UnityでROS対応ロボットのUIを作成できる ロボット入門者向け教材の無料公開へ アールティとUnity Japanが共同開発

ロボット・AIの分野で高度人材育成を手掛ける株式会社アールティはユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社(以下、Unity Japan)と共同で、ROS対応ロボットの操作性をUnityでより向上させるためのロボット入門者向け教材「UnityとROSで学ぶ移動ロボット入門 UI作成編」を開発したことを発表した。

同教材は2021年10月上旬に無料公開を予定。また、2021年9月16日(木)に東京都墨田区で開催されるROS開発者会議「ROSCon JP 2021」(来場チケット販売は終了)にて教材や開発画面の一部を先行公開される。


共同開発の背景

近年ロボット開発の中で、ロボットのAI化だけでなく、現実世界をデジタル世界でリアルタイムに可視化してシミュレーションするデジタルツインなども注目され、シミュレーションをする上で、よりリアルな周辺環境やロボットの動きの再現が求められている。リアルタイム3Dプラットフォームである「Unity」は、ゲームエンジンとしてだけでなく、製造業やロボット産業分野へも活用の幅を広げ、Unity社はロボット開発用オープンソースミドルウェア「ROS」(Robot Operating System)とUnityを接続するための各種のパッケージやサンプル(英語)をオープンソースソフトウェアとして提供している。

Unity Japanは今回、ロボット開発者に向けた日本語サポートの更なる充実のため、教育研究向けROS対応ロボットの開発、製造販売とエンジニア教育を行う国内ロボットメーカーであるアールティとタッグを組み、新たにロボット実機の操作も見据えたロボット入門者向け教材(日本語)の共同開発プロジェクトを発足し、「UnityとROSで学ぶ移動ロボット入門 UI作成編」を制作した。


「UnityとROSで学ぶ移動ロボット入門 UI作成編」

同教材はUnityとROSを組み合わせたロボット開発のための入門用教材。教材を通してUnityからROS対応ロボットへの指令の出し方や、搭載された各種センサの値などロボットの状態の可視化方法を体験し、ロボットを操作するためのUI開発をUnityで始めることができる。教材の学習後はUnity Asset Storeなどで公開されているアセット(素材)を自分で組み合わせてカスタマイズすることで、オリジナルのUI制作にチャレンジできる。

UI作成のイメージ。右側がシミュレータ上での表示(Gazebo)、左側でロボットやセンサの状態を可視化(Unity)、ボタン操作でロボットへの移動指令も送信可能。※画像は開発中のもの

シミュレーション上で動かすロボットのデータはアールティが製造・販売している実在の小型二輪移動ロボット「Raspberry Pi Mouse」を使用し、教材内のプログラムや入門者にも分かりやすい解説を作るにあたり、アールティが今までに培ってきたエンジニア教育教材や研修のノウハウが活用されている。将来的には実機に対応した教材の公開も予定している。なお、同教材は10月上旬にUnity Japanの運営するWebサイト「Unity for Industry」にて公開を予定している。

Raspberry Pi MouseはメインボードにRaspberry Piを使った左右独立二輪方式の小型移動プラットフォームロボット。ROS対応ロボットであり、オープンソースでROSのサンプルプログラムも多数公開している。2015年の初期モデル発売以降、Raspberry Pi Mouseを教材とした書籍(英Raspberry Pi財団推薦書)の刊行や、大学などの研究機関の授業・研究で使用されるなど、ソフトウェアだけでなく、ハードウェアやクラウドサービスまで幅広く学べるロボット教材としての多数の採用実績がある。
関連サイト
Unity for Industry


Unity Japanとアールティからのコメント

ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン プロジェクト マネージャー 小森 顕博氏のコメント

弊社はこれまでにもUnity Robotics Hubを通じて、ROSとUnityを接続するための各種のパッケージやサンプルをオープンソースソフトウェアとして提供することで、ロボット開発の効率化に取り組んで参りました。

そして今回、より多くのロボット開発に興味を持つ皆様に、Unityを使った開発に参画していただけるよう、業界をリードする株式会社アールティ様のご協力の下、入門者向けの内容を充実させた教材を開発し一般公開することといたしました。

既にUnityをお使いの皆様、Unityは初めてでもROSを使った開発経験をお持ちの皆様、これから両方を始める皆様、いずれにも対応した内容となっております。この教材を通して、一人でも多くの皆様にロボットに興味をお持ちいただき、開発が一層加速することを願っております。

株式会社アールティ 代表取締役 中川友紀子氏のコメント

弊社はこれまで、AIとロボティクスの領域で教材開発、セミナーなどを通じてプロフェッショナルを目指すロボットエンジニアの育成に貢献して参りました。ロボット教材はGitHubリポジトリやマニュアルを整備し、世界のデファクトスタンダードになりつつあるROSに関しても最新の長期サポート版に対応できるようにしています。

また近年、IoTやシミュレーションの技術革新が進み、リアルな世界がより精緻なデータとしてバーチャルに取り込まれ、そして、バーチャルな世界がよりリアルに近づきロボットによって具現化する世界がすぐそこまで来ています。そのような中で、リアリティのあるUnityのシステムで弊社のロボット教材を開発できることは、このような時代の開発にはぴったりだと考えています。

今回、Unityと共同開発した教材を通じて、これまでハードウェアに馴染みの薄かったソフトウェアエンジニアにはハードウェアを身近に感じてもらえることを、ハードウェアエンジニアにはUnityによる可視化やUIの広がりを体験し、より使いやすいインターフェイスをロボットに装備できるようになることを期待しています。

関連サイト
株式会社アールティ

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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