ブリヂストンのソフトロボティクス・人工筋肉を使った無目的室「Morph inn」を公開 やわらかいロボットに包まれる新体験

ブリヂストンの社内ベンチャー、ブリヂストン ソフトロボティクス ベンチャーズとクリエイター集団Konelは、未来体験を提供するための共創型プロジェクトを立ち上げ、ブリヂストンのゴム人工筋肉技術を用いたやわらかいロボット「Morph」(モーフ)を活用した、目的のない部屋「Morph inn」(モーフ イン)を2024年5月17日(金)~25日(土)に、期間限定で開業する。

人工筋肉技術のソフトロボティクス、体験用「Morph」

一般体験時の「Morph inn」のイメージ(明るさ)

場所は表参道ヒルズ周辺にある表参道seeen。予約制だが9日間で400枠、編集部で今日確認した時点では予約枠は既に埋まっており、体験したい場合は、追加の予約枠が出るのを待つ必要がありそうだ(追加予約枠は検討中とのこと。最新情報はXで発信予定)。
(公式予約フォーム:https://airrsv.net/morphinn/calendar)
ロボスタ編集部は早速、体験してきた。

体験用の「Morph」は2基用意されている。上にかけるのは「Morph mini」と呼ばれている


「Morph inn」は無目的室、目的のない空間

忙しい日々の中で人々は、目的のない時間を持ちにくい生活を送っている。無目的な時間を過ごすことで、無意識に制御してしまっている思考を解放し、豊かな時間を生むことができるのではないかということで実験的に開業した。

「Morph inn」プレスデーで説明や質疑応答に対応したブリヂストン ソフトロボティクス ベンチャーズ 創業メンバー/主幹の山口 真広氏(左)と株式会社コネル(Konel) / 知財図鑑 クリエイティブディレクター / CEOの出村光世氏(右)

ブリヂストンが開発したゴム人工筋肉を使ったやわらかいロボット「Morph」が身を包み込み、数分間の間、抱きしめられたり、精神的に甘えられる無目的な時間を過ごす空間が提供される。



自然の動き(Morphの動き)に身を任せる

ベッドともマットとも呼べる大きな「Morph」の上に横たわり、小さな「Morph mini」をかけたり抱きかかえることで、上下から柔らかいロボットに包み込まれる。「Morph」が収縮する動きは様々な動物や自然の動きから模倣したランダムの動きをする。



トトロのお腹に乗ったメイちゃん

イメージはマッサージチェアに似ているが、マッサージチェアのように個人に合わせた強さを調整して揉みほぐしたり、凝りをほぐすという具体的な目的を「Morph」は持たない。自然の動き(Morphの動き)に身を任せるのが正解のようだ。Konelの出村光世氏は「トトロのお腹に乗ったメイちゃん」と表現し、メイちゃんはトトロの呼吸や動きを制御できない、として、自然に任せる感覚に例えた。
また、無意識になることで、普段は制御してしまう感情に向き合ったり、目的から解放される感覚を味わうことが新体験となる、とした。


■動画




ゴム人工筋肉とソフトロボティクス「Morph」とは

ブリヂストンが研究を重ねてきたゴム人工筋肉と、自然界のモーションを収録・再生するテクノロジーを掛け合わせることで誕生した「Morph」。ゴム人工筋肉は空圧式で、空気を送り込むと収縮する特別な構造を持っている。チューブ状のゴム人工筋肉の片側にワイヤーが入っているものは、空気を送り込むとワイヤーが入っていない側が縮み、包み込まれるような感覚が体感できる。



「Morph」には、自然界や動物のモーションをセンシングしたデータがインストールされている。映像から動きの特徴点を抽出し、ゴム人工筋肉を制御する形式にデータを変換する仕組みは、この共創型プロジェクトが独自に開発したシステムだ。

ゴム人工筋肉は、チューブとスリーブの2層構造となっており、生物の胎動や呼吸、潮の満ち引きのような自然界のデータをもとに有機的に動作する。生のデータとゴム人工筋肉によって表現される動きは、生物とも、機械とも異なる「Morph」ならではの息遣いを生み出すという。コミュニケーションをとることもなく、また人に合わせて制御されることもない、ただ生物的に動作する仕組みだからこそ、気を使うことも、期待や目的を持つこともなく共存できるのが「Morph」の特徴だ。


Bridgestone Softrobotics Ventures(ブリヂストン ソフトロボティクス ベンチャーズ)について

ブリヂストン ソフトロボティクス ベンチャーズの山口真広氏は同社の唱えているキャッチフレーズの中で好きなものとして「ブリヂストンは世界の道を知っているが、ゴムは未知に溢れている」という言葉をあげた。100年に渡り、ゴムを研究し、極めてきたブリヂストンの社内ベンチャーとして、ソフトロボティクスの社会実装に向け、地球規模の社会課題の解決を目指し挑戦している。
独自のゴム人工筋肉は、新たなロボットの手足として、2024年1月にはIT・デジタル関連のイベントCESにて発表、現地で大きな期待を集める。また応用した産業向けの“器用な手”TETOTE(てとて)や“触れ合いにより心を動かすソフトロボティクス ”umaru(うまる)などを商用化に向けて展開中。スピードや精度に優れた従来のロボティクスに加えて、「あなたのカタチに進化する」ロボティクスをクリエイターやアーティストと共創し、人とロボットの新しい景色をつくっている。

ソフトロボットハンド「TETOTE」

国際的なデザイン賞「iFデザインアワード2023」金賞を受賞したソフトロボットハンドのコンセプトモデル「Dialogue」
【無目的室「Morph inn」】
公式予約フォーム:https://airrsv.net/morphinn/calendar
トレイラームービー:https://vimeo.com/935210360/2e1a543fd8
会期:2024年5月17日(金)〜5月25日(土)
開場時間:11:00 – 19:00 
*Morphの体験は、17:45まで。  
*14:00-15:00の1時間は、メンテナンスのため閉場予定。
*18:00-19:00の1時間は、全てのフロアを見学できる。
*メンテナンス時間は状況により変動する場合がある。(最新情報はXにて発信)
会場:seeen 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4丁目13−12(表参道駅A2出口から徒歩3分)
公式X(旧Twitter):@Morph__inn(https://twitter.com/Morph__inn
*Morphの体験には予約が必要。*1Fへの入場のみの場合は予約不要(1FではMorphの体験はない)。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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