
DFA Roboticsは、実証実験を経て、東京慈恵会医科大学附属柏病院に、病院として初めて運搬ロボット「KEENON W3」が採用されたことを明らかにした。
実証実験では、ビーキャップが提供する位置情報サービス「Beacapp Here」とビーコンを用いて、医療従事者の院内移動情報を分析し、ロボットが検体や薬剤運搬を代替することで、看護補助スタッフの運搬回数と移動時間を半分に削減できたことが明らかとなり、本格導入に至った。
導入の背景
日本の医療環境は、医師や看護師の長時間労働によって支えられている。しかし、今後は医療ニーズの変化や医療技術の進展に加えて、少子化による医療従事者の減少により、一人ひとりの負担がさらに増大することが予想される。
こうした状況を踏まえ、厚生労働省は2024年4月に「医師の働き方改革」法案を施行し、適切な労務管理の実施やタスクシフト/シェアの推進を進めている。また、病床数664床、1日あたりの外来患者数1,300人を超える大規模病院である「慈恵医大柏病院」では、立地の影響もあり人材確保が難しく、慢性的な人手不足の状況が続いている。
DFA Roboticsは、テクノロジーを活用して慈恵医大柏病院が抱える課題を分析し、解決策を提案するため、同じチェンジグループの「ビーキャップ」と連携。院内にビーコンを設置し、看護師 / 看護補助スタッフの稼働状況を「Beacapp Here」を活用して分析したところ、院内では物を運ぶ・取りに行く動きが多いことも明らかになった。
DFA Roboticsは、スタッフが患者対応を一時中断し、検体や薬剤、医療物品の運搬のために往来を繰り返していることに着目し、看護師や看護補助スタッフが外来に滞在し患者対応に使える時間を増やすため、検体・薬剤搬送をロボットに置き換える提案を行い、実証実験に至った。
実証実験の結果
実証実験の結果、2階の検体・薬剤搬送は基本的にロボットが行うため、看護補助スタッフの往来回数を減らすことに成功。また、看護補助スタッフとロボットにそれぞれビーコンを持たせ調査したところ、スタッフの1日あたりの平均運搬回数は9.5回から4.8回と半分に削減し、平均移動時間も9分39秒から4分57秒と半分程度に削減された。
ロボットが間接業務を代替することで、看護師や看護補助スタッフは本来のケア業務に専念することが可能となり、少ない人数でも質の高い医療を提供できる環境が実現した。
調査期間 | 2024年10月16日から2週間 |
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実証実験の目的 | ・単純作業を削減して生まれた時間を本来の業務に充てることで、患者へのホスピタリティ向上 ・検体・薬剤運搬のための往来を削減し、スタッフの負担を削減する |
実施内容 | ・慈恵医大柏病院 2階の検体や薬剤の運搬をロボットに代替 |
実証実験の調査方法 | ・ビーコンを看護補助スタッフとロボットの双方に持たせ位置情報サービス「Beacapp Here」を用いてデータを取得 | 実証実験の結果 | ・看護補補助スタッフの平均運搬回数(1日あたり):9.5回→4.8回 ・看護補助スタッフの平均運搬時間(1日あたり):9分39秒→4分57秒 |
今後もDFA Roboticsは、病院内における運搬や清掃などの間接業務をロボットで代替することで、医療機関における人手不足の解消ならびに生産性の向上を支援するとともに、チェンジグループ企業との連携を加速させ、ロボティクスソリューションを通じて、様々な領域における課題解決を推進するとしている。
導入施設の声
東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 先端医療情報技術研究部 講師 博士(医学) 竹下康平 氏
近年、医療の提供に必要な医薬品・医療機器、その他経費の高騰と人手不足が病院運営を直撃しています。国の制度により、医療機関はこれらの経費の増分を直接患者様に転嫁できないルールとなっていることから、慈恵柏病院看護部と当部では病院運営効率の向上と人手不足の解消をめざしロボットを用いたタスクシフトにチャレンジいたしました。ロボットの選定では、綿密に計画して大規模システムへの多額の投資を行うよりも、後戻りもできる金額感のものを採用し、まずテクノロジーを現場で使用して試行錯誤することが重要であると考えました。実際に使用してみると、採血後の検体搬送に人手がとられなくなったため患者さんと関われる時間が増えた、ロボットの話題を種に患者様・スタッフが話をする機会が増えたと感じており、またロボットが話す言葉に癒されたとのコメントも届いています。今後、さらに定量的なデータを取得し、活用のシーンを広げられればと考えております。
搬送ロボット「KEENON W3」について
DFA Roboticsが取り扱う搬送ロボット「KEENON W3」は、1度に最大4箇所まで運搬が可能なロボット。パスワードを入力すると開く扉を搭載しており、検体や薬剤など秘匿性の高い搬送にも対応。また、エレベーターと自動連携することで、フロアをまたいだ搬送も可能。
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