川崎市は、自動運転技術を搭載したEV路線バスの実証実験を今年度より行い、2027年には「レベル4」の自動運転バスの社会実装を目指すことを発表した。2024年8月2日、川崎市は報道関係者向け発表会を開催し、 福田川崎市長をはじめ、川崎鶴見臨港バス、KDDI、アイサンテクノロジー、A-Drive、ティアフォーなど、関係8社が参加し、記者会見を行い、EVバスを公開した。また、市長みずから自動運転EVバスのしくみと安全性を解説した。
自動運転「レベル4」は、特定の範囲や場所で、天候や速度など特定の条件下で、車の自動運転システムがドライバーに替わってすべての運転を行うこと。自動運転EVバスの車両価格は1台約9,900万円。全額、国の補助金で購入した。
バス路線のルートは2本で、羽田連絡線(天空橋駅~大師橋駅)と川崎病院線(川崎駅前と市立川崎病院の巡回)。羽田連絡線は羽田空港を経由して川崎大師周辺を走るルートとなり、東京都大田区と神奈川県川崎市をまたぐルートとなる。都道府県をまたぐルートでの「レベル4の自動運転バスの社会実装を目指す実証実験」は日本初となる。
■川崎市が2027年に自動運転EVバスの実用化へ 市長が自動運転のしくみを解説
バスの運転手不足による減便、自動運転バスの実用化が急務
今回のプロジェクトの事業主体は川崎市、川崎市長の福田氏が登壇した。川崎市は今年、市制100周年を迎えた。多くの深刻な社会課題に挑んでいるが、そのうちのひとつにバスの運転手不足をあげた。
福田市長は「市民の脚となる自動運転EVバスは、一刻も早く「レベル4」で社会実装するということが大切。今日は多くのメンバー(8社)に恵まれて、このプロジェクトを展開することが発表できてうれしい」と語った。
自動運転EVバスの運行は川崎鶴見臨港バスが担当する。東京や神奈川などの都市部でも、バスの運転士不足は深刻な社会課題となっている。川崎市でも人口は増加傾向にある一方で、運転士不足からのバス減便が発生し、平成30年と比較すると令和4年は一日あたり2,000便ものバスが減便となっている。この状況を打破するためには自動運転EVバスの早期導入が急務となっている。
今回のプロジェクトは、運転手不足が深刻化している状況を踏まえ、自動運転と有人運行の組み合わせによる地域交通の環境形成に向けて、地域特性に応じた自動運転バスの戦略的な導入となる。なお、川崎鶴見臨港バスは昨年、川崎で「レベル2」の実証実験を実施している。
自動運転EVバス「レベル4」社会実装までのロードマップ
気になる自動運転EVバス「レベル4」社会実装までのプロセスとロードマップも今回、具体的に発表された。今年度(2024年度)は、バスの運転資格を持った運転士が乗って自動運転で走る「レベル2」と手動運転を併用して実証実験を実施、そのデータに基づき、2025年度以降は順次自動運転区間を増やしつつ、「レベル4」の認可が下りれば、バスの運転資格を持たない立会人が乗車して安全を確保した上で、「レベル4」の実証実験を行い、2027年度に「レベル4」の社会実装を行う、というロードマップを公開した。
実証実験の段階から、一般の人も乗車できるようにする。2024年度の乗車は関係者のみ。2025年以降は一般の人も乗車できるようにする。まずは無料、やがては有料化を検討している。
最先端技術と最新の自動運転EVバス車両の導入
自動運転技術と自動運転EVバス車両については、ロボスタ読者ならご存じのアイサン、A-Drive、ティアフォーらが開発中のものだ。自動運転ソフトウェアはティアフォーの「Autoware」(世界20カ国以上で活用実績)を搭載。通信はKDDIが担当する。
自動運転バス車両は、バッテリーの性能を高め、航続距離を1.3倍にアップした最新型EV車両(ティアフォー製 Minibus v2.0)を全国に先駆けて導入する。(写真のEVバスのデザインはホワイトレーベル版。カラーリングは変更になる予定)
自動運転のシステムは、高精度3次元地図情報と高度なセンサー技術、さらに信号機連携も導入している。自動運転時の最高速度は35km/hで、安全で効率的な運行を確保している。
EV(電動)自動運転バスに再生可能エネルギー由来の電力を用いることで、2050年の脱炭素社会の実現を目指す。これは「かわさきカーボンゼロチャレンジ」に寄与すると捉えている。
この日は報道関係者にも走行試乗体験などは実施されなかったが、一般の人が乗車体験できる情報を含め、追加の情報があれば、引き続きお伝えしていきたい。
各組織の役割
川崎市 事業主体
川崎鶴見臨港バス 自動運転車両の運行
アイサンテクノロジー 車両・システム総合調整、3D地図の提供
A-Drive 実証実験統括、自動運転車両販売
ティアフォー 自動運転車両および自動運転システムの開発
損害保険ジャパン 自動運転専用保険の提供、緊急時体制構築支援
KDDI 自動運転ルート及び遠隔監視室の通信調査・通信提供
京三製作所 信号連携機器に関する調整
LocaliST 社会受容性に関する企画運営
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。