イー・ロジットとRENATUS ROBOTICS、ロボット自動倉庫「RENATUS」1号案件を稼働開始

株式会社イー・ロジットは同社の埼玉草加フルフィルメントセンターに、資本提携しているRENATUS ROBOTICS Inc.(レナトスロボティクス)のロボット自動倉庫「RENATUS」を導入したと2024年5月28日に発表し、同日に内覧会を行った。

ロボット自動倉庫「RENATUS」

「RENATUS」はいわゆるGTP(Good-to-Person)方式のシャトル型自動倉庫。2023年の「国際ロボット展」で西部電機ブースで紹介されていたものだ。

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イー・ロジットの埼玉草加フルフィルメントセンターに第一号案件として導入された「RENATUS」は、設置面積483平米(約150坪)、高さ5m(段数9段)、3546間口の自動倉庫。

「RENATUS」のシャトル

入庫作業を行うステーション

各段の高さは50cm。各段1台ずつのシャトルが走行しており、それぞれの可搬重量は30kg。今後本格稼働を進めていく。

出庫から製函を経て、自動封緘ラインに流す

埼玉草加フルフィルメントセンターに導入された「RENATUS」の概要


■技術+現場オペレーションノウハウで自動化ソリューションを

イー・ロジット 代表取締役社長CEO 谷辻昌也氏

イー・ロジットは通販物流代行のほか、物流改革、コンサルティング人材育成のための研修の企画運営などを手掛けている企業。イー・ロジット 代表取締役社長CEOの谷辻昌也氏は、なぜRENATUS ROBOTICSと一緒にやっていこうと思ったかという理由について「高い固定費と上昇していく人件費の二つをどう解決していくか。機械化・自動化は当然の選択肢だが、どれを選ぶか。ちょうど金融機関から提案してもらったのがレナトスだった」と振り返った。

当然、既存の製品設備を導入する選択肢もあったが「(レナトスは)まだベンチャーで、これからソリューションを作っていく。日本人のエンジニアに対して、我々がオペレーションを通じてフィードバックすると、より良いモノを作っていけると感じたので、資本提携という形をとった」と述べた。

そして「我々はクライアントに良いソリューションを提供するために、ユーザーとしてのフィードバックすると同時に、機械で解決できないところに、オペレーションのノウハウなどを提案していくことで、より自動化を推進していければと思っている。取り組みのスタートが切れることを嬉しく思っている」と語った。


■アカデミアの技術を社会に役立てる

RENATUS 代表取締役社長 大澤琢真氏

RENATUS ROBOTICSは東大発AIロボティクス企業であるTRUST SMITHグループのカーブアウト法人。2022年5月に設立された。RENATUS 代表取締役社長の大澤琢真氏は、「自分は学生のときに何のために勉強しているのかと考えたときに、アカデミアの技術を活かさないと意味がない、どうしたら役に立つのかと考えて、会社を作った」と振り返った。

いろんな社長に会って開発を進めているなか、「あるEC企業から世界最大の倉庫をつくりたい、300万SKU、出荷で30万行、15万オーダーくらいの倉庫を作りたいと言われた。日本は人口密度が高いので出荷量が多い。中国の次に大きな物流があるのは東京。東京に巨大なセンターを作りたいというご相談を受けた。そのためには、プロジェクトとして大きすぎるということで会社をカーブアウトさせて RENATUS ROBOTICSという会社を作った」と述べた。

最終的には人件費が高いアメリカで売ることを目指すために、アメリカで登記を行って、日本に支社を置いているかたちになっている。今後は自社運営の無人物流拠点を作って、無人物流網を作っていく計画となっている。

自動倉庫「RENATUS」


■「RENATUS」の売りはピッキング行数と格納効率

イー・ロジット イノベーション事業部 部長 岡田光弘氏

自動倉庫「RENATUS」そのものについては、イー・ロジット イノベーション事業部 部長の岡田光弘氏が紹介した。岡田氏は「RENATUS」について「独自のロボティクスとアルゴリズムを活用した大規模・高密度な次世代の自動倉庫システム。強みは二つあり、 一つ目はピッキング行数、二つ目は格納効率だ」とアピールした。

「RENATUS」の強みはピッキング行数と格納効率

まずピッキング行数については毎秒4mで稼働する高速シャトルと最適配車アルゴリズムによって業務効率化を実現しているという。

一時間あたり500行/人の処理が可能だとしている

二つ目の強みの格納効率については高さ最大30m、横幅200mの3次元で充填率の高い設計で大幅な賃料の削減を実現する。

スケーラビリティも特徴

今回のイー・ロジットに設置した1号案件は規模は小さいが、保管圧縮効率を高めることで従来比1/2とできているという。

赤い四角で囲まれた部分が「クロスアイル」

RENATUSでは、ロボットのシャトルが「トート」と呼ばれるコンテナを搬送する。シャトルは「クロスアイル」と呼ばれる部分を使って平面を自在に走行する。上下移動についてはエレベーターを用いる。エレベーターもシャトル同様、毎秒4mの速度で搬送する。

自動封緘機も使ってワンストップで梱包

搬送されたトートは、ピッキングするための「ステーション」に立つ作業者の前まで運ばれてくるので、作業者は画面指示にしたがってトート内から商品をピッキングする。ピッキング後は自動封緘ラインに流れて、ワンストップで梱包される仕組み。

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■他のロボットや自動化機器と組み合わせて効率化

AMR(自律走行搬送ロボット)なども活用して効率化

イー・ロジット社では「RENATUS」の他にも、作業者の手元と俯瞰を撮影して管理できる梱包管理カメラ「Logi-eye」、シュリンク・封かん・送状発行・添付などを自動化するメール便自動梱包システム「MELT-Line」、最大積載量600kgのIPLUSMOBOT製のAMR(自律走行搬送ロボット)、熟練度による速度・品質のばらつきをなくす手動採寸計量器、自動採寸計量器「SMART QBING」など各種マテハン機器を導入して効率化・自動化を進めている。

AMRは棚搬送に用いられている

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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

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