ソフトバンクロボティクス、日鉄興和不動産、⽇建設計、および日建ハウジングシステムの4社が実施する、「集合住宅における搬送課題解決に向けた実証実験」が、経済産業省の「令和5年度革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」に採択された。
今回の採択を受け、タワーマンションなどの集合住宅での搬送におけるロボットフレンドリーな環境構築に向けて、具体的なロボットのユースケースと経済性の検証を実施するとしている。
ロボットフレンドリーな環境構築に向けた社会的背景
ロボットは、人手不足などの社会課題を解決するツールとして期待されており、ロボット導入が進んでいないサービスや製造業分野でも需要が高まっている。しかし、多くのロボットは、特定の企業活動などの狭い範囲での利用を前提に開発・供給されているため、個別に開発が必要で、高コスト構造となる傾向があり、それがロボットの普及を阻害する要因の一つとなってる。
経済産業省による令和5年度「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」は、このような状況を打開するため、既存の業務プロセスや設備環境を見直し、「ロボットフレンドリーな環境」を構築し、それに基づく実装モデルを開発することを目的に実施される。
近年、インターネットの普及やコロナによる巣ごもりの影響もあり、インターネット通販を中心とした宅配荷物の需要は年々増加の傾向が続いています。国土交通省の調査によると、2019年度から2022年度までの宅配便等取り扱い個数の推移の成長率は約15%となり、それに伴い再配達も増加しており社会課題となっている。また、タワーマンションなどの大規模な集合住宅では、セキュリティが厳しく、建物の入口から住戸に到着するまで複数のインターフォンを押して自動ドアを通過する必要があり、荷物を届けるまでおおよそ30分もの時間を要するという事業者報告もある。このような状況は、宅配員にとっても負担になり、住民にとってもストレスの原因となる。
本事業での取り組み内容
本事業では、大規模集合住宅への配送を行う大手物流業者に協力を受けロボットを活用した荷物配送サービスの実証実験を行い、建物の入口から住戸までの最適なロボットの活用方法、ルート設計、利用者との連携方法を検証する。また、参画企業のデータを基に経済性を担保できる要素を抽出し、ロボット導入に係る費用効果について検証し、受容性を高めることでさらなる市場環境を醸成する。
大規模な集合住宅において、快適な住宅環境の提供を可能にするためには、運搬課題解決に向けた新たな取り組みが求められている。そして、それを実現するには、ステークホルダーの協力が不可欠であり、この度、ロボットフレンドリーな環境構築の実現に向け、本プロジェクトにデータ提供等いただける物流事業者、デベロッパー、管理会社にご協力を依頼する予定となっている。
実施概要・各社の役割および取り組み
実施物件
期間 | 2024年1月〜2024年3月 |
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物件名 | リビオメゾン南砂町 |
所在地 | 東京都江東区南砂2-33-3 |
日鉄興和不動産:全体設計/管理
日鉄興和不動産は、東京都心のプライムエリアにおいて大規模都市開発である「インターシティ」シリーズ、中規模ハイグレードオフィス「BIZCORE」シリーズを代表とするオフィスビルや、「ホーマット」シリーズなどの外国人向け高級賃貸マンションを開発・賃貸する不動産賃貸事業と、分譲マンション「リビオ」シリーズに代表されるマンション分譲事業やマンション再生事業、市街地再開発事業等を核として展開する総合デベロッパー。リビオのかかげる「Life Design!」コンセプトを具現化するために生まれた総合研究所、リビオライフデザイン総研では「人生をより豊かにする」ためのマンション体験の創出に取り組むとしている。
ソフトバンクロボティクス:ロボットの提供
ソフトバンクロボティクスは、2014年にいち早く人型ロボット「Pepper」を発表し、これまでに清掃ロボット「Whiz」、配膳・運搬ロボット「Servi」を開発・販売開始し、床洗浄ロボット「Scrubber 50」、配膳ロボット「Keenbot」などさまざまな製品の取り扱いを通じて、世界のロボットインテグレーターとして先駆的な役割を果たしてきた。現在では、世界12カ所に拠点を構え、70カ国以上で製品が活躍。このグローバルネットワークを活用し、豊富な経験と膨大な稼働データに基づいて、ロボットトランスフォーメーションを追求し、人とロボットが共生する社会に向けて邁進するとしている。
⽇建設計:既存建物のロボフレレベル調査、実証実験の支援
⽇建設計は建築・土木の設計監理、都市デザインおよびこれらに関連する調査・企画・コンサルティング業務を行うプロフェッショナル・サービス・ファーム。1900年の創業以来120年にわたって、社会の要請とクライアントの皆さまのさまざまな要望に応えるべく、顕在的・潜在的な社会課題に対して解決を図る「社会環境デザイン」を通じた価値創造に取り組んできた。2021年3月には、脱炭素社会への取り組みに向けた「気候非常事態宣言」を宣言。労働力人口減少の課題に対しては、建築的な工夫とIoT技術でビル管理の手間を削減するアイデア「Smart Operation Building」を提案し、ロボフレビルの実現に向けて取り組んでいく。
日建ハウジングシステム:既存建物調査、施設改修支援
都市型集合住宅の企画・設計・監理および調査研究やマンション建替に関するコンサルティングなどを実施する、集住施設のエキスパート集団。さまざまな社会課題がもたらす「暮らし」の変化にも柔軟に対応するため、「未来の暮らしの空間」についての研究や、マンション等の戦略的な商品企画開発にも参画。次の時代も持続可能な豊かな暮らしを実現するため、これまで「住まい」の仕組み創りの専門家として培ってきたノウハウを活かし、さまざまな観点から「暮らし」を高める仕組み創りができるよう、チャレンジを続ける。
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