理研やNTTら 新方式の量子コンピュータを実現 世界に先駆け「汎用型光量子計算」プラットフォーム構築へ
理化学研究所(理研)量子コンピュータ研究センター光量子計算研究チームのリーダー古澤明氏(量子コンピュータ研究センター副センター長、東京大学大学院工学系研究科教授)、光量子制御研究チームのリーダー米澤英宏氏、日本電信電話株式会社(NTT)、株式会社Fixstars Amplifyの代表取締役社長CEO 平岡卓爾氏らの共同研究グループは、新方式の量子コンピュータの開発に成功した。これは世界に先駆けた「汎用型光量子計算」のためのプラットフォームとなる。
量子コンピュータは量子力学の原理を計算に利用することで、さまざまな問題が超高速で解けると期待され、世界中で激しい開発競争が行われている。理研量子コンピュータ研究センターでも2023年に超伝導方式の量子コンピュータを公開している。
今回、共同研究グループは「光方式」による新型量子コンピュータを開発した。「光方式」では、従来の量子コンピュータと比べて「高速かつ大規模な量子計算が可能」になると期待されている。これまで困難であった計算課題の解決など、量子コンピュータ研究を新たなステージに進めることになる。
量子コンピュータの実現方式は複数ある
量子コンピュータは世界に革新をもたらす新技術と期待されている。量子力学の原理に立脚し、「量子もつれ」や「量子重ね合わせ」といった量子の世界の特徴を巧妙に扱うことで、全く新しい方式のコンピュータが実現できる。量子コンピュータの実現方式には、超伝導、中性原子、イオン、シリコン、光など、多様な候補があり、熾烈(しれつ)な競争が行われている。
今回開発した光量子コンピュータは、インターネットを介したクラウドシステムから利用可能となっている。当面は共同研究契約を通じた利用となるものの、今後、国内の量子計算プラットフォームの利用拡大、量子コンピュータのユースケース(活用法)の創出、国内量子産業の発展と国際競争力の向上に寄与することが期待できる。
光方式の量子コンピュータの特長
この中で、光方式の量子コンピュータは、以下のことから非常に有望な候補のひとつと考えられている。
1. 計算のクロック周波数(動作周波数)を数百テラヘルツ(THz、1THzは1兆ヘルツ)という光の周波数まで原理的には高められる
2. 他方式と違いほぼ室温動作が可能
3. 光多重化技術[4]によりコンパクトなセットアップで大規模計算が可能
4.光通信と親和性が高く量子コンピュータネットワークの構築が容易と考えられる。特に光通信で培われた超高速光技術が、光量子コンピュータにとって非常に有用なアセット(資源)であり大きなアドバンテージになる。
古澤チームリーダーは20年以上にわたり、光量子コンピュータ研究のトップランナーであり、その間に理研と東京大学で培ったさまざまな技術が今回の光量子コンピュータに結実した。
基幹部である超広帯域量子光生成デバイスは、NTT先端集積デバイス研究所によって長く研究されている超高速通信用光デバイスを基に開発した量子光源が提供され、クラウドシステムは株式会社Fixstars Amplifyの協力により整備された。
今後の期待
理研やNTTらは今回、光量子コンピュータとそのクラウドシステムを実現した。これにより、光量子コンピュータの開発と、金融・医療・材料科学・機械学習・最適化問題などのユースケース探索が大きく進展することが期待できる。
今後、光量子コンピュータを実用的なものにするため、さらなる多入力化、超高速化、非線形操作の導入、アプリケーションの探索、といった課題を解決していく予定。また、将来的には誤り耐性のある大規模汎用量子計算機の実現を探求していく、としている。
技術的な詳細はNTTのプレスリリースに詳しく記載されている。
https://digitalpr.jp/r_detail.php?release_id=98581
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