すでにご存じと読者も多いと思うが、企業が合併したり他の会社を買収したりすることを「M&A」(Mergers and Acquisitions)と呼ぶ。会社そのもの、もしくは経営権を取得する意味として使われる場合がある。
パーソナル人工知能(P.A.I.)や独自の大規模言語モデル、デジタルクローンの開発で知られる株式会社オルツは、2024年3月28日に開催した「オルツカンファレンス2024」で、企業のM&Aの相性をAIが解析し、企業クローン同士で仮想面談をどんどんと行い、最適なマッチング度をスコア化して提案するシステム「クローンM&A」を発表した。
LLMを活用したM&Aマッチングとは?
「Clone M&A」は同社のLLM(大規模言語モデル)「LHTM-2」を活用した、ユニークなM&Aマッチング・システムだ。手法として今までにない点は、「Clone M&A」では、まずは企業のクローンを生成し、売手企業のクローンと買手企業のクローンを仮想面談(面談のような対話含む)させることで、最適なM&Aマッチングを実現すること。
「2023年度は6万社が廃業、M&Aで救えた企業もあったはず」
「オルツカンファレンス2024」に登壇したオルツの井上氏は「経営者の高齢化に伴う事業承継問題が大きな社会課題となっています。後継者不在を理由とした黒字廃業リスクを抱える企業は現在、全国で60万社を超え、約22兆円のGDPが失われるリスクがあると指摘されています。実際にある調査によれば、2023年度は6万社が廃業してしまい、それによって3兆円の売上高が失われたと言われています。後継者も見つからず、M&Aもできなかった結果です」と語った。
「では、M&Aを増やせばいいじゃないか」という意見がある一方で、直近の年間M&A件数は4,000件程度(同社調べ)に留まっており、需給が不均衡の状態。これをLLMやAIで解決するソリューションが Clone M&A」と紹介した。
M&Aが進まない問題点
更にM&Aが進まない障壁として「売手となる企業がM&Aを検討する際の障壁として、買手となる相手先企業が見つからない、判断材料となる情報が不足している、期待している提携効果が得られるかわからない等が上位を占めていることも明らかになっていて(日本総合研究所調べ)、これらの課題がマッチングがうまく進まない障壁となっています」と続けた。
「Clone M&A」では企業クローンを生成して対談
「Clone M&A」では、AIエージェントとの対話やこれまでの商談データ、事業資料などを元に、売手企業のクローンを生成する。次に、公開情報や商談データなどから生成した、大量の買手企業のクローンと仮想面談を行うことで、売手企業にとって最適な買手企業をマッチングスコア順に提示する。
■ 企業クローンを生成して企業買収M&Aを進めるオルツ「Clone M&A」
井上氏は「従来のM&Aは、アドバイザーによる属人的なマッチングや、キーワードマッチングが主流でした。「Clone M&A」はクローンと自然言語処理を用いて、膨大な数のマッチングを可能にします。そのため、すべての買手企業とのマッチング理由や提携シナジーを売手企業に明確に示すことができ、検討の初期段階から納得感のあるM&Aを実現、提案が可能」と語った。
なお、「Clone M&A」の正式リリースは今夏を予定。関心のある企業は、事前登録を受け付けている。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。