ユニキャストと円谷フィールズホールディングス傘下のデジタル・フロンティアは、2024年11月23日・24日に日立市池の川さくらアリーナで開催された第46回日立市産業祭において、共同開発したアバター遠隔接客サービス「KSIN」を用いた「アンケート型プロモーション」の実証実験を実施した。
PR効果が得られるかを検証
日立市産業祭は、日立市内で生産された新鮮な野菜や旬の魚介類などの展示販売はもちろん、市内に事業所のある企業が最新技術やサービスを紹介する場となっており、毎年多くの来場者がある。両社はこの機会を活用し、デジタル・サイネージに表示したAIエージェントが来場者と自然な会話をしながら、意見を聴取できるか、PR効果が得られるかを検証した。
今回の実証実験は日立製作所の協力を得て、日立製作所展示場内に「KSIN」のAIエージェントを設置して実施。会話テーマは、市民参加型社会の実現に向けた取り組みに対するもので、個人情報管理への配慮をした上で、AIエージェントが来場者に音声で声掛け、簡単な雑談を行い、意見を集めた。また、会話の中で、AIエージェントが現在の市内の課題や取り組みなどを来場者の関心に合わせて説明した。
アンケート利用状況
期間 | 2024年11月23日・11月24日 |
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会場 | 日立市池の川さくらアリーナ(日立製作所展示場) |
KSIN展示会場への来場者数 | 239名 |
回答者総数 / 回答率 | 131名 / 54.8% |
デジタル・サイネージを目にし、「AIとお話しできるんだって」「何か話しかけてみようよ」と足を運んだ来場者が多く、取り組みに対する期待や応援のメッセージが集った。また、来場者の属性は、家族連れが多く、親が子に会話を促す、親子で一緒にAIエージェントと会話する様子が見られた。
なお、会話のテーマとして関心が高かったのは「交通渋滞」で、地域住民の交通渋滞への悩みの深さを印象付ける結果だったが、同時に、人口減少や少子高齢化を背景に「脱炭素化」や「健康、医療・介護」などいくつかのテーマが絡み合った意見もあり、社会課題の複雑さを示唆する結果となった。
実証実験の成果と課題
・来場者数や回答率の高さから、表情豊かで親しみやすくTPOを選ばないフォトリアルなアバター・デザインと生成AI技術による自然な会話の組み合わせが、アンケートやプロモーションに適したメディアであることが確認された。
・常に人通りのあるにぎやかな環境であったが、音声入力された言葉はおおむね正確な文字表示がされ、表現にずれがある場合であっても、自然な会話を続けることができることが確認された。
・アンケート機能のためにシナリオに沿った発問・回答をするようAIを設定していたが、より自由度の高い会話が求められるシーンがあり、プロモーションの比重が重い場合には、シナリオの順序もより変化の大きいものとする方が来場者の率直な意見を集めやすい可能性があった。
アンケート型プロモーションは、イベント会場やショッピングモール・店舗の入り口などに設置して、無人で運用することが可能。また、サイネージには会話内容だけではなく、図面や商品画像などを表示することも可能で、収集した会話記録はテキストデータで保存されるためデータ分析もしやすくなる。
現在のデジタルマーケティングでは、アプリインストールやアカウント連携が欠かせないが、アンケート型プロモーションは来場者に対して負担を強いることなく、アンケートとプロモーションを同時に実施することを可能にする。足を運んだからこそ感じることができる価値を体験した「顧客のリアルな声」をマーケティング活用に実現できるところが特徴であり、民間企業や自治体のプロジェクト・製品のプロモーションはもちろん、デジタルマーケティングの新しいチャンネルの一つとして活用できるものと考えているとのことだ。
「KSIN」はデジタル・フロンティアの保有する CG・VFX制作技術を駆使した3DCGのフォトリアルで高精細なアバターを搭載しており、アバターの表情や動きなど豊かな感情表現でより人間味のあるコミュニケーションを実現する。人が遠隔でアバターを操作する場合は、そのオペレーターの表情や動きをリアルタイムでアバターに反映でき、アバター越しでありながらも対面での接客のような自然なコミュニケーションができることが特長である。
労働力不足や業務効率の課題に対して、表情豊かで親しみやすく、TPOを選ばないフォトリアルなAIアバターを新たな労働力として導入し、接客業務の一部自動化や無人化を実現したいとの考えだ。
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