日立が「ジェネレーティブAIセンター」創設 「ChatGPT」など生成系AIを社内外で積極的に利活用 独自AIと組合せてソリューション提供へ

日立製作所は、大きなパラダイムシフトが期待される「生成系AI」 (ジェネレーティブAI)を主軸に置いた「Generative AIセンター」を新設したことを発表した。対話を生成する「ChatGPT」や、画像を生成する「Stable Diffusion」などを、顧客の業務やニーズに合わせ、日立独自のAIと組み合わせて提供していく。


なお、「ChatGPT」や「Stable Diffusion」に対抗するような生成系AIを自社開発していくとする明言はなかった。「Generative AIセンター」は独自の生成系AIを開発する機関ではなく、同社独自のAIを組み合わせてソリューションで提供していくSIer的な立ち位置に近いとみられる。
同社は「生成AI」報道機関向け説明会を開催し、その詳細を説明した。

左から、株式会社 日立製作所 研究開発グループ 先端AIイノベーションセンタ 部長 鯨井 俊宏氏、デジタルシステム&サービス統括本部 CTO 鮫嶋 茂稔氏、デジタルエンジニアリングビジネスユニット Data&Design 本部長 吉田 順氏、研究開発グループ 先端AIイノベーションセンタ リーダ主任研究員 十河 泰弘氏


生成系AIの導入や成長を加速「Generative AIセンター」

「Generative AIセンター」は、日立のLumada事業による顧客への価値提供を最大化し、生産性向上の実現に取り組むために、生成系AIの導入や成長を加速することが目的となる。メンバーが同社の実務プロジェクトと兼務する。

生成系AIによって改善できる業務の可能性

生成AIは、インターネット上の膨大なデータを学習し、画像、文章、音声、プログラムコードなどさまざまなコンテンツを生成することができるAI技術で、現在、最も注目されているICT技術。その先進性から多くの企業が自社のビジネスにどのように活用できるかを模索しており、メリットとデメリットを鑑みながら検討を進めている。


生成系AIは社内と社外で積極活用

生成系AIは、デメリットを多いことから、使用を禁止する団体や企業もあるが、同社は社内外に向けて積極的に活用していく考えだ。

多くの顧客は、生成系AIに可能性を感じながらも、そのデメリットに懸念している。そこを日立が独自のノウハウや技術によって安全・安心なソリューションとして提案していく

「Generative AIセンター」は、生成AIに対して知見を有するデータサイエンティストやAI研究者と、社内IT、セキュリティ、法務、品質保証、知的財産など業務のスペシャリストを集結し、リスクマネジメントしながら活用を推進するCoE (Center of Excellence)組織となる。


まず日立グループ32万人のさまざまな業務で利用を推進

今後、本組織が中心となって、文章の作成・要約や翻訳、ソースコード作成など、生成系AIを日立グループ32万人のさまざまな業務で利用を推進し、生産性向上に繋げるノウハウを蓄積する。顧客にも安心安全な利用環境を提供するという価値創出サイクルを回していく。

「Generative AIセンター」では社内向けに生成系AIの課題を検証しつつ、ガイドラインやアシスタントツールを整備して知見を蓄積する。それを顧客向け「Lumada事業」に生成系AIを組込み有効活用する提案をしていく

具体的には、生成AIの利用を検討される顧客に対して、AIの活用に関する知見やセキュリティ・知的財産などの専門知識を組み合わせ、リスクをコントロールしながら、生成AIの先端的なユースケースや価値創出を支援するコンサルティングサービスを6月から提供する。



マイクロソフトと連携

また、Lumadaアライアンスプログラムのパートナーである日本マイクロソフトとの協創により、「Azure OpenAI Service」と、日立の強みであるミッションクリティカルなクラウドSI力を連携した環境構築支援サービス、運用支援サービスを提供していく予定。こうした動きからも大規模言語モデル(LLM)は独自LLMの開発ではなく、既存の「ChatGPT」をベースに提案していくと思われる。



具体的な取り組みは



ユースケースの創出、コンサルティング/環境構築・運用支援サービスの提供

生成AIを活用したユースケースの創出や、日立独自の生成AI技術を組み合わせた新たなアプリケーションの開発、プロンプト技師などの人財育成に積極的に取り組む。
また、ユースケースやナレッジを集約し、GlobalLogicや日立ヴァンタラなどシリコンバレーのIT企業も含めた日立グループ全体でインタラクティブに共有できるコミュニティを形成。顧客のニーズに応じて外部有識者やパートナーをコミュニティに加えて、多様な観点で課題を共有・議論し、刻々と変化する業界動向、リスクに配慮しながら価値創出を行いたい考えだ。

さらに、デジタル体制強化のため4月に組成したデジタルエンジニアリングビジネスユニット(BU)は、生成AIの利活用を支援するコンサルティングサービスを提供し、クラウドサービスプラットフォームBUは、「Azure OpenAI Service」と連携した環境構築支援サービス、運用支援サービスの提供を予定している。

日立全社のデジタル戦略をリードする日立デジタルのもと、デファクトスタンダードなパートナーサービスを活用するとともに、日立独自の技術や利用ガイドラインを組み合わせることで生成AIをLumada事業に取り込み、上流から実装・運用までのEnd to Endで価値創出サイクルを回す。


ガイドライン策定、社員向け相談窓口の提供

「Generative AIセンター」は、生成AIの利用におけるさまざまなリスクを複合的に考慮した業務利用ガイドラインを策定し、4月末に第一版を発行した。今後、業界動向を踏まえ、ガイドラインを継続的にアップデートしていくほか、社員向け相談窓口を設置し、ガイドラインではカバーが難しい問い合わせや相談にも対応する。


また、Azure OpenAI Serviceなどを活用した社内利用環境「Generative AIアシスタントツール」を整備し、5月末より利用開始。「Generative AIセンター」がその社内活用をサポートすることで、議事録の自動生成やシステム実装におけるローコード/ノーコード化を推進するなど、業務の効率化と生産性向上を図る。そのような社内でのプロセスや結果をガイドラインや問い合わせ対応に生かすとともに、顧客やパートナーとの取り組みにもフィードバックしていく。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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