ドコモ、NTT、日本カーソリューションズの3社は、停電を伴う災害対策強化として、電気自動車(EV)を活用した「基地局電源救済システム」に関する実証実験を2024年1月12日~2024年6月30日の期間実施すると発表した。この技術は開催中の「docomo OpenHouse’24」で展示されている。
災害などの影響で基支局が停電するとその一帯は通信ができなくなり、災害の規模によっては数10~数100ヶ所の基地局がダウンしてしまう。そこで、給電機能を持った電気自動車(EV)を効率良く停電した基地局へ向かわせ、EVで基地局に電気を送って一時的に復旧させて、通信を復活するしくみ。
効率良くEVを配車するためにAIによる配車管理システムを稼働し、どこにあるEVをどの基地局に配置するかを迅速に選定して派遣する。千葉で実証実験が行われ、活用の目処がたった(現時点では能登半島地震ではまだ導入されていない)。
最適なEVを基地局へ派遣し、高効率な電力供給ができるか検証
今回の実証実験で利用する基地局電源救済システムは、ドコモが開発する基地局電力の監視制御を担うエネルギー・マネジメント・システム基盤(EMS基盤)とNTTが研究開発を進める強化学習とディープラーニングを組み合わせた深層強化学習による巡回ルート生成技術で作成するAI配車計画、日本カーソリューションズがリアルタイムに収集したEVの位置情報や蓄電量、走行データなど(EVデータ)で構成される。
停電した基地局へ早期に給電するため、基地局電源救済システムを使って、場所や蓄電量などが最適なEVを基地局へ派遣し、高効率な電力供給が行われることを検証する。
なおNTTは企業による電気自動車の使用や環境整備促進をめざす国際イニシアティブである「EV100」に加盟をしており、今回の実証実験はその取り組みの一環として行うものとしている。
実証実験の概要
1:目的
停電した基地局へ早期に給電するため、EVを活用した基地局電源救済システムを利用し、場所や蓄電量などが最適なEVを基地局へ派遣し、高効率な電力供給が行われるかを調査検討することを目的とする。
2:実験内容
基地局電源救済システムの評価・課題抽出のために、停電を想定して下記の実験を実施する。
・千葉県内の広域停電を想定し、基地局情報とEVデータに基づいた各EVの配車計画を作成。配車計画を元に実際にEVを走行させ、AI配車計画の有効性を検証。
・計画された給電時間の間、EVから基地局に電力供給を行うことで、基地局の蓄電池が想定通り充電されるか、EMS基盤が策定した給電計画の有効性を検証する。
3:実証実験で活用する技術
今回の実証実験は、以下の技術を活用し行う。
EMS基盤 | ・各基地局の蓄電状況を把握し、給電計画を策定 ・EVと基地局の接続後、自動で計画された給電時間の間、高効率な直流給電制御を行う |
---|---|
AI配車計画 | ・複数EVが協力して、下記を実現するルートを生成 基地局の蓄電量が枯渇する前に基地局に到着 EV自身の蓄電池が枯渇する前に充電ステーションに到着 ・従来のルート生成の課題であった計算時間を深層強化学習の応用により高速化 |
EVデータ | ・各EVの位置情報、蓄電量、走行データなどの情報を収集 ・収集したデータの閲覧と提供 |
4:実施期間
2024年1月12日~2024年6月30日
5:各社の役割
ドコモ | ・本実証実験の計画策定、全体管理 ・基地局ーEV間の電力融通技術の提供、及び、EVによる走行結果の評価 |
---|---|
NTT | ・EVを効率的に巡回させる巡回ルート生成技術、AI配車計画の提供 ・巡回ルート生成技術やAI配車計画の精度や実用性の向上に向けた課題の検討 |
日本カーソリューションズ | ・EVの情報収集と提供 ・EVの情報提供に関する課題の検討 |
ドコモが最新の生成AI、味覚共有の人間拡張、力触覚を活用したロボットなど見どころ満載の最新技術を多数展示「ドコモ オープンハウス`24」開幕
ドコモ/NTT/NCS 停電した基地局に電気自動車(EV)を派遣して給電・早期復旧へ EVの配車にAI活用 「基地局電源救済システム」実証実験
【世界初】ドコモら、エリアや時間を指定したネットワークスライシングの実証実験に成功 AWSで構成、5GCと5G SAの商用無線基地局を利用
ドコモが最新の「AI接客」のデモを公開 生成AIや行動分析AIなどを組合せてユーザ向けの高度なAI応対を体験
ドコモ オープンハウス`24 関連記事
大地震や津波災害時にICTをどう防災活用できるのか(前編) ソフトバンクの自律ドローンが避難所に物資を空輸 和歌山すさみ町で
知っておきたい被災地で活躍する「移動基地局車」や「災害ポータル」のこと 大地震や津波災害時にICTをどう防災活用できるのか(後編)
【世界初】NTT、北見工業大が通信用光ファイバーで10km先へ通信と電力供給に成功 電源のない被災地に通信の確立へ
ABOUT THE AUTHOR /
神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。