AIロボティクスでイチゴの完全自動栽培に取り組む HarvestX が総額約4億1,000万円の資金調達を実施

イチゴ自動栽培ソリューションを開発するHarvestX株式会社は、プレシリーズAで総額約4億1,000万円の資金調達を実施した。

植物工場におけるイチゴなど授粉を必要とする果菜類の完全自動栽培を目指し、ロボティクスやAIを専門とするメンバーによって2018年に設立された東京大学発スタートアップである同社は、「植物工場では授粉が必要な果実の生産が難しい」という課題にフォーカスして研究を進め、世界で初めて、ロボットによるイチゴの授粉に成功。

既存株主である「ANRI4号投資事業有限責任組合」、「DEEPCORE TOKYO 2号投資事業有限責任組合」、「オープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合」に加え、新たに「Dawn Capital 1号投資事業有限責任組合」、「SMBCベンチャーキャピタル産学連携3号投資事業有限責任組合」、「食の未来1号投資事業有限責任組合」と「新生ベンチャーパートナーズ2号投資事業有限責任組合」、「しんきん-やらまいか投資事業有限責任組合」、「ヒューリックスタートアップ1号投資事業有限責任組合」を引受先とし、さらに、浜松市ファンドサポート事業の交付金の交付を受け、合計資金調達額は6億1,000万円となった。




資金調達の背景と目的

現在多くの果菜類の植物工場では、一般的な農園と同じようにハチを工場内で飼育して花の授粉を行っているが、植物工場のような閉鎖空間では、ハチがストレスでうまく飛べなかったり短命になったりするため安定生産が困難となり、大きな問題となっている。同社はそのような課題を解決するため果菜類の中でも特に授粉の精度により形状の安定した果実の生産に影響が出やすいイチゴにフォーカスし、授粉、成長データ収集、収穫などを一貫して行う高度な技術を採用したイチゴ自動栽培ロボットを開発。自社内のイチゴ栽培実験施設やイチゴ植物工場事業者様での導入実験などを経てこの度、自動授粉ロボット「XV3」を主軸とするイチゴ自動栽培ソリューション「HarvestX」の提供が可能となった。同社は今回調達した資金を活用し、同ソリューションのさらなる付加価値拡大に向けた技術研究開発を進めていくとのことだ。



イチゴ自動栽培ソリューション「HarvestX」について

「HarvestX」は、植物工場でのイチゴの生産過程において、「植物の管理」「授粉」の自動化を行い安定生産を実現するソリューションで、2025年には「収穫」の機能追加を予定している。独自開発により最適化されたロボット・栽培ラック・栽培レシピの組み合わせとAIによる授粉・モニタリング自動化で、安定生産と生産コストの削減を実現し、持続可能な生産システムとして世界規模での展開を目指している。

イチゴ自動栽培ソリューション「HarvestX」の展開イメージ




授粉ロボット「XV3」の概要

「XV3」は、イチゴ自動栽培ソリューション「HarvestX」の中心となるロボットだ。ロボティクスによる高精度な授粉とセンシング技術による環境制御によりどのような地域・環境でもイチゴ生産が可能となった。同ロボットは、植物工場内を自動で走行する「XV3 Cart」と、データ収集用のセンサーや作業用ロボットアームを搭載した「XV3 Unit」の2つで構成され、植物工場事業会社様のニーズに合わせて容易に機能拡張・変更できる設計になっている。また、イチゴ以外の果菜類への応用を想定し、将来的な機能のアップデートに対応。ハードウェアを大規模に変えることなく植物工場内のロボットを進化させて自動化を進めることが可能だ。

■【動画】植物工場向け授粉・収穫ロボットXV3(3段構成)によるイチゴの授粉




今後の展開について

「HarvestX」を備えたデモ施設(パイロットプラント)を建設し、イチゴの生産に課題を抱える植物工場事業会社様や新たにイチゴ植物工場の運営を検討される企業様に訴求して行く予定となっている(2024年5月に第一期完成予定)。同施設開設を足掛かりに、まずはイチゴのワンストップ生産を実現、その先にトマトやメロンなど授粉を必要とする果菜類への応用展開を視野に、同社はさらなる事業拡大に向けて取り組んでいくと述べている。なお、デモ施設の運営開始や詳細については、開設時に改めて発表を予定している。

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ロボスタ編集部

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