「GTC 2022」の基調講演の中で、デジタルツイン/メタバースに関する新しい情報も発表された。NVIDIAは、プロデューサーやデザイナー、クリエイター、アーティスト、エンジニアなど、様々な分野のメンバーがどこからでもネットワークを介してデジタルツインやメタバースなどの仮想空間プラットフォームに手軽にアクセスし、協働作業が可能な「Omniverseプラットフォーム」(オムニバース)を提供している。
「Omniverse」でデジタルツインを構築する企業が続々
今回の基調講演では既に「Omniverse」を使ってデジタルツインを構築しているたくさんの企業が紹介された。その数と規模に圧倒されると共に、大企業を中心にデジタルツインが大きな利点とコストダウンをもたらしていることが実感できる。ロボティクス業界ではデジタルツインやシミュレータは以前から期待されているのでお馴染みだが、同様に多くの業界がそこに効率化とコスト削減の活路を見いだしている。
これらの画像から、シミュレーション、テスト、トレーニング、現状把握、安全管理、事故抑止、セキュリティ、コスト削減など、各社がどのような目的と用途で、膨大な導入コストと時間をかけてまでデジタルツイン環境を構築しているか想像できる。
■動画
フアン氏は、Omniverseクラウドについて、リリースを通じて次のようにもコメントしている。
「メタバース、つまり3Dインターネットは、USDで記述され、シミュレーション・エンジンを通じて表示される仮想3D世界をつなぎます。クラウドのOmniverseによって、世界中のチームをつなぎ、仮想世界とデジタルツインを設計、構築、運用することができるのです」
■基調講演 19分50秒くらいから
「Omniverse Cloud サービス」を発表
今回の基調講演では「Omniverse Cloud サービス」を開始することも発表した。Omniverse Cloud Nucleus、DRIVE Sim、Isaac Sim、合成データ生成用のレプリケーターも含まれる。
「Omniverse Cloud」を使用すると、ローカルでは高いコンピューティング能力は必要とせず、スマートフォンやタブレット、パソコン等から3Dワークフローを設計、コラボレーションする機能を利用することができる。
ロボット工学者は、スケーラビリティとアクセシビリティが向上した AI対応のインテリジェントマシンをトレーニング、シミュレーション、テスト、展開することも手軽にできるようになる。自動運転車のエンジニアは、物理ベースのセンサー データを生成し、交通シナリオをシミュレーションして、安全な自動運転の展開のためにさまざまな道路や気象条件をテストすることがどこからでも協働で可能となる。
Omniverseには3つのポインがある、とジェンスンフアン氏は強調した。ひとつはクリエイター、デザイナー、エンジニアのための「RTXコンピュータ」、2つめはNucleusデータベースへの接続をホストし、仮想世界のシミュレーションを実行する「OVXサーバー」、3つめはOmniverseへのポータルとなるNVIDIA GDNだ。
■動画 WPP Transforms Automotive Marketing Services with NVIDIA Omniverse Cloud
Siemensが「Omniverse Cloud」と「NVIDIA OVX」を導入
RIMAC Groupだけでなく、WPP、Siemensなどが採用を発表している。
産業オートメーション開発で世界的に知られているSiemensは、今年初めに発表されたパートナーシップに基づき「Omniverse Cloud」と「NVIDIA OVX」インフラストラクチャを組み合わせて導入し、Siemens Xcelerator ビジネス プラットフォームからソリューションを提供するために NVIDIA と緊密に協力しているという。
Siemens デジタル インダストリーズ ソフトウェアの社長兼 CEO、トニー ヘメルガーン(Tony Hemmelgarn) 氏は、次のようにコメントを寄せた。
「オープン エコシステムは、Siemens Xcelerator デジタル ビジネス プラットフォームの中心的な設計原則です。NVIDIA とのパートナーシップを拡大し、Siemens Xcelerator と Omniverse Cloud の統合を開発し、企業が組織をリモートで接続し、製品と生産のライフサイクル全体にわたってリアルタイムで運用できる産業用メタバースを実現できることを嬉しく思います」
Omniverse Cloud サービス
Omniverse Cloud サービスの内容や構成は下記の通り。Omniverse Farm、Replicator、Isaac Sim コンテナーは、NVIDIA A10G Tensorコア GPU を搭載した Amazon EC2 G5 インスタンスを使用して、AWSでのセルフサービス展開用に NVIDIA NGC(https://www.nvidia.com/ja-jp/gpu-cloud/)で既に利用できる。
NVIDIA Omniverse Cloud マネージドサービスは、アプリケーションによる早期アクセスで利用できる。
Omniverse Nucleus Cloud
3D デザイナーとチームが、共有のUniversal Scene Description (USD) ベースの 3D シーンとデータにアクセスし、自由にコラボレーションを行うことを可能にする。Nucleus Cloud を使用すると、デザイナー、クリエータ、または開発者は、ほぼどこからでもシーンの変更を保存、共有、ライブ編集、または変更を表示できる。
Omniverse App Streaming
NVIDIA RTX GPU を持たないユーザーが、デザイナーやクリエータが USDベースの仮想世界を構築するためのアプリである Omniverse Create、レビューと承認のためのアプリである Omniverse View、またはロボットのトレーニングとテスト用の NVIDIA Isaac Sim などの Omniverse リファレンスアプリケーションをストリーミングできるようにする。
Omniverse Replicator
研究者、開発者、企業が物理的に正確な 3D 合成データを生成し、カスタム合成データ生成ツールを簡単に構築して、認識ネットワークのトレーニングと精度を加速し、NVIDIA AI クラウド サービスと簡単に統合できるようにする。
Omniverse Farm
ユーザーと企業が複数のクラウド コンピューティング インスタンスを利用して、レンダリングや合成データ生成などの Omniverse タスクをスケールアウトできるようにする。
NVIDIA Isaac Sim
スケーラブルなロボティクス シミュレーション アプリケーションおよび合成データ生成ツールで、写真のようにリアルで物理的に正確な仮想環境を強化し、AI ベースのロボットを開発、テスト、および管理する。
NVIDIA DRIVE Sim
大規模で物理的に正確なマルチセンサー シミュレーションを実行するエンド ツー エンドのシミュレーション プラットフォームであり、概念から展開まで自動運転車の開発と検証をサポートし、開発者の生産性を向上させ、市場投入までの時間を短縮する。
基調講演の配信はアーカイブで見ることができる。GTC 2022では多くのセッションもオンライン配信されている。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。