NTTグループが「無人運航船」に必要な通信システムの技術実証に成功 東京湾で無人運航、陸上から遠隔操船を実施

日本電信電話株式会社、NTTコミュニケーションズ株式会社、株式会社NTTドコモは無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」において、日本海洋科学を中心としたDFFASコンソーシアムのメンバーとして、無人運航船に必要となる通信システムの開発に取り組んでいる。

3社は無人運航に必要な機能(遠隔操船機能、陸上支援機能など、及びそれを支える衛星とモバイルのハイブリッド通信)を網羅した包括的なシステムを備えた無人運航船による、船舶が輻輳する海域(東京湾)での技術実証に世界で初めて成功したことを発表した。(輻輳する実海域・航路におけるコンテナ船規模での無人運航船は世界初の実証実験となる)


技術実証の背景

無人運航船の実現にはさまざまな技術(操船、状態監視、通信など)が必要であり、その技術の機能の健全性(可用性)を担保し続けるために、通信は重要かつ必要不可欠な要素。しかし、海上を航行する船舶はこれまで衛星通信など外部環境によって不安定となるインフラが利用され、無人運航に求められる可用性の確保が困難だった。

今後、6G/IOWN時代のモバイル通信では「超カバレッジ」によって日本国内の海上がエリア化されることが期待されており、その時代を見据えた衛星・モバイル通信のハイブリッドなシステムが求められている。


技術実証について

DFFASコンソーシアムは749型コンテナ船「すざく」(全長95m、総トン数749トン)を用いるとともに、無人での運航を陸上から支援するための陸上支援センター(千葉県幕張)を設置し、東京港(東京湾)から津松坂港(伊勢湾)までの往復距離約790kmの区間をコンテナ船に搭載した無人運航船に必要な機能を網羅した包括的なシステムを用いて運航する実証実験を行った。


具体的には衛星とモバイル通信に対応したSDN技術(ソフトウェアを用いてネットワークを制御する技術の総称)を用いた通信システムを船舶と陸上に配置し、通信経路を衛星とモバイルのハイブリット化することで、船上設備が通信経路を意識することなく、通信状況に応じて最適な経路を自動選択可能な仕組みを実装。東京湾をはじめとした船舶の非常に多い海域において無人運航、および陸上からの遠隔操船などを行った。




今回の実証実験は多種多様な国内30社以上がコンソーシアムを組み、他にも30社以上の企業・組織が参画して合計60社以上で構成する体制で開発を進め、無人運航船の社会実装をめざすプロジェクトとなった。今後、実証実験で開発した技術の海事業界への導入・商用提供を目指す。

【各社の役割】
・日本電信電話株式会社
無人運航システム開発PJの共同研究・全体マネジメント

・NTTコミュニケーションズ株式会社
SDN技術を用いた衛星・モバイル通信のハイブリッド通信システムの開発

・株式会社NTTドコモ
LTE通信及び通信ゲートウェイ(回線品質計測機能含む)の開発


「無人運航船」の実用化を目指すプロジェクト「MEGURI2040」

「MEGURI2040」は日本財団が2020年2月より実施する無人運航船プロジェクト。同プロジェクトは2021年度末までの期間、5つのコンソーシアム(複数の民間企業体)と共同で無人運航船の開発・実証実験等を行うもの。無人運航船は海の事故の減少、海運の人手不足の解消など、様々な課題の解決に繋がるものとして期待されている。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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