NTT『Digital×北斎【急章】』展を開催 驚くべき北斎の技法と革新性の真髄に高精細なデジタル最新技術で迫る!見どころレポート

東日本電信電話(NTT東日本)は、デジタルの最新技術で葛飾北斎の驚異的な作品の数々を高精細に再現した「Digital×北斎」【急章】その1」展「生きるが如く描く~北斎 肉筆の宇宙~」を開催する。
北斎最晩年の大作、岩松院の本堂の天井一面に翼を広げた鳳凰を描いた天井絵「八方睨み鳳凰図」や、光の反射によって色が変わる「白拍子」、出世作となった「富嶽三十六景」など、絵筆の凹凸や素材の質感まで高精細に再現する「DTIP」技術を使った北斎デジタル作品が一堂に展示される。



「冨嶽三十六景」全46作品を一挙展示(「甲州石班澤」の藍摺りと後摺りを別に数えて全47図)。従来は作品劣化や所蔵元が異なる観点から、全作品を一度に鑑賞することは困難だったが、高精細デジタル技術によって実現した

なお、作品展示数は、山梨県立博物館所蔵「冨嶽三十六景」全47図のほか、岩松院所蔵全2作品、北斎館所蔵全5作品全15図、似鳥美術館収蔵全3作品、更には高精細「DTIP」技術を活用したオルセー美術館所蔵の洋絵画6作品を加えて、合計63作品が展示されている。

「Digital×北斎」【急章】では肉筆画にも迫る

最大の見どころのひとつ天井絵「八方睨み鳳凰図」。デジタルで高精細に再現。現物は、縦5.5m、横6.3mの巨大な天井絵だが、今回の展示は縮小したもの。原寸大のデジタル作品は長野県立美術館 「葛飾北斎と3つの信濃」展(2023年7月1日(土)~8月27日(日))で展示され、間近で見ることができる予定だ。

期間は4月29日(土・祝)より10月1日(日)。場所は東京初台のNTTインターコミュニケーション・センター[ICC]。入場料は一般・大学生 1,000円。


「Digital×北斎」【急章】その1」展は開催に合わせて、事前に報道陣に公開され、北斎の魅力と今回活用されているデジタル先進技術の説明会がおこなわれた。


高精細なデジタル技術で「貴重な文化財」を身近に

株式会社NTT ArtTechnologyは、高精細なデジタル技術を持つ株式会社アルステクネと連携して、北斎館(長野県・小布施町)の所蔵作品を中心とした北斎晩年の肉筆画の作品を、高精細デジタルデータを活用して、忠実に再現する展示を行う。

「Digital×北斎【急章】」展のコンセプトや地域活性化への取り組みを語る、NTT ArtTechnology 代表取締役社長 国枝学氏

高精細デジタル化の最大の利点は、今まで門外不出やごく限られた期間限定でのみ公開されてきた作品を、リアリティそのままに博物館や美術館で展示できること。北斎の作品の多くを一堂に展示し、多くの人が鑑賞する機会は今までほとんどなかったが、この技術によって実現した。


序・破・急の三章

NTT東日本、NTT ArtTechnology、アルステクネは、これまで「Digital×北斎【序章】」展を2019年11月~2020年2月に、「Digital×北斎【破章】」展を2020年12月~2022年7月に、「Digital×北斎」特別展(2022年6月~7月)を開催してきた。「Digital×北斎【急章】」はその最終章となる。


【序章】と【破章】は、コロナ禍事情に翻弄されながらも約3万人が来場し、デジタル技術を活用した新たな鑑賞体験を提供してきた。


また、これら北斎が築いた文化を通じて長野県や小布施町、山梨県など、地域活性化への貢献を推進してきた。

そして、新たに開催する「Digital×北斎【急章】」展では、展覧会のテーマを葛飾北斎が晩年に力を注いだ肉筆画を展示し、新たな鑑賞体験を提供する。


布や和紙、壁などの質感までも再現した高精細なデジタル技術は、北斎の微細なこだわりや隠されていた革新的な技術も再現している。


デジタル化の過程で改めて驚いた北斎の革新的な技術

今まで体験する機会のなかった北斎の高度な技法や独自の工夫などの作品細部の情報が明らかになり、北斎の革新性の真髄に迫ることができる。

北斎の革新的な絵画技術や、それを再現するために活用したデジタル技術を解説する株式会社アルステクネ 代表取締役社長 久保田巖氏

北斎の肉筆画は、大胆な構図や描写はもとより、多様な題材を描きつつ、異様に細密で計算された構図や意匠、こだわった絵具の選択、繊細な反射や凹凸表現などが用いられていることで知られている。また、作品を鑑賞する位置やライティングによって、変容して見えることを意識し、様々な革新的な技法を取り入れ、応用して発想する、そんなユニークな世界も高精細なデジタル技術で再現することを目指している。

素材の質感も再現されている、近づいてよく見ると・・

このデジタル版の展示物は素材がツルツルの紙に印刷されているもの・・まるで凹凸感がある紙に描かれているように見える。まさにリアル。

オルセー美術館所蔵の洋絵画6作品も展示されている。上の質感表現と同様、「DTIP」の技術を凄さを垣間見ることができる。下記の「ヴァイルマティ」も、展示のデジタル作品は平面の紙に印刷されているのは驚きだ。




単に高精細な解像度だけでは再現できないの「質感」や「反射」

久保田氏は「高精細なデジタル化をするたびに毎回、いろいろな新しい発見がある。今回も驚くような発見がいくつかあった。例えば、絵画は複雑な物質反射構造をしていて、粒子の大きさ、反射特性など、光の加減で見え方が変わってくるため、平面な物質では本来はリアルな再現は困難。また、日本画は薄い絵の具を多層に乗せて色を表現するので見る角度によって色が変わってくる。また、素材には微細な凹凸があり、浮世絵は手に取ってみるものだったので、見る方向を変えて変化を楽しむ一面もあった。これらを再現するためには、単に高精細な画像であればよいというものではなく、人間の脳の錯覚を利用した疑似立体の技術を使って再現している」と語った。


光を当てると色が変わる例。「詠歌美人図」では光を当てると襟の部分だけ髪の色が変わる



光を受けると色合いが変わる実物の塗り分けを、高精細デジタルでも再現

特殊な技法や見どころは展示会場でも解説がされていて、その場で学んだり、匠の技やこだわりを確認することができる


反射した陽の光を受けて輝く「鳳凰図」

これまでは作品の保護の観点からそれらを詳細に調査することは困難だったが、この度、アルステクネが有する特許技術「三次元質感画像処理技術(DTIP)」を用いて作品を高精細にデジタル化することで、はじめて明らかにすることができたことも多いという。

天井絵「八方睨み鳳凰図」がある岩松院の本堂は、旧暦の4月8日、仏陀が誕生した日に西日が真正面から差し込む構造で建てられたという。「鳳凰図」は建物の構造を考慮し、日が入る方向から見たときだけ、手前の廊下に反射した光を受けて「鳳凰図」は金と銀に輝いて見えるという。

今回の展示ではそれは再現されていないが、今後のテーマとなっている

本展覧会は原画を細部まで忠実に再現した「マスターレプリカ」の展示を中心に、動画、パネルなどにより北斎の高度な技法や独自の工夫を詳しくご紹介し、北斎の革新性の真髄に迫ることをめざしている。
なお、「マスターレプリカ」とは、アルステクネが有する特許技術「高品位三次元質感画像処理技術(DTIP)」を用いて制作された、所蔵元認定の公式複製作品のこと。


デジタルならではの楽しい関連展示も

デジタル化の利点として、3D体験や先進技術と組み合わせた新しい体験ができること。今回の展示でも「裸眼VR」と「3Dダイブシアター」のコーナーを用意。「裸眼VR」では視る角度によって立体的に変容する「神奈川沖浪裏」「東海道品川御殿山ノ不二」、「3Dダイブシアター」では「神奈川沖浪裏」の世界観を正面、左右、床面への4面マルチプロジェクションによって強い没入感とダイナミックな体験ができる。

■NTT『Digital×北斎展【急章】』展を開催 裸眼VRと3Dダイブシアター

また、東海道品川御殿山ノ不二」「東海道金谷ノ不二」「身延川裏不二」の3作品をLEDルーペで詳細まで鑑賞できるコーナーも用意されている。


また、「フローティングギガビューワー」では、空中タッチパネルを非接触で操作し、作品を拡大してモニターで鑑賞することができる。ぜひ未来感を体験してみよう。

空中タッチパネルを体感。北斎の作品をスワイプやピンチアップして、拡大して鑑賞することができる「フローティングギガビューワー」。

■フローティングギガビューワー 空中タッチパネル

【展示構成・概要】(公式リリースより引用)
第一章ビッグバン 冨嶽三十六景
葛飾北斎の浮世絵版画の代表作「冨嶽三十六景」を中心にその表現の細密性から、浮世絵版画が海外に与えた影響までを紹介。

1-1:冨嶽の実像
・「冨嶽三十六景」全47図(後摺りを含む)のマスターレプリカを展示しています。人気の高い「冨嶽三十六景」を一度に全作品ご鑑賞いただけるほか、これまで浮世絵版画の原画の展示では、作品保護のためケースに入れ照度を落とす必要がありましたが、本展示では明るい環境のもと、直接作品をご鑑賞いただけます。

1-2:冨嶽の中の宇宙
・「冨嶽三十六景」の表現の細密性をデジタル技術を駆使した4つの方法で紹介します。
1).裸眼VR:VRゴーグルを着用することなく、鑑賞者の動作で「神奈川沖浪裏」「東海道品川御殿山ノ不二」を自由に操作し、様々な角度から鑑賞いただきます。

2).3Dダイブシアター:「神奈川沖浪裏」の世界観を正面、左右、床面への4面マルチプロジェクションにより、強い没入感を感じながら体感いただきます。

3).ルーペ鑑賞:「東海道品川御殿山ノ不二」「東海道金谷ノ不二」「身延川裏不二」の3作品をLEDルーペで詳細まで鑑賞いただきます。

4).ビッグパネル:超高精細データだからこそ可能な、横1600mmまで作品を拡大したパネルにより、絵師、彫師、摺師が三位一体となった表現を細部まで鑑賞いただきます。

1-3:世界に広がる革新
・「冨嶽三十六景」をはじめとした浮世絵版画が海を渡り、印象派の画家たちに与えた影響について、オルセー美術館所蔵作品のマスターレプリカと、動画、パネルを用いて紹介します。

第二章 北斎 肉筆画の宇宙
新たに高精細デジタル化を行った作品を中心とした肉筆画を展示。
晩年の北斎が力を注いだ肉筆画の世界を、マスターレプリカの展示を中心に、動画、パネルを交えて紹介します。高精細デジタル化の過程で明らかになった、北斎の高度な技法や独自の工夫を詳細にご覧いただけます。

2-1:神妙を描く
・岩松院本堂天井絵「鳳凰図」 縮小複製画:岩松院所蔵
・岩松院天井絵原図「鳳凰図」:岩松院所蔵
・フローティングギガビューワー(※2)(原図、天井絵、推定完成復原版)による細部の鑑賞。
2-2:絵具を工夫し、変容する絵を描く
・「詠歌美人図」:似鳥美術館(公益財団法人似鳥文化財団)収蔵
・「柳下傘持美人」:北斎館所蔵
・「白拍子」:北斎館所蔵
2-3:身近な、小さな自然の生命を描く
・「肉筆画帖」(全10図):北斎館所蔵

2-4:色と形で絵画に生命を宿す
・「花和尚圖」:似鳥美術館(公益財団法人似鳥文化財団)収蔵
・「菊図」(右幅、左幅):北斎館所蔵
2-5:北斎と龍 省略の美、墨一色で命を吹き込む
・「雲龍図」:似鳥美術館(公益財団法人似鳥文化財団)収蔵
・「富士越龍」:北斎館所蔵
・拡大パネル:「富士越龍」、「菊図」(右幅、左幅)


【イベント基本情報】
・タイトル:「Digital×北斎【急章】その1」展 「生きるが如く描く~北斎肉筆の宇宙~」
・会期:2023年4月29日(土・祝)~10月1日(日) 
※休館日:月曜日(月曜日が祝日もしくは振替休日の場合翌日、5月1日は開館)、保守点検日(8月6日)
開催日程詳細 https://www.ntt-east.co.jp/art/hokusai-kyusyo1/
・時間 :11:00~18:00(入場は17:30まで)
・会場 :NTTインターコミュニケーション・センター[ICC] ギャラリーE
     京王新線「初台駅」東口から徒歩2分
・入場料:一般・大学生 1,000円(15名様以上の団体料金は800円)
※障害者手帳をお持ちの方および付添1名、65歳以上の方と高校生以下(当日身分証明書のご提示をお願いいたします)、ICC年間パスポートをお持ちの方は無料
※オンラインチケット https://www.e-tix.jp/hokusai-kyusyo1/
・お問い合わせ:[e-mail] bunka-ml@east.ntt.co.jp [電話] 0120-114-677
・主催:東日本電信電話株式会社
・企画・運営:株式会社NTT ArtTechnology
・監修:久保田巖(株式会社アルステクネ 代表取締役社長)
・企画協力:市村次夫(北斎館理事長)
・協力:株式会社アルステクネ、北斎館、岩松院、山梨県立博物館、公益財団法人似鳥文化財団、
    株式会社Goolight
(個人名は敬称略)


【その他の展示情報】
長野県立美術館 「葛飾北斎と3つの信濃」展
縦5.5m、横6.3mの原寸大高精細複原画が展示されます。
[期間]2023年7月1日(土)~8月27日(日)
[場所]長野県立美術館
〒380-0801長野県箱清水1-4-4(善光寺東隣 城山公園内)
https://nagano.art.museum/

NTT東日本・初台本社ビル1階ロビー
1/2縮小版の高精細複製画を展示しています。空中に投影された操作画面を非接触で操作し、鳳凰図を拡大してモニターで鑑賞する「フローティングギガビューワー」や小布施町の街並みや観光名所などの魅力を伝える映像、小布施町の特産品なども展示しております。

[期間]展示中~2024年3月29日(金) 平日10時〜17時
[場所]NTT東日本・初台本社
〒163-8019東京都新宿区西新宿3-19-2
https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20230303_01.html

ABOUT THE AUTHOR / 

神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

PR

連載・コラム