アクセンチュアが「アクセンチュア ライフ トレンド2023」を発表 社会の変化に対応してビジネスを進める「5つのトレンド」とは

アクセンチュアは最新調査「アクセンチュア ライフ トレンド2023」を発表し、報道関係者向けにオンラインで発表会を開催した。「ライフ トレンド」は昨年まで「フィヨルドトレンド」と呼称していたレポート。
このレポートは、デザイナー、クリエイター、技術者、社会学者、人類学者が所属する「アクセンチュア ソング」チームにより、世界中から洞察や知見を持ち寄って作成された。また、AIが生成した画像と共に、2023年に企業が留意すべきトレンドや取るべきアクションを紹介した。「アクセンチュア ソング」は「変化に共鳴し、成長を実現する」組織。


説明会では、「アクセンチュア ライフ トレンド2023」を解説するとともに、パンデミック等、不安定な社会情勢から生活者のトレンドが大きく変化していること、その上で「変化に対応してロイヤリティの向上」をおこなった日本企業の施策事例、そして「顧客起点からライフ起点への転換」の必要性等の解説もおこなわれた。

説明会に登壇した3名。左から、アクセンチュア株式会社 Accenture Song デザインリーダーシップ エグゼクティブ 番所 浩平氏、Accenture Song デザインリサーチ アソシエイト・ディレクター レベッカ・ブッシュ氏、Accenture Song グロース・ストラテジー マネジング・ディレクター 小林 正寿氏


変化に対応してロイヤリティの向上 ~アクセンチュアの実績例~

番所氏は、「記者の皆さんも一視聴者として、世の中の大きな変化を感じていると思う。その変化に共鳴し、成長をいち早くテクノロジーの進化などで対応、実現していくことが重要」とした(アクセンチュア ソングの前身はアクセンチュア インタクティブ)。また、チーム実績の事例を紹介した。


KDDIでは店舗だけではなく、 Webやアプリなど数々のタッチポイントを横断して、顧客体験やコミュニケーションをシンプルな形で作り直して、ビジネスの成長に貢献している。
セブン&アイグループでは、セブンイレブン、イトーヨーカドー、デニーズ、赤ちゃん本舗など、グループ全体のロイヤリティプログラムを1つのシンプルな形に統合し、1500万人以上の会員基盤を作り、グループ全体での買い回りを促進する施策を展開。
資生堂「Beauty Key(ビューティーキー)」のロイヤリティプログラム施策では、単純なポイント還元だけではなく、女性の美に対する自信や自尊心を向上させるサービスも一緒に組み合わせて提供し、個々のブランドだけではなく、資生堂グループ全体で14ブランドのロイヤリティを向上していくことを実践してきた。
みんなの銀行に関しては。堅い銀行のサービスをシンプルでわかりやすい形に刷新する施策を展開し、グローバルなアワードを受賞する評価を受けた、こと等を紹介した。


今年のメタトレンドは「コントロールとパワー」

「アクセンチュア ライフ トレンド2023」では、数年にわたって続いた世界的に不安定な状況によって、人々は「AI」「Web3」「トークン化」など先進的なテクノロジーを活用して、創造性、コミュニティ、データ・プライバシーを次世代へと進化させているとした。
また、このレポートでは、人々が新たなテクノロジーに高い価値を見いだし、パンデミックからの移行を意識し、行動を変化させていて、企業や経営陣はその変化に合わせてビジネスモデルを変換する必要があると提言している。そして、ビジネス、文化、社会を形成する人々の行動を、グローバル規模で5つのトレンドで解説した。これは今までとは全く異なる大きな変革を勤務や市場、クリエイティブなど、ビジネスに幅広く影響するとしている。


アクセンチュア ソングのソートリーダーシップ、メタバース、サステナビリティ担当グローバルリードであるマーク・カーティス氏(Mark Curtis)は「未曾有の危機に直⾯すると、多くの⼈は⾃らの⽣活を⾃分⾃⾝でコントロールすることの難しさを感じます。しかし、こうした状況に適応し、冷静になるにつれ、⼈々はより⼤きなコントロールを求めて決断するようになり、ブランドや企業にも影響を与えます。
こうした新たなパワーダイナミクスによって、企業が顧客と関わり、関係を構築する⽅法は刷新され、企業に⼤きなチャンスをもたらすでしょう」と語っている。




人と企業の関係を大きく変える5つのトレンド

レベッカ・ブッシュ氏が5つのトレンドを解説。各章のタイトルは有名な曲に因んでいる。

以下、アクセンチュアのリリースより抜粋。


1. 不安定な社会環境に適応する⽣活者たち


世界は間断なく災害や惨事に⾒舞われています。しかし、何千年も前から⼈類がそうしてきたように、⼈々は4 つの反応(闘争、逃避、集中、凍結)を切り替えることで、不安定な状況に適応しています。


こうした反応は、⼈々が購買するモノやサービス、ブランドや企業に対する印象にも影響を与えるため、企業はこれらの変化に備えなければなりません。



2. コミュニティの⼒から⽣まれるブランドの未来


不安定な世の中で、⼈々は⾃らの居場所をより積極的に求めます。このため、現代のブランドは「コミュニティ・ファースト」で構築されるようになり、ブランドに対するロイヤリティや関わり⽅が再構築されるでしょう。


例えば、アクセンチュアによるインタビュー調査対象者の⼤半は、過去6〜9 ヶ⽉の間に新しい趣味を試したり、新しいコミュニティに参加したりしています。こうした傾向を特徴づける下記3 点は、いずれも先進テクノロジーを活⽤しています。

 a.コミュニティ: Reddit、Discord、Twitch などのプラットフォームを活⽤
 b.トークン・ゲート: 「トークン・ホルダー」のみに許されたアクセス
 c.コレクターズアイテム: デジタルアート、サイン、トレーディングカードなど





3.かつての姿ではないワークスタイルのあり⽅


オフィス回帰の議論が続いていますが、多くの⼈にとって成功と呼べる状況ではありません。同僚との業務に直接関係のない会話や、後輩を間近でサポートすることなど、オフィスで働くことの⽬に⾒えない恩恵が失われたと誰もが感じているでしょう。そして今、この喪失感がもたらしたものが明らかになりつつあります。


直接会うことができなければ、企業は社員へのメンタリング、変⾰、⽂化、多様性の受容などを失うことになりかねま
せん。今こそ経営層は新しい発想を持ち、論理的で相互に有益な計画を⽴てるべきです。



4.AIと共に歩むクリエイティビティ


AIが⾝近になり、創作活動の新しいツールになりつつあります。ニューラルネットワークが急速に普及し、努⼒やスキルが⼗分になくとも、⾔語や画像、⾳楽を⽣み出すことが可能になりました。また、AI ⾃体も驚異的スピードで進化しています。普及が進めば、創作⼒はさらに進化するでしょう。


企業は、AI が⽣成したコンテンツが溢れる中でどのように差別化するか、また⾰新のスピードと独⾃性を⾼めるためにAI をどう活⽤するかについて検討する必要があります。





5.デジタルウォレットと私のデータの⾏⽅


個⼈情報の扱いは、ようやく変⾰の時を迎えています。オンラインでのブランド体験の透明性と信頼性は急速に低下していますが、間もなく⼈々は、個⼈情報を⾃⾝でコントロールできるようになるかもしれません。


トークン(⽀払い⽅法、ID、ポイントカードなどを表す)を含むデジタルウォレットによって、⼈々はどの個⼈情報を企業へ共有するか、また販売するかを判断できるようになるのです。これは、ブランドにとって⼤きな利点となるでしょう。


⼈々から提供されるデータは、クッキーの規制により収集されなくなった第三者データよりも、より価値を持つためです。


(リリースより抜粋ここまで)



顧客起点からライフ起点への転換

最後に登壇したグロース・ストラテジーのマネジング・ディレクター、小林正寿氏は「いま多くの企業が消費者のニーズの変化に追いついていけないと感じている」とし、変化していくニーズや行動をリアルタイムで理解していくことが必要」とし、顧客価値の提供の仕方についても柔軟な選択肢を持って状況に合わせて、最も今欲しいものに合わせてソリューションを提供していくことが重要とした。


また、「顧客起点からライフ起点への転換」が必要として、ライフ全体を捉えて変化を察知するという意味では、生活者の行動をより深く、より幅広く理解することが重要と語った。そして、改めて自分たちのドメイン「コアの領域」を再定義することが必要で、自分たちの強みをベースにしながら、少し幅広く自分たちのコアとする領域を定め、その上で生活者の今を理解するために、データ取得の手段、データ取得に向けた価値を提供していくことが必要、と続けた。


消費者の未来という変化を予測しながら、複数の対応策を持ち、それをやったらビジネスがどう変わるかというか、シュミレーションもしていく必要がある。一方で生活者の変化に適応するという点に関して言えば、生活者の行動の変化に追従できるように事業価値の全体を再創造するということが必要だと考えている、とした。それにはジェネレーティブAIを活用して、変革を進めていくことも強調した。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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