NECは、2024年11月27日、研究開発と新規事業における戦略説明と、最新技術をデモ展示する「NEC Innovation Day 2024」を開催した。このイベントは主に報道関係者や証券アナリスト、機関投資家などを対象したもので一般の参加はない。
100年に1度のブレイクスルーが各分野で同時に起きている
冒頭の講演には NEC執行役CTOの西原氏が登壇し、「NECの先端技術開発と新規事業領域の拡大」について語った。
NECは、生成AI、量子コンピュータ、宇宙技術、ライフサイエンスなどにおいて先端技術開発に積極的だ。
西原氏は「技術者としての立場から言っても、生成AI、量子コンピュータ、宇宙技術、ライフサイエンスの各分野で起こっていることは100年に1度といっていいほどのブレイクスルーです。これが2020年代に同時に起きているというのはすごいこと。技術のポテンシャルをきちんと把握し、技術ビジョンを外部に向けて発表・公開し、外部の方々と議論し、事業の実現を見誤ることなく予測し、備えることが重要」と語った。
なお、NECの組織体制として、世界中に約2,000人クラスの専門人材が就業していて、研究開発部門の海外拠点人員比率は40%を占めていることも紹介した。
難関国際学会の論文採択数では世界トップ10(国内企業唯一)
また、AIでは国内トップレベル、生体認証技術では世界トップレベルの研究成果を上げている。AIでは、機械学習・難関国際学会(主要な国際会議)での論文採択数では、世界で10位のランキング(日本企業ではトップ)に位置している(下図の左)。また、映像・画像処理 難関国際学会での論文採択数は国内企業で1位の実績をあげている。
生体認証で世界トップの技術
また、顔認証をはじめとした「生体認証」技術でも多くの実績を上げていることはもこれまでもロボスタではニュースとして度々紹介してきた。
特に「顔認証」「虹彩認証」「指紋認証」では世界トップの実績をあげている。この日も最新の発表として、「顔認証」と「虹彩認証」をひとつのカメラユニットで同時に行う超小型のカメラボードと認証システムの発表が行われた。
この小さなカメラユニットで「顔認証」と「虹彩認証」を同時に、かつ瞬時に実行する技術が参考展示された(別記事で紹介)。
また、顔認証においては、先日発表した「ソニーセミコンダクタソリューションズのイメージセンサーによるエッジAIセンシング技術と、NECが持つ世界No.の顔認証技術を組み合わせる」戦略的な提携についても改めて発表。幅広いシーンに最適化可能で、かつプライバシーに配慮した顔認証ソリューションを共同開発するとした。(関連記事「ソニーとNECが戦略的協業を開始 エッジAI技術と顔認証ソリューションで共同開発」)
大規模言語モデルの知性は「超強力直感」
また、生成AI・大規模言語モデルについても触れた。ダニエル・カーネマン著「ファスト&スロー」から引用し、ファスト・シンキングとフロー・シンキングに触れた。
人間の知性は「直感と論理の双方で検証」を行うが、大規模言語モデルの知性は「超強力直感」で処理して、その部分は人間を既に凌駕している知性を持っているものの、スローシンキング(論理検証)が不得意なため、評価されない部分も残っているとした。スローシンキング部分の開発にも今後注力していく考えを示した。
発表された新技術
さて、今回発表された新技術だが、ひとつはNECが既に事業化を推進している大規模言語モデル「cotomiの性能向上(軽量化・高精度)」と、「NEC製AIエージェントを開発して来年リリースすること(旧称AIオーレストレータ)」、そして「画像や音、センシング情報を取り込めるマルチモーダル対応」の3つを最重要の発表としてあげた。
例えば、「cotomiの性能向上(軽量化・高精度)」(cotomi V2)については、根拠を提示することで信頼性を向上し、自己学習でプロンプト作成の負担を軽減、ハルシネーションを抑制し(別のAIでハルシネーションを検知)、性能はそのままに電力効率を約2倍に改善したことなどを紹介した。
ソニーとNECが戦略的協業を開始 エッジAI技術と顔認証ソリューションで共同開発
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。