ヒューマノイドや巨大な汎用人型重機、自動搬送ロボ、犬型軍用ロボなど多数展示 GMO AIRのビジョンや狙いを内田社長に聞く

GMO AI&ロボティクス商事(略称GMO AIR :GMOエア)は、「Japan Robot Week 2024」において、最も大きなスペースで展示ブースを展開した。ブースの中央には人機一体の巨大な汎用人型重機「零式人機 ver.2.0」が稼働し、他にもゴーストロボティクスやボストンダイナミクスの犬型四足歩行ロボット、東京ロボティクスやugoなどのヒューマノイド、OrionStar Roboticsの案内ロボットも展示されていた。


トークセッション&デモで汎用人型重機「零式人機 ver.2.0」と。人機一体の金岡博士とGMO AIRの内田社長(右)

Ghost Roboticsの四足歩行ロボット。米国で軍用に採用されている(索敵や警備など)。GMO AIRブースで

GMO AIRは、GMOインターネットグループがAI・ロボット事業に本格的に新規参入を表明し、2024年6月に設立した。顧問には千葉工業大学の古田貴之氏や東京大学大学院の松尾豊氏を招聘している。関連記事「GMOがAI・ロボット事業に本格参入、GMO AIRを設立 ヒューマノイドや多脚型ロボットにも注力!ロボットたち大集合でデモ披露

ORION STARの案内ロボット(GMO AIRブースで)

警備DXの「ugo pro」(GMO AIRブースで)

Preferred Roboticsの自律移動ロボット「Kachaka」(カチャカ)と「Kachaka pro」を稼働デモ(GMO AIRブースで)

「Japan Robot Week 2024」の会場で、GMO AIRの内田社長にインタビュー、同社の具体的な業務内容、ビジョンや狙い、ロボットへの想いを聞いた。

GMO AI&ロボティクス商事 代表取締役社長 内田朋宏氏


GMO AIRの事業内容は

編集部

GMO AIRの事業内容について改めて教えてください。

内田社長

GMOインターネットグループは、第一次産業革命以来、約55年周期で産業革命が進行していると考えています。直近では1995年をインターネットの登場による第四次産業革命の始まりと捉えた場合、29年経過した2024年はインターネット革命の後半戦に入り、これからの主人公は「AIとロボット」になると確信しています。

約55年周期でやってくる産業革命(内田氏のトークセッションより)

GMO AIRの主な事業内容としては、ロボット導入に伴う「コンサルティング&ソリューション提供」「AI導入・活用支援」「製品販売&インテグレーション」「教育&リサーチ」「スタートアップ支援&エコシステム形成」です。
例えば、あるお客様がAIロボットによる業務の自動化を考えているとします。その第一次窓口として、GMO AIRにご相談ください。GMO AIRは業務内容をお伺いし、最適なロボットとソフトウェア、クラウド、セキュリティ、通信環境など一連のシステムをご提案します。ロボット自体の開発は行いませんが、連携している多くのロボットメーカー様と相談してカスタマイズし、AIを含めたソフトウェアは既存のサービスや自社開発したものを組み込み、その際に必要となる最適な通信やネットワーク環境、更にはGMOインターネットグループが得意としているもののひとつ「セキュリティ」についても万全なサービスを提供していきます。AIロボットの導入にはセキュリティが重要ですが、日本ではあまり重視されていない傾向にあり、セキュリティホールが見落とされているケースが多くあります。当社はその啓蒙活動も含めておこなっていきます。

編集部

通信やセキュリティは、GMOインターネットグループとして得意な分野ですね。

内田社長

そうです。グループとしての強みを、プラントや工場、スタジアムなど、リアルな現場をユースケースとして、AIとロボットの導入を通じて進めていきたいと考えています。IoTやビッグデータとAIを絡めた案件も受諾する体制ですが、GMO AIRとしては基本的に「AIロボットを国内に普及させる」というコンセプトを主眼に展開していきます。
その上で、通信環境などのインフラが整っていない現場も多いので、通信を含めたご提案もしています。更にロボットにカメラを搭載して、画像解析やAI推論の機能を付加するなど、顧客のニーズに応じたカスタマイズも自社開発して提供していきますし、連携している他社が既に持っている技術も積極的に取り入れていきます。

編集部

AWS(Amazonのクラウドサービス)やGCP(Google)、Azure(Microsoft)などのクラウド連携はどうですか?

内田社長

ロボティクスとクラウドの連携は非常に重要で、ニーズも大きいので、当社はAWSやGCPなどのクラウドサービスを利用する上での設定やシステム構築の支援、セキュリティのチェックや保守面などでお手伝いをさせて頂きます。
AIの場合は、学習と推論のためのAIクラウドサービスを当社で用意しています。ロボットメーカーやソフトウェア開発パートナーと連携して提供することができます。NVIDIAのGPU環境やJetsonなどの活用についてもご相談頂ければ、最適なご提案をしていきます。当社は商社なので。

編集部

GMO AIRとして集中してシェアを取っていこうという分野はありますか?

内田社長

実証実験の案件としては、プラントや公立の大きな施設などがあがっています。規模が大きい案件は楽しいですし可能性を感じています。ただ、どんな分野の案件であっても、特定はせずにお受けしたいと思っています。今は頂いた案件に対応していくことを念頭に置いています。
GMOインターネットグループとして強い分野として挙げるならひとつは「セキュリティ」です。当社のサイバーセキュリティは世界的にみても高い評価を頂いているので、その強みはAIロボットの提供には活かしていきたいですね。

編集部

今回、ブースでは人機一体や東京ロボティクスなど、GMO AIR設立発表会のときにはなかった企業がデモ参加していますね

内田社長

「零式人機 ver.2.0」については、今回の展示ブースのサイズが大きいので、大型のロボットが来場者の方にもインパクトがあるだろうと考えていたところ、ちょうど人機一体さんと連携の話をしているところだったので、連携のお披露目を兼ねて相談したのがきっかけです。


東京ロボティクスさんは設立発表会以降に接点を持ちました。今回、ロボット業界で話題になっているヒューマノイドをデモ展示したいと考えていたので、東京ロボティクスさんの「Torobo」(トロボ)をお願いしました。日本でヒューマノイド開発をおこなっている企業はそれほど多くないので、インパクトがあると思います。また、今回の展示ブースでは、商社としてたくさんのロボットメーカーさんと連携し、バラエティ豊かなラインアップをお見せすることができたと思っています。

東京ロボティクスの「Torobo」。テーブルの汚れをみつけると自律的に拭いてきれいにするデモ

編集部

今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

内田社長

ヒューマノイドが続々と登場してきています。今はまだヒューマノイドは限定的な特定の作業しかできないと思われていますが、AIが自律的に考えて汎用的に動作するヒューマノイドが出てくれば、瞬く間に社会に普及すると思います。世界各国で開発にしのぎを削っていますが、それは日本でも是非やりたいし、そういうものを提供していきたい。これからの子ども達は、AIロボットを使ってAIネイティブに育って欲しい、そんな想いもあります。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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