【動画】東急が自動運転バスを報道陣に初公開 公道での試乗会レポート 高齢化社会に向けたラストワンマイルの実証実験

東急バス株式会社と東急株式会社は、2022年9月13日から15日まで、多摩田園都市エリアにおける自動運転バス(自動運転モビリティ)「レベル2」の実証実験を実施し、報道関係者向けに試乗する機会を設けて公開した。



東急として自動運転バスの実証実験を公道で行うのは初めて。期間は9月13日~15日までの3日間で、技術実証が主な目的となる(一般乗客などの参加はない)。


小型の自動運転バスは、報道陣を乗せて約1.3kmの左回り(反時計回り)の周回ルートを、最大19km/hの速度で走行。ハンドルとアクセル、ブレーキ操作はすべて自動運転システムが制御して走行した。


信号の地点のみ、必ず停車するシステムになっていて、運転士が(信号機が青で通過できると)確認したときにボタンを押すことで自動運転バスは交差点内に進入して左折するしくみがとられていた(信号協調はない)。

車両はタジマコーポレーション製の8人乗り。車両寸法は4900×1500×2300mm


目指すはラストワンマイルの自動運転モビリティ

東急としては、現在はまだ一般乗合バスを自動運転化する構想はなく、団地内や自宅からバス停までなど、ラストワンマイルを小型で低速の自動運転モビリティでカバーしたい考えだ。

すすき野団地折返所に集合し、自動運転バスのメディア向け試乗会を実施

実際、この日に自動運転バスが走行したコースも坂が多く、高齢者がバス停まで歩くのには苦労しそうなエリア。高齢化社会を見据えて、バス路線と自宅を繋ぐモビリティの可能性を模索している。将来的には一定の走行ルートに留まらず、オンデマンドなどによってフレキシビリティを持った自動運転モビリティを実現したいとしている。

すすき野団地折返所から公道に出るまでは運転士が手動で運転したが、公道に出てからは自動運転でスタート。ハンドル、アクセル、ブレーキはシステムが制御してルートすべての区間を自動運転で走った

■動画 東急バス試乗会の様子




自動運転モビリティの仕様とシステム

使用した自動運転モビリティは電動でAC100V電源で充電できる。1回の充電で距離80kmを走行できる。車両はタジマコーポレーション製の8人乗り。運転席と助手席を除き、メディアは最大6人が乗車できた。グリーンスローモビリティに準拠し、そのためもあって最高時速は19kmまでに制限されている。


システムは名古屋大学COI「ADENU」を使用している。高精度三次元地図とLiDAR、センサー類による自己位置推定や周囲の障害物を検知・認識する完全自律走行タイプのシステムとなっている。


なお、遠隔監視・遠隔操作システムにも対応しているが、今回の実証実験では使用していない。


車両前部の上に設置されたカメラ

Aが車内外とのコミュニケーション装置(マイク・スピーカー)、Bが通信装置(アンテナ)

前方と側面の安全を確認したり自車位置推定をおこなうためのLiDAR

自動運転モビリティの運転席。公道に出たら、運転士はハンドル、アクセル、ブレーキの操作はほぼ全く行なわず、システムがすべて制御して走行した。運転士はハンドルの上のボタンのみ操作し、信号が青で安全に侵入できることを伝えるために使用した

また、GPSやGNSSなど衛星通信による位置情報システムとは今回は連動していない。ルートは反時計回りのため右折はない。

車両の後部には「自動運転の実証実験のために低速運転中であること」が明示されている。実際に何台かの一般車両が追い抜いていった。


車両後部に大型のコンピュータ類(自動運転システム)が搭載されていて、自律運転や障害物検知等の処理を高速に行っている。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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