埼玉工業大学 水陸両用船の無人運転・運航技術の開発に成功 群馬県八ッ場あがつま湖 約2kmを無人運航

埼玉工業大学は日本財団が2022年3月14日に八ッ場あがつま湖にて実施した水陸両用船「八ッ場にゃがてん号」の無人運航の実証実験に参加したことを発表した。

実証実験では八ッ場あがつま湖の水陸両用バスに自動運転・運航システムを共同で構築し、世界初の水陸両用船の無人運転・運航技術の開発に成功した。同プロジェクトで開発された、経路の追従、避航システムなどは、船舶の安全運航等に寄与することが期待される。


長野原町が保有する水陸両用船に自律運航システムを搭載

無人運航船の実証実験に成功したのは水陸両用船「八ッ場にゃがてん号」。長野原町の保有する本船に自律運航システムを搭載し、群馬県八ッ場あがつま湖にて約2km、約30分の無人運航した。

八ッ場ダム無人運航船の入水シーン(日本財団提供)

無人運航の実証実験を行った 「八ッ場にゃがてん号」

水上および入出水における経路追従のための位置推定には高精度GNSSとジャイロを利用。自動運転ソフトウェアであるAutowareのモデル予測制御に船舶モデルを導入して、水上も陸上も高精度な経路追従を実現している。障害物の自動検知と回避にはLiDAR、カメラ、ソナーを搭載し、Autowareの深層学習アルゴリズム等を応用し、実現している。また、車用と船用の制御装置を同時制御することで、船舶と車両の自動切り替えもスムーズに行えるシステム開発も行った。

無人運航船の運転席(日本財団提供)


現在、日本で運用されている水陸両用船の多くは観光目的で使用されている。一方、近年頻発する豪雨災害に備え自治体等で導入が進むなど、水陸両用船への注目度が高まっている。実証実験を経て、将来的に水陸両用船による自動運航が実用化すれば、災害時の技術転用に加え、水陸両用の特性を生かして国内の有人離島へのシームレスな物流インフラの構築などが期待できる。


八ッ場スマートモビリティプロジェクトについて

埼玉工業大学(以下、略称:埼工大)はITbookホールディングス株式会社が代表となる「水陸両用無人運転技術の開発 ~八ッ場スマートモビリティ~」のコンソーシアムに長野原町、エイビット、日本水陸両用車協会と共に参加して開発を進めてきた。共同研究により、自動運転・運航による水陸両用バスの開発とソフトウェアおよびシステムの設計・開発。その成果として、長野原町所有の水陸両用船「八ッ場にゃがてん号」(全長11.83m、総トン数11トン)が陸上から入水し、水上を航行して障害物を回避し、上陸する一連の自動運航を実現した。なお、埼工大は「MEGURI2040」プロジェクトのコンソーシアムメンバーとして参加する唯一の大学となる。

水陸両用船「八ッ場にゃがてん号」(全長11.83m、総トン数11トン)

埼工大は今回の実証実験において自動運転バスの開発で培ってきた技術と、オープンソースの自動運転ソフトウェアであるAutowareをベースに無人運航船のシステムを構築した。この2年間の共同研究の成果として「離着水・離着桟における位置推定及び自動運航技術」「水上障害物検知及び回避のための技術」「ローカル5G等を用いた遠隔操作技術の構築」において目標を達成した。


埼玉工業大学・自動運転技術開発センター長 渡部大志教授は以下のようにコメントしている。

日本財団の無人運航船プロジェクトに参加し、世界初となるチャレンジの機会を頂き感謝します。今回の実証実験のトピックスとしては、入水、障害回避、出水という3つの大きな課題に対して開発チーム一丸となって解決に取り組み、目標を達成できました。当初はマイクロバスレベルの開発でしたが、2年間の経験を通して、車の自動運転技術を上手く転用して、水上の自動運航技術を開発できました。


「ITS-America 2021 Annual Meeting」で取り組みを紹介

2021年12月7~10日にCharlotte, North Carolina USで「ITS-America 2021 Annual Meeting」が開催された。その中で「本学の自動運転技術の成り立ち」及び「水陸両用無人運転技術の開発〜八ッ場スマートモビリティ〜」が紹介されている。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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