ソフトバンク株式会社の子会社のBOLDLY(ボードリー)株式会社は、自動運転車両の運行管理を行う交通事業者や全国各地の自治体からの要望を受け、同社が開発・提供する自動運転車両運行管理プラットフォーム「Dispatcher」に、車内移動検知AIの導入、アラート情報の共有通知、LINEバス予約などの新機能を搭載したことを、2023年6月20日に発表した。
「Dispatcher」は、自動運転車両を遠隔地から運行管理するためのシステムで、自動運転バスをはじめ、ドローンや車椅子、物流ロボットなどの多様な自動運転モビリティ30種類と接続可能。車両情報の表示やアラート通知などの基本的な運行管理機能を備え、既に国内4カ所で定常運行している自動運転バス(計6台)の遠隔監視に利用されており、安全安心な運行を支えている。
同社は、2017年に同プラットフォーム提供を開始して以降、開発者が自ら現場に足を運び、利用交通事業者からの要望などを踏まえ、本当に必要とされている機能が何なのかを追求して開発を重ね、このたび、こうして把握した現場からの声を基に、日々の運行管理や乗客の利便性向上に役立つ各種機能を追加実装した。
「Dispatcher」の主な新機能
2022年6月に提供開始したDispatcherコネクト(API提供)や同年7月から提供されたライセンス期限通知機能を始め、LINEバス予約や車内移動検知AI、地図カスタマイズ機能など多くの新機能の提供を開始している。
車内移動検知AI【2023年3月提供開始】
車内に設置したカメラの映像を基に、車両走行中の乗客の立ち歩きをAI(人工知能)で検知して遠隔監視者にアラートで通知する。同機能は乗客の頭の動きをAIで認識して立ち歩きを検知する仕組みで、アラートが通知された際に、遠隔監視者は「Dispatcher」で車内の状況を確認したり、注意喚起の車内アナウンスを流すなどの対応が可能だ。この機能は車高の高い大型バスにおいて真上から捉えた映像にはすでに対応していたが、開発・検証を重ねることで、今回新たに車高が低く斜め上からの映像しか取得できない場合にも対応し、「車内移動検知AI」として正式に提供を開始した。
Dispatcherコネクト【2022年6月提供開始/API提供】
同機能は、「Dispatcher」で取得した車両の位置情報やアラート情報をAPIで提供し、他のシステムとの連携を可能にする。例えば、茨城県境町の遠隔監視センターで自動運転バスの運行管理を行う株式会社セネックでは、APIで提供される「Dispatcher」のアラート情報を基に遠隔監視センター内のパトランプを点灯してサイレン音を鳴らす仕組みを構築し、アラートの見逃しを未然に防ぐのに役立てている。
LINEバス予約【2022年10月以降提供開始】
「LINE」で自動運転バスの予約をすることができる機能だ。
配車予約 | 【2022年10月提供開始】乗りたいバス停と降りたいバス停、乗車時刻を決めて予約すると、指定したバス停・時刻にバスが自動で配車される。これにより、乗客は時刻表にとらわれず好きなタイミングでバスを利用することが可能になった。 |
---|---|
定期便乗車予約 | 【2023年2月提供開始】定常運行しているバスの乗車予約が可能になる。乗りたいバス停と降りたいバス停、乗車したい便を選んで予約すると席が確保され、バスが満員で乗車できないというトラブルを避けることができる。 |
地図カスタマイズ機能【2023年2月提供開始】
「Dispatcher」で表示する地図をカスタマイズできる機能。地図上に図形を自由に表現できるフォーマットであるGeoJSON形式で地図上に任意の図形を描画し、そこに階数・色・名称などを指定して表示可能だ。公道ではなく敷地内のコースを走行する自動運転バスや、建物の中を移動する車椅子を「Dispatcher」と接続する場合、通常の地図ではモビリティの走行状況を把握しづらいという課題があったが、同機能により、敷地内のコースや建物の階層(地下や地上階)を表現することができるようになった。
ライセンス期限通知機能【2022年7月提供開始】
「Dispatcher」上で管理している車両や営業所、従業員それぞれに対して、各種許可証を登録して指定日に通知を出すことが可能。これにより、例えば運行管理を行う交通事業者などは、道路使用許可や車検の期限を登録し、証書をファイルでアップロードして管理するとともに、期限切れの状況を防ぐのに役立てて安全な運行体制の構築に活用できる。
今後実装予定の機能
同社は、今後も「Dispatcher」のアップデートを続けて「Dispatcher」の普及を推進し、地域や企業の持続可能な移動サービスの実現に貢献することを目指すとしており、すでに6月中に提供開始予定の新機能も準備している。
Dispatcherダッシュボード【2023年6月中に提供開始予定】
車内に設置したモニターやタブレットに乗客向けの案内を表示したり、乗務員向けのオペレーション機能を表示したりできる。バスの走行ルート、停車するバス停や到着予定時刻などの乗客向けの表示や、乗務員がタッチパネル操作により遠隔監視室に発信して通話するなど、車内で必要とされる機能を備えている。これにより乗務員はキーボード操作をすることなく、運転操作と車内案内業務をシームレスに行うことが可能となる。
最新のEV自動運転バス「MiCa」日本上陸 レベル4対応、長時間運行、障害物回避機能など搭載 BOLDLYが今夏以降に公道走行へ
ティアフォーやBOLDLYなど小型自動運転EVバス導入の実証実験と試乗会 北陸新幹線小松駅開業を見据えた石川県小松市で
BOLDLY関連記事(ロボスタ)
BOLDLY株式会社