アバター警備ロボット「ugo」量産へ、9月より販売を本格化 品川シーズンテラスでの導入効果とデモを大成が公開

総合ビルメンテナンス会社の大成株式会社はアバター警備ロボット「ugo」の販売を本格化、9月より量産版でサービス開始することを発表した。
警備ロボット導入の大きな課題の「初期導入コスト」を大きく削減することに成功。省力化とコスト面で有効性が明らかになったため、本格展開に踏み切る。ugo本体の月額レンタル料金は18万5千円から、初期費用は不要。エレベータ連携機能にも対応する。初年度は20台以上、次年度は50台以上の販売を見込む。

品川シーズンテラス株式会社と大成株式会社が記者発表会に登壇。(左:品川シーズンテラス株式会社 取締役管理部長 重田廣行氏、右:大成株式会社 代表取締役副社長 加藤憲博氏


遠隔操作と自律操作をバランスよくハイブリッド

アバター警備ロボットはugo株式会社と共同開発した「ugo TSシリーズ」。
大成とugoはこれまで品川シーズンテラスにて、バージョンアップをしながら複数回の実証実験を実施。実験の結果、同機2台が立哨警備と巡回警備を行うことで、警備員の4人削減を達成。2021年4月より、同機種を活用した「DX警備ソリューション」の商用化1号として本格的な運用を行なっている。

アバター警備ロボット「ugo TSシリーズ」の全景。ふたつのアームがエレベータを操作したり、ドアの開閉など、人間的な作業を可能にする

警帽を被っていることで、警備のお仕事をしているロボットだということがわかる

「ugo TSシリーズ」の最大の特徴は遠隔操作と自律操作をバランスよくハイブリッドで組み合わせているところ。頭上高く設置された俯瞰カメラで遠隔操作することができ、ルート巡回などは場所を指示するだけでugoは自動で移動することができる。

頭上に伸びた俯瞰カメラと、身長が伸縮できる機構も大きな特徴

品川シーズンテラス内を巡回警備のデモを行う「ugo TSシリーズ」。巡回警備は自律で移動できる

「ugo TSシリーズ」の操作は簡単で、ノートパソコン等で巡回するフロア階を指定するだけ。「敬礼」したり「おはよう」「こんにちわ」「エスカレータ注意」などの呼びかけもボタンをクリックして指示

ふたつのアームを搭載している点も特徴的だ。例えば、警備ロボツトのエレベータ連携機能は通常、エレベータ管理システムとロボットが通信で連携する必要があるため、初期導入時にシステム開発費用がかかることが一般的だが、ugoは人と同様にアームによるエレベータ操作を機械学習して習得している。そのためシステム連携が不要で、人が操作する一般的なエレベータなら、原則としてどんな機種にでも対応できる。また、品川シーズンテラスのセキュリティ対応のエレベータではIDカードをかざして利用階を指定する必要があるが、ugoは人と同様に左手でICカードをかざし、右手でボタン操作をするデモを披露した。

アームやハンド部分は作業によって換装することで拡張性が広がる。手の甲のでっぱりはエレベータのボタンを押すため

左手でICカードをかざし、右手でボタン操作をするデモを披露

「ugo TSシリーズ」は身長伸縮可能な構造を採用し、104cm~165cmに対応。横幅は36cm。重量は60kg。360度移動可能なメカナムホイールの4WD駆動を採用した。
また、5G通信による営業連携をNTTドコモと締結しており、将来の拡張性の伸びしろも確保している。


■動画 品川ガーデンテラスでの「ugo」デモ 01

■動画 品川ガーデンテラスでの「ugo」デモ 02

■動画 品川ガーデンテラスでの「ugo」エレベータ操作のデモ


品川シーズンテラスでは2台のugo導入により4人分の作業を削減

品川シーズンテラスでは2019年11月より「立哨・巡回警備の遠隔操作」の実証実験を開始。2020年2月には「オフィスフロアの自動巡回」、2020年7月「立哨・巡回での複数台運用/エレベータ移動」、2020年11月「警備員の代替としての検証」、2020年12月「警備運用面での課題抽出」と実証実験を繰り返しながらアップデートを行ってきた。


実証実験から「人より広い視野で監視できる」「警備員の集中力が向上する」「複数台運用による業務効率化」「画像を記録として残せる」「スタッフの身体への負荷が軽減する」「警備でも遠隔対応が可能」という利点を確認することができたという。


「ugo TSシリーズ」2台を立哨警備・巡回警備に活用、警備シフトの組み換えや立哨・深夜の巡回をugoに担当させる等の工夫も行い、警備員を4人削減する効果が出た。人とugoによるハイブリッドで、効率的な警備業務が実現できることを確信、コロナ禍での感染リスクを軽減できる利点も考慮し、9月より機体を量産化して本格サービス開始に踏み切る。

今年度の導入目標は20台以上。翌年からは50台以上の導入を目指す。競合のSEQSENSE社が1年半で10台の導入実績を2021年4月に発表していることから、それを上回る目標数となる。また、当初は大成が警備業務を受託しているクライアントを中心に導入を進めるが、既に他の警備会社からの問い合わせもあるため、他社への導入も順次進めていく考えだ。


「T-Spider」と連携するDX警備ソリューション

大成とugoは警備業務を一元管理できる情報プラットフォーム「T-Spider」を共同開発していて、このソリューションを活用したDX警備ソリューションは、複数のロボットの遠隔操作や運用管理だけでなく、データベースで運用情報を共有、警備の報告書を作成したり、オンラインで確認することが可能となっている。
これにより日々の業務課題の抽出や分析など、スピーディな対応が可能になる。さらに、データを活用した分析にも対応、防災センター及び警備会社本部、管理会社も含めた3社間で情報を共有、効果的な管理運営を実現する。

今後は、「T-Spider」をアップデートし、「ugo TSシリーズ」との連携だけでなく、監視カメラやセンサー等との連携を目指し、警備員1人当たりの更なる生産性の向上、管理コストの低減を図るとしている。また、警備領域にとどまらず、人材不足を抱える様々な業界での利用可能性を模索するとしている。

また、「ビル警備を効率化するアバター警備ロボットを活用したDX 警備導入に向けた事前ウェビナーを7月より開催」することも発表している。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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