NTTが宇宙ビジネス分野におけるブランド「C89」を発表 2033年度に1千億円の売上目指す 島田社長がブランド名称に込めた思い

日本電信電話(NTT)は、今後の宇宙ビジネスの伸張を見越して、宇宙ビジネス分野におけるブランド「NTT C89」(※)を立上げることを発表した。NTTグループにおける宇宙関連事業の拡大および宇宙産業全体の発展に貢献する考えで、2033年度単年で1,000億程度の売上を目指す。(※読みは「エヌ・ティ・ティシー・エイティ・ナイン」)


都内で報道関係者向け説明会を開催し、NTTの島田社長が登壇し、GEO衛星、LEO衛星、HAPSの各領域でのビジネスプランと、「Amazon Project Kuiper」と「Starlink Business」に等について解説した。

日本電信電話株式会社 代表取締役社長 島田 明氏


ブランド名「NTT C89」に込めた思い

「NTT C89」の「C」は星座(Constellation)をさし、現時点で星座は88個あると言われているが、一つ一つのNTTグループの取組み(星)を有機的に繋げて、89個目の新しい星座(Constellation)を創生するという思いを込めた。


具体的なサービスとして、成層圏の通信プラットフォーム「HAP」Sの早期商用化とグローバル展開を推進するため、NTTドコモとSpace Compassが、エアバスとその子会社AALTOとの資本業務提携を行い、AALTOに最大1億ドルを出資したことも発表した。


宇宙ビジネスを取り巻く環境が変化

NTTによれば、近年の宇宙技術の発展による打上げコストの低減や、月への興味関心の拡大など、宇宙空間を活用したビジネス・サービスに関する企業参入が増えている状況で、宇宙がより身近な存在になってきているという。また、日本政府においても、「宇宙基本計画」「宇宙安全保障構想」を公表し、「宇宙戦略基金」を創設するなど、宇宙事業を取り巻く環境が変曲点を迎えている。


このような背景を踏まえ、宇宙ビジネス分野における注力領域を定め、事業開発と技術開発を加速するとともに、NTTグループ各社等の関連事業を有機的に繋げ、ビジネス顧客やユーザーの要望にあったソリューションを提供することで、宇宙ビジネス分野における事業拡大と、更なる市場開拓を促し、宇宙産業全体の発展に貢献していきたい、とした。


宇宙ビジネス分野において注力する領域

宇宙統合コンピューティング・ネットワーク構想において、自社の技術的な強みを活かし、自前化を目指す領域と、新たな技術開発を行いつつパートナーとの連携でサービス化を加速する領域を戦略的に分け、それぞれの領域において市場創造・拡大をけん引する事業開発と技術開発の両方を実行していく。



自社の技術的な強みを活かし自前化を目指す領域

GEO衛星を活用した領域
・ 観測LEO衛星および観測データPFを活用した領域
・ 高高度成層圏プラットフォーム(HAPS)を活用した領域

GEO/LEO/HAPSはそれぞれ地上から上空(宇宙)を活用する距離で分けられる。GEOは最も遠い静止軌道衛星、LEOは低軌道衛星、HAPSは成層圏プラットフォームを指す

静止軌道衛星GEO分野

低軌道衛星LEO分野

成層圏プラットフォームHAPS分野

「NTT C89」の会見のあと、引き続いてHAPSの具体的な発表が行われた




新たな技術開発を行いつつ、パートナー連携でサービス化の加速を目指す領域

・ 通信LEO衛星を活用した領域


「Amazon Project Kuiper」と「Starlink Business」との連携
島田社長は、通信LEO衛星の領域として、既に「Amazon Project Kuiper」(プロジェクト・カイパー)と戦略的協業を実施。既に提供済みの「Starlink Business」とのパートナー連携をあげた。「Project Kuiper」は、Amazonが設計、構築、運営する低軌道衛星によるブロードバンド・ネットワークで、世界中のネットワークが行き届いていない地域に、高速で低遅延のブロードバンド・ネットワークを提供することをミッションとしている。NTTはスカパーJSATとともに「Project Kuiper」とは戦略的協業に合意。2023年11月時点で、アジア太平洋地域として初の戦略的協業を発表している。(関連記事「Amazonの低軌道衛星ブロードバンド「Project Kuiper」とNTTグループとスカパーJSATが戦略的協業 日本でサービスを提供へ」)
「Starlink」は、低軌道衛星を使った衛星ブロードバンドインターネットサービスで、ドコモビジネス等を通じてサービス提供している。
また、JAXAと共同研究中の「光通信」、NEDOと連携の「衛星コンセントレーション基盤技術」にも触れた。


災害時での積極活用も視野に

衛星通信やHAPS通信は、被災状況把握に観測衛星データを活用し、避難所などの通信環境を各種衛星通信サービスで早期構築が期待できる。特にHAPS通信では、スマートフォンで使用している5G周波数帯域を使用することで、専用の端末がなくても、通常のスマホでユーザーが意識せずとも利用できるようにする考えも示唆した。



公式ウェブサイトを立ち上げ

2024年6月3日より、NTTグループ各社等における宇宙ビジネス分野におけるカテゴリーブランド「NTT C89」に関するWEBサイトを立上げた。


今後の事業展開について

今後、NTTグループ各社等は、上記の「NTT C89」ブランドの下、様々なサービス・ソリューションを国内外に提供していく。前述の「HAPSを活用した通信サービス」提供開始や、地球観測事業者向けの衛星間通信(光データリレーサービス)の提供、観測衛星で撮影されたデータを活用したサービス拡充などを予定している。また、海外衛星ブロードバンドサービス事業など外部パートナーとの連携によるサービス展開も含めて、ビジネス顧客やユーザーにベストミックスなソリューションが提案できるよう、積極的に宇宙ビジネス分野のサービスラインアップ拡充を図っていく考え。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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