会話音声で認知症を診断するAI医療機器(SaMD)の開発に着手 エクサウィザーズと昭和大学が連携
エクサウィザーズは、認知症分野を対象に会話音声AIを活用したソフトウェアによるプログラム医療機器(SaMD: Software as Medical Device)の開発を開始することを発表した。
会話音声で簡易かつ短時間に診断に活用できることから、認知症の早期診断・治療という社会課題の解決を後押しするとしており、2023年秋までに規制当局への本格的な薬事相談を開始し、医療機器として早期の承認に向け取り組んでいく。
音声会話から認知症を診断
さまざまな種類の医療データのAIによる処理に長けたエクサウィザーズが、昭和大学病院脳神経内科の認知症専門医と連携することで、高い診断精度を保ちながら数分以内の迅速な認知症の診断を目指すとしており、スマートフォンやタブレット端末のように身の回りにあるデバイスで利用できるようにする考えとのこと。
本プログラム医療機器(SaMD)はエクサウィザーズが独自開発したAI音声モデルを活用。現在、昭和大学病院脳神経内科 物忘れ外来と共同で同モデルを活用した探索試験を実施中であり、本探索試験の結果で数分の会話音声から臨床レベルで使用できる精度が確認されており、規制当局との薬事相談を開始した。今後、認知症の早期発見や診断支援などを目的に開発を進め、早期承認を目指す。
2025年には約5人に1人が認知症に
医療のデジタル化が進展する中で医療用ソフトウェア市場は年々拡大をし続けており、中でもAIを搭載したSaMDの開発は、欧米を中心に飛躍的な拡大をみせている。
SaMDの世界市場は2027年には800億ドル以上に拡大し、年平均成長率(CAGR、2020-27年)は20%以上と、同期間における医療機器市場全体のCAGRの3倍にもなると見込まれている。(日本医療ベンチャー協会 調べ)。一方、日本におけるSaMDの開発は、技術的な問題に加え海外との諸制度の違いも影響し、思うように進んでいないのが現状だ。
国内における認知症患者数は、2012年に認知症高齢者数が462万人と、65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)に対し、2025年には約5人に1人になると見込まれている。将来的に日本における認知症の社会的コストは20兆円を超すと推定されており、超高齢化社会における介護や社会保障費の拡大が懸念されている状況だ。また、世界を見ると認知症患者は5500万人を超えており、1兆3000億ドル以上の経済損失にもつながっているとされ(日本WHO協会 調べ)、深刻な社会課題の1つとなっている一方で、認知症は発症初期の診断が難しいことや、経済的負担に加え有効な治療薬が乏しいこと、介護者や家族の身体的、精神的な負担も大きい事が大きな課題となっている。
こうした状況下で、世界に先駆けて新規性の高いSaMDを開発する事は日本国内において重要な課題となっており、デジタル化や情報化社会の進展に伴い、さまざまなデータが取得可能となってきており、エクサウィザーズが保有するこれら多様なデータに対応する「マルチモーダルAI」のテクノロジーは、高性能かつ使いやすいSaMDの開発にとって重要性が増している。
エクサウィザーズは昭和大学病院脳神経内科 物忘れ外来との協業を通じて、こうしたテクノロジーを活用し、社会課題の解決に取り組んでいくとしている。