大阪市森之宮の高齢者をセコムとコミュニケーションロボット「BOCCO」がサポート 気象・防災情報発信、日常の買い物を支援

「ロボティクスで、世界をユカイに。」を掲げ、数多くのコミュニケーションロボットやIoTプロダクトを企画・開発するユカイ工学株式会社は、大阪スマートシティパートナーズフォーラムの補助事業として、社会医療法人大道会・森之宮病院の協力のもと、セコム株式会社と大阪府大阪市城東区森之宮地域の高齢化における課題に対して、ICTを活用した防災・見守りサービスの実証実験を行ったことを発表した。

具体的には高齢者宅内に設置したコミュニケーションロボット「BOCCO」(ボッコ)を介して気象・防災情報や森之宮病院からの健康、医療に関する情報を含め、セコムのオペレーターからの情報提供や健康状況などの確認を行った。また、近隣のコンビニエンスストアで日用品の注文や配達などの買い物補助のサービスを行った。


高齢化率、独居率が高い大阪市森之宮

森之宮地域(大阪府大阪市城東区森之宮)は区内でも高齢者が32.6%と多く、独居率が47.7%に上り、毎年数名の孤独死が発生している(大阪府大阪市城東区地域別高齢者数データ)。地域の高齢化に加え、コロナ禍の影響も受け、近年は以前よりも住民間の接点も減り、大規模な災害が発生した場合の避難誘導にも課題を抱えている。この課題に対し、各個人へ効率的にサポートをするため、ICTを活用した防災・見守りサービスを検討するもスマートフォンの利用率が40%未満のため、特に高齢者(特に80代以上)への展開が困難な状況にあり、タブレットなどのデジタルインターフェイス以外のツールを模索していた。

コミュニケーションロボット「BOCCO」とは
「BOCCO」は家族間のコミュニケーションを助けるロボット。留守番中の子どもや離れて暮らす高齢の家族を見守ることができる。インターネット経由でスマホと音声メッセージのやりとりができ、「BOCCO」側から送った声の文字化、スマホから送った文字メッセージの「BOCCO」による読み上げができる。さらに、宅内に設置されたセンサの情報とBOCCOが連動し、外出先からドアや鍵の開閉、部屋の温湿度や照度をスマホに通知することができる。これにより、家族の様子を外出中でも知ることができ、忙しい毎日の中でも家族との何気ないコミュニケーションを楽しむことができる。



実施内容

主に独居高齢者を対象にコミュニケーションロボット「BOCCO」を活用し、気象・防災情報の発信やセコムからの情報提供を行った。また、健康状況についてロボット経由でヒアリングを行った。実施後の結果として以前よりも情報伝達の量が増えたか、防災の意識が高まったか、誰かとつながっている感覚が増えたかをアンケートで取得した。

宅内のBOCCO



買い物補助サービス

「お水1ケースと納豆2パックがほしい」など、欲しい商品を宅内のBOCCOに話しかけて注文すると、セコムが注文をとりまとめて店内のBOCCOから店舗店員に伝える。また、店内のタブレットでも注文内容を確認することもできる。注文内容を店員が確認後、受領確認と会計内容をBOCCOにメッセージを送信する。その後、自宅まで配達する仕組み。

今回の実験ではモニターがBOCCOを通じ店舗より事前にセール情報等を得て、商品購入に来店した。

BOCCOを介した注文フローイメージ



実験結果

下記の効果が確認された。5段階評価(5が高、1が低)アンケート結果


定性評価
・ロボットを通じた対話に対し「話し相手ができて楽しかった」と回答
・モニターの1名からは、オリジナルキャラクターを記載した手紙を受領するなど、総じて満足度は高かった。

その他
コロナ禍の影響でモニター数が少なかったこと、自身で買い物に行けるモニターであったため、買い物体験利用の所感が得られなかったが、買い物が困難な状況にある高齢者などの潜在利用希望者に向け、今後もサービスを展開していきたい。

実証実験概要
実施日程:2021年12月〜2022年3月31日
モニターの年齢:70代男性2名、80代女性1名(計3名)
※うち、買い物補助サービスについては、80代女性1名のみモニター参加した。
場所:大阪府大阪市城東区森之宮


今後の展望

生活者に寄り添う情報発信や個別のサービス、また買い物弱者に対するサポートを含め、今後も地域課題の解決に向けてモニターを継続していく。


各社からのコメント

セコム
BOCCOを通じて気象・防災・行政や健康に関する情報等の配信を行う中で、とくに防災・行政情報に対して積極的な返答があり、ご高齢者の関心の高さが伺えました。また、コンビニエンスストアのおすすめ商品やキャンペーン情報などの配信を行うことで、ご高齢者の買物需要を引き出す手ごたえも感じております。BOCCOは、ご高齢になっても使えるICTツールとして、日常のつながりやコミュニケーション以外にも、様々な可能性を秘めております。今後もBOCCOの活用可能性に関する検証を重ね、ユカイ工学様と共に、社会課題の解決に取り組んで参ります。

セコムについて
セコムは1962年に日本で初めての警備保障会社として創業。1966年には日本初の企業向けのオンライン・セキュリティシステム、1981年には家庭向けにホームセキュリティシステムを開発するなど、時代に先駆けたサービスを創出している。2015年4月には超高齢社会の課題解決を目的に「セコム暮らしのパートナー久我山」を開設。高齢者やその家族のニーズ把握、新サービス創造に努め、2017年10月からは高齢者の孤独の解消、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上を目的にBOCCOを通じて“定期的な挨拶”や“状況に合わせた声かけ”を行う「コミュニケーションサービス」を試験的に開始している。

社会医療法人大道会森之宮病院
利用した高齢独居男性は「話し相手が増えてさみしさを紛らわせることができた」、「地域の情報をお知らせしてくれたことで、外の様子が解り地域と近づけた気がした」と意見され、BOCCOの利用は「孤立感の軽減」につながると考えます。軽度の認知症高齢者の利用時は、概念の理解やボタン操作も難しく双方向の会話はできませんでしたが、一方向のお知らせ機能により服薬忘れや曜日の確認などができ、精神的な安定につながる効果を確認できました。「お腹が痛い」「吐き気がする」などの体調不良のお話への対応は今後の検討課題だと感じます。BOCCOは話し相手か、医療機関とつながる体調管理ツールか…運用次第で様々な可能性が考えられます。医療機関が本運用チームに関わる際は、上記を踏まえた留意点の申し合わせが必要だと感じます。

社会医療法人大道会森之宮病院について
森之宮地域に位置し、救急治療・リハビリテーションを提供している。また同法人は森之宮団地1階に健康ステーションまなぶを設置し、訪問看護やリハビリテーションの提供により自宅での健康をサポートするほか、福祉用具を活用した住環境の提案やケアプランの相談も行っている。法人内の多職種が様々な関係機関と力を合わせ、住民が住み慣れたまちで最期まで暮らすことができるよう健康支援・生活支援に努めている。

ABOUT THE AUTHOR / 

山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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