世界的に脱炭素の取り組みが注目される中、自動車メーカーの動向にも目が向けられています。最も代表的なのは電気自動車(EV)で、多くのメーカーが「化石燃料を使用するガソリンエンジンから、電気で動くEVへ大幅にシフト」していくことを表明しています。その一方で、欧米を中心にEVの需要が伸び悩んでいることも報道されています。「本当にEVシフトが正解なのか?と、まだ混沌としている状態といえるかもしれません。
トヨタ自動車は以前からEVシフトだけではなく「社会には様々な選択肢を提供する」必要性を掲げてきました。その選択肢のひとつが「水素」です。従来、内燃機関(エンジン)はガソリンや軽油を主な燃料として使用してきましたが、燃料を「水素」に換えて動くエンジンにシフトしていく、という考えです。水素は燃焼させると酸素と結びついて水になるので、基本的にはCO2を排出しないクリーンエネルギーということです。
トヨタは2024年10月15日から開催された「JAPAN MOBILITY SHOW BIZWEEK 2024」(CEATEC 2024と同時開催)において、人の手で誰でも運ぶことができる国内向けの「ポータブル水素カートリッジ」(豊田合成製)を初公開しました。これはどのようなもので、どんな未来を示唆するものなのでしょうか。
液体水素エンジン「GRカローラ」の研究開発
トヨタは、従来のガソリンエンジンの代替となる脱炭素技術として水素エンジンの研究・開発をおこなっています。具体的なカタチのひとつとなっているのが、2021年から気体水素燃料を使用し、2023年からは液体水素を燃料として動作する液体水素エンジンを搭載した「GRカローラ」です。水素エンジン車をレースやデモ走行で走らせることで、そのコンセプトをPRしてきました。今回の「JAPAN MOBILITY SHOW BIZWEEK 2024」でも展示車を公開していました。
なお、トヨタには「ミライ」(MIRAI)という自動車(量産車として世界初の高級セダン型燃料電池自動車)が既に発売されていて、そのコンセプトは今回の展示に通じるものがあります。展示された「ポータブル水素カートリッジ」も、MIRAI向けに豊田合成とトヨタ自動車が開発した水素貯蔵技術を応用したものなのです。
「ポータブル水素カートリッジ」を初公開
また、「JAPAN MOBILITY SHOW BIZWEEK 2024」ではその関連技術として「ポータブル水素カートリッジ」を公開。従来は大型だった水素タンクを小型軽量化し、誰でも持ち運べるようにしました。
「誰でも持ち運べる」とは、運搬に際して特に資格や免許が必要がない、ということも含んでいます。というのは、例えば、消費者自身が「ポータブル水素カートリッジ」を持って充填しに行ったり、まるでウォーターサーバーのように家庭や事務所に業者が配達することができるようになる社会が実現する可能性が大きい、ということを示唆しています。
今回もトヨタは展示会場で「ポータブル水素カートリッジ」の様々な活用事例を提案しました。中でも印象的だったのは、リンナイと共同開発している水素ガスコンロです。屋外会場で実演デモを行い、ある意味で衝撃的でした。
また、「ポータブル水素カートリッジ」をセットして、それを元に発電して家庭用電気として活用するユースケースも提案されていました。
下の写真の左は「ポータブル水素カートリッジ」を装着して使用する機器。例えば、一軒家の裏方に置いて、ここからキッチンに水素を供給してコンロなどの調理器具を使用するイメージです(あるいは浴槽のお湯にも使用するようになるかもしれませんね)。中央は水素から電力を生成する発電機(中央)、電力を水素で賄います。右は「ポータブル水素カートリッジ」の運搬台車です。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。