凸版印刷 複数の異種ロボットを一元制御する「TransBots」を開発「WRS2020」がロボット遠隔参加システムとして採用

凸版印刷株式会社はVR技術とComputer Vision(以下、CV)技術を活用し、複数の異なる種類のサービスロボットを一元管理・制御するデジタルツイン・ソリューション「TransBots」(トランスボッツ)を開発し、同ソリューションが2021年9月(愛知)と10月(福島)に開催される「World Robot Summit 2020」内で行われる「World Robot Challenge」(競技会場)のロボット遠隔参加システムとして採用されたことを発表した。

同ソリューションは実際の展示会や会場等の実空間と、それを再現したVR空間をリアルタイムに連動し、複数ロボットの一元管理・協調制御を行うというもの(複数台のロボット間で同期をとって動作する)。「World Robot Summit 2020」では競技会場内を複数の「テレプレゼンスロボット」を走行させ、各ロボットが撮影した競技会場の様子をライブ映像として「WRS VIRTUAL」に配信される。


「TransBots」開発の背景と狙い

近年の人口減少や超高齢社会を背景に、労働力不足を補うロボットへの期待が高まっている。特に、介護サービスを必要とする高齢者の増加に対し、人材の不足が課題となっている介護業界や、過疎化が進む地方や離島における医師や看護師の不足などにおいて、遠隔操作が可能なロボットを活用した対策が検討されている。また、昨今では新型コロナウィルス感染症拡大防止のため、人の移動を制限する、人との接触や対面を避けるなど、ビジネスや生活のスタイルが大きく変化する中、非接触のコミュニケーションツールの活用が急速に進んでいる。近年、加速するデジタル社会では、AIやIoT、VRを活用したオンラインでのコミュニケーションや仮想体験など、いわゆるデジタルツイン技術への期待も高くなっている。

このような課題に対し、凸版印刷はこれまで培ってきたVR技術とCV技術を応用して、VR空間でのビデオチャットによる会話と、遠隔操作ができるテレプレゼンスロボットを組み合わせた新たなコミュニケーションを実現するデジタルツイン・ソリューション「TransBots」を開発。

同ソリューションではオペレータが管理画面を通して、VR空間上でロボットの走行コースを設定すると、実際のロボットが現在の自己位置を推定し、指定されたコース上の障害物を回避したり、ロボットからの音声で周囲に安全を促したりし、実際の目的場所まで安全に自律走行することができる。また、走行コースの設定はVR空間上で設定できるため、遠隔地からのロボット遠隔操作も可能。

左:「TransBots」(トランスボッツ)の管理画面の一例、右:「テレプレゼンスロボット」の自走の様子 © Toppan Inc.

これらの機能を利用し、入場制限が設けられた展示会やコンサートなど大規模イベントへの遠隔参加や、離島の住民がオンラインの医療サービスを受けるなど様々な活用が期待できる。さらに、テレプレゼンスロボット以外の搬送ロボット、移動型ピッキングロボットやドローンなど多様なサービスロボットの活用も可能となる。凸版印刷は「TransBots」を始めとしたデジタルツインの実現をサポートするソリューション開発を通じて、ふれあい豊かでサステナブルなくらしの実現を目指す。


なお、「TransBots」の開発においては、下記のロボットメーカー各社と連携したという。

「Ohmni Robot」
エレマテック株式会社(日本国代理店)

テレプレゼンスロボット「temi」
株式会社 hapi-robo st(日本国内総代理店)

協働運搬ロボット「THOUZER」
株式会社Doog



「TransBots」の特長

・複数の異種ロボットを一元で協調制御が可能
ロボットの種類に関わらず、VR空間での制動シミュレーション結果を実空間の該当するロボットへの制動に反映することで複数のロボットを一元管理し、協調制御を行うことができる。空間内に複数台ロボットが存在しても、お互いの位置を把握し、衝突することなく走行可能。

・安全安心で簡単なロボット操作が可能
管理画面からロボットの走行コースを設定すると、ロボットが自己位置を推定し、指定されたコースの障害物を回避したり、ロボットからの音声で周囲に安全を促したりし、目的場所まで自律走行することができる。走行コースの設定も高度な専門性を要しないため、オペレータは複雑な操作をする必要がなく、誰でも簡単に動かすことができる。

・VRやその他のコミュニケーションツールと連動したデジタルツイン構築も可能
凸版印刷が提供している「IoA Work」「IoANeck」「V-MESSE」を始めとするツールと連動し、様々なニーズに対応することが可能。

「IoA Work」
 遠隔体験技術を用いて利用者が働く場所となるオフィスをリアル空間とバーチャル空間から自由に選択し、新しいリモートワークの環境を提供するサービス

「IoANeck」
 前面に搭載された端末から映像やさまざまなコンテンツの送受信が可能な、首にかけるだけで遠隔地にいる人と体験を共有できるウェアラブルデバイス

「V-MESSE」
 オンライン展示会の開催に必要なさまざまな機能をカスタマイズして利用できるプラットフォーム


今後の展開

凸版印刷は同ソリューションを応用展開し、まずは回診、診療、配薬、面談、面会などの病院業務や、シェアオフィスでの会議、受付業務など施設設備と連動したテレプレゼンスロボットサービスの実証を行い、2022年のサービス実現を目指す。

関連サイト
凸版印刷株式会社

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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