FingerVisionは吉野家と牛丼店舗における食器洗浄工程をロボットにより自動化・省人化する共同開発契約を締結した。
約1,200店舗ある吉野家では、使用後の汚れた食器を従業員が手で浸漬水に浸した上で1つ1つ取り出し、洗浄機用のラックへ載せ替え、食器洗浄機を使用して洗浄をしているが、これらの汚れた水の中から、多種多様な種類の汚れた食器をとりだし、ラッキングする工程の自動化をロボットで完結することを目指すとしている。
牛丼店舗の課題
吉野家では、1人の従業員が、接客から、調理、配膳、片付け等の複数の業務を担いながら効率的に業務を回しているが、その中で食器の「片付け」工程は、「お客様への付加価値に直接的に繋がりにくい」「手や腕の汚れを伴い手荒れのリスクや怪我のリスクに繋がる」という特徴があるため、かねてより自動化のニーズが高い工程となっている。
具体的には、従業員が手で、使用後の汚れた食器を、1枚1枚浸漬層に浸して汚れを一部取り除いた後に、食器洗浄機のラックに載せ替え、洗浄を行っている。この時、浸漬層に溜まっている水は、時間の経過とともに濁り汚れていくが、その汚れた水の中に従業員は手や腕を入れ、食器を掴み、作業を続ける必要がある。また、汚れた水は油分を多く含み、手荒れの要因にもなるこれらの作業は、汚れにより目視確認が難しいほどに濁った水の浸漬層内で食器が割れていることがあると、気づかずに触れてしまい、怪我をするリスクもあるため、自動化のニーズが根強くある。
一方で、既成の全自動食器洗浄機は、大型装置が多く、ファーストフードチェーンの店舗面積や異なるレイアウト、費用面等が課題となり、複数店舗に水平展開することは難しい判断を伴う。
FingerVisionの技術を活用した解決策
こういった洗浄工程の自動化ニーズに対応したロボットを実装するにあたり、技術的に難易度が高いポイントは、以下の3点が挙げられる。
2:油などの汚れが多いと滑りやすく、1度掴んだ後に落としやすい
3:汚れた浸漬層に沈んでいる食器を、浸漬層の外側から(外部カメラ等により)認識することが極めて困難
上記の技術チャレンジに対し、FingerVisionの視触覚ロボットハンドを活用すれば、様々な種類の食器に対する汎用的なハンドリングと、「滑り検知」による落下の回避を両立させつつ、水の中でも食器の種類や、位置、向き、距離・深さなどを推定することによって、ロボットの自律制御の幅を格段に高めることが可能となる。
取得した画像情報に基づいて、多様なモダリティの情報を取り分けることができるため、視触覚ロボットハンドの強みが活かされる。
実証開発結果
吉野家とFingerVisionは、2023年度、最も難易度の高い「汚れた水の中から汚れた食器を取り出す工程」を中心に基礎開発を進め、実店舗における実証を行っている。
成果として、JR神田駅店のピークタイム(11時~14時)の従業員によるラッキング動作に要する時間を523秒から289秒に短縮し、標準店舗で1日中稼働させることを想定した場合は、人時生産性は101.7%向上することに寄与する結果を得られた。
今後の取り組み
吉野家とFingerVisionは、今後、自動化の範囲を広げることで、さらなる生産性の向上と労働環境改善を目指し、近い将来、世の中の飲食店から人手による食器洗浄がなくなっている未来を実現するとしており、『ひと』 と 『テクノロジー』 をキーワードに、「テクノロジー」を導入することで、「ひと」の価値を最大化するビジョンとともに、開発・改善を加速するとしている。