【速報】NVIDIA「Jetson Orin Nano」を発表 従来Nanoの約80倍の高性能 超小型AIコンピュータ Orinファミリーは3機種に

NVIDIAは「GTC 2022」において、CEOのジェンスン・フアン氏が基調講演で、ロボティクスやエッジAI向け超小型AIコンピュータ「Jetson」シリーズに新しいラインナップとして、エントリーレベルの「Jetson Orin Nano」を加えることを発表した。「Jetson Orin Nano」には8GB版と4GB版の2種類が用意される。




価格は199ドルからで出荷予定は2023年1月の予定。アーキテクチュアは現行の「Jetson Orin」と共通のため、「Jetson Orin開発者キット」を使用してシステムの開発自体はすぐにでも始めることができる。本体のサイズやピンは今秋発売予定の「Jetson Orin NX」と同じ。

発表された「Jetson Orin Nano」の外観。「Jetson Orin NX」と互換性がある

「NVIDIA Jetson Orin Nano」は、従来の「Jetson Nano」と比較してパフォーマンスが約80倍と飛躍的に向上する。それでいて価格は比較的廉価な設定のため、エントリーレベルのAIエッジデバイスやロボット開発の新しいスタンダードになる可能性が高く、AIカメラなどエッジAI、ロボティクス、ドローンなどに幅広く採用されると予想される。

NVIDIAによれば、Canon、John Deere、Microsoft Azure、Teradyne、TK Elevatorが、発売から6か月以内に「Jetson Orin ファミリー」を採用するという。既に採用している企業は1,000を超える。


Jetson Orinファミリーは3機種、6種類

「Jetson Orin」シリーズは、最上位の「Jetson AGX Orin」「Jetson Orin NX」「Jetson Orin Nano」の3機種がラインアップされる。それぞれ2種類のメモリ容量のバージョンが用意されるので、合計で6種類の製品から選択することができるようになる。

左から、最上位の「Jetson AGX Orin」モジュール、開発向け「Jetson AGX Orin開発者キット」、「Jetson Orin NX」。「Jetson Orin Nano」は右の「Jetson Orin NX」と同サイズ、ピン互換となる。

【Jetson Orinシリーズ】
・Jetson AGX Orin 64GB
 Jetson AGX Orin 32GB
・Jetson Orin NX 16GB
 Jetson Orin NX 8GB
・Jetson Orin Nano 8GB
 Jetson Orin Nano 4GB

「Jetson Orin NX」と「Jetson Orin Nano」のサイズは共通で、ピンやフォームファクタにも互換性がある。
エントリーモデルで今回、新たに発表された「Jetson Orin Nano」は1秒あたり最大40TOPSのAIパフォーマンスを発揮する。高度な自律型マシン向けハイエンドの「Jetson AGX Orin」は275TOPSに達する。

「AIの次の波はロボティクス」GTC 2022の基調講演の中で、CEOのジェンスン・フアン氏は、何度かこのフレーズを使った。




Jetson Orin Nano の主な仕様

・Up to 40 INT8 TOPS powered by Ampere GPU
・6x A78 ARM CPU
・Up to 8 GB memory, 68 GB/s
・Production modules will be available Jan 2023
・Starting at $199

Jetson Orin は、NVIDIA Ampereアーキテクチャ GPU、Arm ベースのCPU、次世代のディープラーニングおよびビジョンアクセラレータ、高速インターフェイス、高速メモリ帯域幅、マルチモーダル・センサー・サポートを備えている。
このパフォーマンスと汎用性により、エッジAIアプリケーションを展開するエンジニアから、次世代のインテリジェント・マシンを構築するロボティクス・オペレーティング・システム (ROS) 開発者まで、より多くのユーザーが知能化デバイスを商品化できるようになる。


パワフルとエコ、Jetson Orin Nanoの2つのバージョン

「Orin Nano 8GB」は、7Wから15Wまでの電力構成が可能で、最大40TOPSを発揮する。一方、「Orin Nano 4GB」は、5Wから10Wの低電力に特化した環境に向いていて、最大20TOPSとなる。


エッジ AI とロボティクス開発をより手軽に

前述のようにJetson Orin Nanoモジュールは、Jetson Orin NXモジュールとフォームファクタやピン互換性が確保されている。エミュレーション・サポートにより、ユーザーは「AGX Orin 開発者キット」を使用して、Orin Nanoシリーズの開発をすぐに始めることができる。
これにより、1つのシステム設計で複数のJetsonモジュールに対応したシステムとして開発することができるため、アプリケーションを拡張したり、用途に合わせて6種類のJetsonハードウェアり中からアップグレードすること等が簡単にできるようになる。

Orin Nano は、高速 I/O と NVIDIA Ampere アーキテクチャ GPU により、複数の同時AI アプリケーション・パイプラインをサポートする。小売の分析や品質管理などのエントリーレベルのAIデバイスやアプリケーションの開発者は、より低コストで複雑なAIモデルに簡単にアクセスできるというメリットがある。


Isaac SIMとIsaac ROS

Jetson Orinプラットフォームは、「Isaac SIM」でロボット開発のシミュレーション環境を提供し、「Isaac ROS」で700,000人を超えるROS開発者を取り込んだ。ROS環境においてもGPUを駆使した高速AIコンピューティングを実現し、ロボティクス分野において現状の様々な課題を解決するシステムが開発可能となる。
NVIDIAは、Jetson Orin Nanoのハードウェア機能とROS用の最新のNVIDIA Isaacソフトウェアの機能を組み合わせることで、前例のないコストパフォーマンスと生産性を実現する考えだ。







パートナー エコシステム、およびソフトウェア サポート

Jetson Orin は、Canon、John Deere、Microsoft Azure、Teradyne、TK Elevator など、ロボティクスおよび組み込みコンピューティング エコシステム全体の顧客とパートナーとの連携も、強力な魅力のひとつだ。
NVIDIA の「Jetson エコシステム」は急速に成長していて、100万人を超える開発者、6,000のクライアント、2,000のスタートアップ企業、150のパートナーが参加しているという。
Jetsonパートナーは、AIソフトウェア、ハードウェア、アプリケーション設計サービスから、AIカメラ、IoTセンサー、周辺機器、開発者ツール、開発システムまで、幅広いサービスとサポートを提供していく、としている。

NVIDIA の組み込みおよびエッジコンピューティング担当のバイスプレジデント、Deepu Talla氏は次のように述べている。
「何百万人ものエッジ AI および ROS 開発者のパフォーマンスが桁違いに向上しています。NVIDIA Jetson Orin Nanoは、パフォーマンスが80倍に飛躍し、エントリーレベルのエッジAIとロボティクスの新しい基準を打ち立てます。今日、Jetson Orin は、考えられるほぼすべての種類のロボット工学の展開にとって理想的なプラットフォームです」

なお、基調講演の配信は「GTC 2022」のアーカイブで見ることができる。

参加登録サイト
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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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