬の時間のお知らせといった注意喚起、雑学情報などを日替わりで配信。ご利用者の生活リズムを整えながら、人とつながる安心感を、楽しさとともに提供する。
利用者との会話内容は、家族がスマートフォンで音声・テキストで確認することが可能で、家族は元気や体調の変化、生活の様子などを確認することができる。また、家族から利用者にメッセージを配信することもできる。
3.誰でも気軽・手軽に使える設計
事前に実施した実証実験での反応をもとに、簡単ですぐに使えるよう「BOCCO emo」を「あのね」仕様にカスタマイズして送られる。初期設定は不要で、電源を入れるだけで使用できるほか、人を検知したタイミングだけで発話する、音声コマンドの無効化(周辺の音を拾った意図しない動作を防止)、操作案内用のシールの同梱など、よりシニアの方に受け入れやすい設計をおこなった。
「あのね」サービスの仕組みと体験会での感想
利用者の発話に返事する場合の流れは下記の通り。定期メッセージは緑矢印の流れとなる。この図を追えばわかるが、基本的には、利用者の発話は音声データとして「BOCCO emo」の中でテキスト変換され、音声とテキストの両方がオペレーションセンターに送られる。オペレータはその返事をテキストでPC等で入力して返信、テキストで送られて「BOCCO emo」の中で音声変換してロボットが発話する。
このシステムの流れだと、オペレータは入力した返答が、正しく音声変換されたかを確認できない点が懸念される。間違って読んだ場合、利用者に正しく情報が伝わらないケースがある。
なお、テキストで返信した場合、通信には有利で即応性が向上するが、同社は返答に平均1分程度かかるとしていて、体験会で見た限りでは返信に時間がかかっていて、待たされる印象があった(高齢者であれば、問題に感じない人も多いかもしれないが、返信をする間に音を流すなり、何か考えている声を発話するなり、場を繋ぐ工夫が必要と感じた)。
■体験会でのデモ動画
せっかくセコムなので・・
また、セコムが提供しているので、もしも利用者が体調を崩していたり、急病で具合悪くなった場合、家族に通知したり、駆けつけるなどのオプションが設定されていることを期待したいところだ。両親にこのシステムをプレゼントすることを想定した場合、それを期待したいところでもある。しかし、セコムはホームセキュリティとは別のサービスとして割り切っているので、それらの対応は考慮されていない。その点も残念だったので今後の検討に期待したい。
いずれにせよ、高齢化や独居家族の課題は火急の課題であり、それをロボットで解決しようというサービスはとても重要だ。このようなサービスが普及することを期待しているし、応援したい。その上でもセコムのような信頼ある警備関連企業がこのようなサービスに取り組むことは意義があることだと感じている。
初期費用:税込52,800円 ※「あのね」仕様の「BOCCO emo」本体費用
利用料金:税込4,950円/月
■「BOCCO emo」仕様
サイズ:W95mm x D95mm x H141mm
重量:330g(ACアダプターを除く)
電源:100-240V ACアダプター
通信規格:LTE(SIM搭載)
付属品:ACアダプター
コミュニケーションサービス「あのね」
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。