
ボストン・ダイナミクスは、2025年3月5日、新しいAtlasが自動車メーカーの工場で働くためにトレーニングをしている、その舞台裏を描いた動画をYouTubeで公開した。同社が現在、韓国のヒョンデ(現代自動車)の傘下にあることもあり、自動車製造工場での実用化にフォーカスしているようだ。
動画の解説欄では「昨年、私たちはより速く、より強く、よりコンパクトで、より正確に動作する新型アトラスを発表しました。私たちは、何でもこなせる世界で最もダイナミックな人型ロボットを設計しています。
私たちの最初のタスクは、自動車製造における一般的な物流タスクである部品の「シーケンシング」(順序付け)です。私たちがなぜシーケンシングから始めたのか、どのように困難な問題を解決しているのか、そしてどのようにして真の価値を持つヒューマノイドロボットを提供しているのかをご覧ください。」と記載されている。
■ 拾う、運ぶ、置く、繰り返す | Atlas のラボ内部
Atlasのデジタルツインとシミュレーション、トレーニングの様子
動画で語られている内容を要約すると概ね次のとおり。同社のAtlasの今後の更なる進化に注目が集まる。
ボストン・ダイナミクスの新型ヒューマノイドロボット「Atlas」は、柔軟な作業対応が可能な次世代ロボットとして注目されている。従来の油圧式モデルは高い運動性能を持っていたが、複雑で高コストかつメンテナンスが困難だった。新型Atlasはバッテリー技術と自社製電子アクチュエータを活用し、より高速・強力・コンパクトで、維持管理が容易な設計となった。
ヒューマノイドロボットの課題の一つは、物体操作能力の向上である。人間は無意識のうちに物を操作するが、ロボットはその経験がない。AI技術を活用し、大量のデータを用いた学習によって、汎用的な操作能力やエラー補正能力を向上させることが期待されている。ボストン・ダイナミクスでは、現実世界やシミュレーション環境でロボットを動作させ、そのデータを活用してモデルを訓練している。
新型Atlasは、自動車製造における「シーケンシング(部品の順序管理)」作業に応用されている。この作業は、数千種類の部品を適切な順序で配置し、製造ラインの効率を向上させる重要な工程である。Atlasは、必要な部品の種類や配置を認識し、効率的に作業を遂行する。
頭部のカメラを活用して周囲の状況を認識し、作業対象の位置や姿勢を推定する。また、複数の物体を把握しながら、安全に動作するための足運びを調整することも可能だ。物体を配置する際には、動作の成功・失敗をリアルタイムで判断し、必要に応じて修正を行う。さらに、身体の各部は人間の関節の稼働範囲を意識せず、360度回転させたり、素早く方向転換して効率的に移動できる点も特徴的だ。
ボストン・ダイナミクスは、約15年以上にわたり二足歩行ロボットの開発を続けてきた。新型Atlasは、従来モデルの運動能力を超える可能性を持ち、同社のロボット開発の集大成ともいえる。今後、AI技術と融合することで、より高度な作業をこなせるヒューマノイドロボットの実現が期待されている。
https://bostondynamics.com/blog/getting-real-with-humanoids/
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神崎 洋治
神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。