経済産業省は、ロボットを導入しやすい「ロボットフレンドリーな環境」の実現に向けて、官民一体で「惣菜盛付ロボットや製造工程最適化のためのシステム」への取組みを発表した。また、惣菜製造現場での実用化を開始し、その例としてアールティの惣菜盛付ロボット「Foodly」、コネクテッドロボティクスの「惣菜盛付ロボット」、グルーヴノーツの「量子コンピュータによるシフト計算最適化と、売上予測システムの開発と現場導入」を紹介した。
経済産業省(経産省)は2022年1月に「スマート物流とスマートシティ」に関する「ロボットフレンドリーな環境」の推進を三菱地所らと発表している。今回はその延長にあり、「惣菜の製造工程の現場」向けに、ロボット×AI×量子コンピュータによる効率化・自動化についての取り組みをデモを交えて紹介する場となった。
深刻な人手不足をロボットやAIも量子技術で打開したい(経産省)
冒頭で、主催者を代表して経産省の大星氏より「コロナ禍によって人手不足は深刻化する一方であり、飲食業、調理工場、惣菜製造の現場でも喫緊の課題となっているため、ロボットやAIなどのICTへの期待が高まっている。今回はその成果として、実際に導入されている実例を紹介したい。また、この業界でも働く人のシフト作成は負荷が高い業務だが、量子コンピュータによってシフト計算の省力化が進んでいる。これも実例として紹介したい」というコメントがあった。
「ロボットフレンドリー」がなぜ必要か(経産省)
続いて経産省の福澤氏が登壇し「ロボットフレンドリー」がなぜ必要かを説明した。
福澤氏は、ロボットを現場に導入するためには、導入の壁を低くすることに重点を置く。導入時の手間、費用の削減などだ。
それには、現状の業務にロボットを無理やり合わせるのではなく、作業内容や人との分担方法を含め、ロボットにとってもフレンドリーな体制で導入を考えていくことの方が得策と説いた。それによって、ロボットやシステムのカスタマイズが最小限で抑えられたり、結果として導入コストが廉価に済むだろう、という提案だ。
ロボットの実装を進めるためのタスクフォースとして4つのテクニカルコミッティー(TC)を設定した。前回は「施設管理TC」をレポートしたが、今回は「食品TC」にあたる。日本惣菜協会やアールティ、コネクテッドロボティクス、グルーヴノーツら各社が参画している。
食品TCが目指すテーマとしては「中小企業を含むあらゆる惣菜メーカーが安価にロボットシステムを導入し、盛り付け工程の自動化と出荷工程の自動化を実現できる世界」とする。そのうえで卒ようなロボ振れ施策として下記の7点をあげた。
この7つのうち、今回の説明会では、1~5までの項目について、導入と実現ができたのでお披露目することになった。
この「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業(令和2~6年度実施)のいち、4年度の予算額は9.5億円を予定している。
惣菜工場にロボット導入が困難な理由
続いて登壇した日本惣菜協会の荻野氏は「飲食・惣菜製造の業界は人手不足が深刻で募集をかけてもスタッフが集まらない。非常に苦労している。一方で自動化が難しく、ロボット化で実用まで到達して成功した企業はいまだ1社もない」と語った。
次にロボット化が難しい理由を具体的にあげた。ひとつは人の手でやれば簡単でもロボットの手では技術的に難しいこと、システム的に詳しい人が必要だったり運用がむずかしいこと、そもそも価格が高すぎて導入できない、など。
それを踏まえて、ロボット導入をしやすくするために必要なロボフレ環境を提案した。それには、ロボットに高精度な性能ばかり求めずに、人が助け合ったり、ロボットが扱いやすいケース等を導入するなど、ロボットに合わせた環境を望まれることも付け加えた。
そして、実証実験ではなく、業界初となる、実際に現場に導入したロボットシステム2種と、シフト計算を行う量子コンピュータ技術を紹介するに至った。
■ ロボットフレンドリーの導入実績/成果発表
ポテトサラダを盛り付けるロボット(コネクテッドロボティクス)
いわゆる練り物、ポテトサラダやマカロニを自動ですくってケースに盛り付けるロボット。マックスバリュ東海が3台を導入して運用を開始した。今後、4台めの導入を行う予定だ。
荻野氏の話では、現在まだ開発途上で「処理能力は”人並み”で熟練工には及ばない」としながらも、今後はもっと処理速度を上げたり、別の惣菜も盛り付けられるようになるだろう、とした。
唐揚げを盛り付けるロボット(アールティ)
アールティの人型協働ロボット「Foodly」は、イチビキ、ヒライ、藤本食品の3社で導入に至っている。これば素晴らしい成果といえるだろう。人のラインに混ざって「Foodly」が働く姿は印象的だ。
なお、「Foodly」の作業速度はまだ速くはない、としながらも、協働ロボットの動作速度には法的な制約があって、それによるところがある点も解説された。
量子コンピュータでシフト計算を数分で行う(グルーヴノーツ)
複雑なシフト計算は多くの業界にとって悩みの種になっている。数百人規模のシフトの最適化を現存のコンピュータでやろうとすれば数十年かかるとも言われ、いわゆる「組合せ最適化問題」が得意な量子コンピュータなら数分で最適解を導き出せる、と期待されている。それを現実に実線導入しているのがグルーヴノーツだ。実物の量子コンピュータは管理運用が大変なため、D-Waveの量子コンピュータを活用したクラウド運用となる。
なお、それぞれのロボットや量子技術についての解説は個別の記事でも紹介する予定だ。
ロボットフレンドリー発表会の関連記事とデモ動画 (4部作)
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。