【速報:日本初】セコム 自動で巡回監視飛行し、侵入者を追尾する新型「AIセキュリティドローン」を発表 デモを公開
セコム株式会社は、日本初となる、AIを活用して巡回・侵入監視を行うセキュリティドローンを開発したことを2023年10月12日(木)に発表し、報道関係者向け説明会を開催、デモ飛行を公開した。
セキュリティドローンとしては第二世代となり、名称は「セコムドローンXX(ダブルエックス)」。2024年春の発売を予定。
価格は未定で、警備員の人件費は月額数十万円、24時間体制だと月額100万円超を勘案して、同等の料金体系になるのではないかと示唆した。
「セコムドローンXX」の特徴
「セコムドローンXX」は「セコムドローン」(第一世代)を機能アップし、飛行性能、バッテリー持続時間、最新のバッテリーポート、AI画像認識機能、不審者の追従機能など、多くの先進機能が搭載されていて、実用性を強く感じるセキュリティドローンに仕上がっている。
それは下記の「セコムドローンXX」と「セコムドローン」(第一世代)の比較表を見ると、進化の度合いがわかるだろう。
従来の「セコムドローン」と比較すると、飛行時間は約2倍、最高速度は約4倍と大幅に向上し、総じて従来の約50倍の広さをカバー可能となる最大で半径約6kmのエリアを警備できる。
また、ドローンの課題のひとつである「耐風性能」が大幅に向上しているのも特筆点だ。また、従来の「セコムドローン」では敷地内のドローン飛行エリアにWi-Fi通信設備を設置する必要があったが、「セコムドローンXX」ではデータ通信にLTE通信等を使用することで、Wi-Fi通信設備の設置が不要となり、低コスト、かつ手軽に導入できるようになった。
また、セコムグループで地理空間情報サービス事業を担うパスコが提供する3次元立体地図を活用することで、斜面や建物が並んでいる複雑な地形でも対応できるという。
■「セコムドローンXX」を開発|報道発表|セコム株式会社
「巡回監視」と「侵入監視」をデモ
「セコムドローンXX」開発の経緯や細かな仕様は後述として、気になるデモの内容を紹介しよう。
公開されたデモは大きくわけて2種類。「巡回監視」と「侵入監視」だ。
安全を監視する「巡回監視」
巡回監視は、ドローンがドローンポート(格納庫)から発進し、あらかじめ決められたルートを飛行して、空からカメラと映像のAI解析によって安全確認を行う機能だ。上空からドローンが捉えたカメラ映像をAIが解析して、人や車両を検知する機能を搭載し、侵入者や立ち入り禁止地域に入った車両などを検知するなどの異常を検知した場合は、監視卓(防災センター)に通知したり、ドローンのカメラ映像をリアルタイムで直接確認することができる。
ドローンはGPSとRTKによって高精度に自己位置を把握し、予め決められたコースを巡回して安全を確認する。デモでは上空15mと20mを飛行した。通信にはLTE(4G)が使われている。
■セコムの新型セキュリティドローンのデモ 格納庫から発進して巡回監視
格納庫(ドローンポート)で予備バッテリーに自動交換(長時間巡回が可能)
格納庫(ドローンポート)にはとても重要な機能がある。「セコムドローンXX」は1回約20分の飛行が可能で、巡回監視を終えるとドローンポートに帰還するが、ドローンポートには内部でドローンのバッテリーを予備バッテリーと自動で交換する機構がある。交換作業には2~3分要するものの、交換すればまた即離陸して、巡回監視に戻ることができる。
1台のバッテリーにつき40分の充電時間が必要だが、格納庫には4本の予備バッテリーを保管して充電できるため、理論上は「セコムドローンXX」はバッテリー交換をしつつ、巡回監視を長時間持続して続けることができる。実用性としてこれはとても大きな利点になるだろう。例えば巡回監視が広範囲であったとしても、中間地点にドローンポートを置けば、予備バッテリーに交換しつつ、持続的な巡回を行うことも期待できる。
危険を通知し、侵入者を追尾する「侵入監視」
「セコムドローンXX」は上空からのカメラ映像をAIが解析して人やクルマをみつけると通知し、監視員が不審者・不審車両と判断して指定した物体を自動で追跡・撮影する機能を持つ。
デモでは不審者を演じるスタッフが木の陰から敷地内に侵入し、それを「セコムドローンXX」が検知、監視員の指示により、不審者をドローンが追尾する機能が公開された。カメラ映像だけで不審者を中心にして追跡録画することもできるし、ドローン自体が侵入者を追尾することもできる(いずれの機能もデモで披露された)。
また、ドローンから見た実際のカメラ映像も公開された。
■セコムのセキュリティドローンが侵入者を検知し追尾するデモ
ドローンが捉えた映像はリアルタイムで防災センターの監視卓に送信されるとともに、より高画質な映像をドローン内部に蓄積するという。現地の防災センター等では状況をリアルタイムに確認した迅速な判断・対応ができ、セコムのセキュリティシステムを導入している場合は、セコムの画像センターでもリアルタイムで映像を確認し、必要に応じて緊急対処員がすぐに駆け付ける運用も可能となっている。また、ドローン内部に保存した高画質映像は、ドローンが帰還した後に格納庫を介して防災センターに送信され、巡回監視・侵入監視中に発生した事案の確認・解決に役立てることが可能となっている。
「音声拡声」装置
また、今回のデモでは実施されなかったが、「音声拡声」装置も搭載しており、ドローンから不審者に対して警告を発声したり、退去を命じることもできる。この機能は災害時に「セコムドローンXX」を活用する際にも、被災地域一帯に情報を拡声器で伝達したり、被災者捜索時の呼びかけなどにも有効活用できる機能だと感じた。
安全機能の向上
警備で重要となる「巡回監視」と「侵入監視」のほかにも、安全機能面等でも、「セコムドローンXX」は様々な機能の追加が行われている。
例えば「ローターフォルトトレランス」機能は、ひとつのローターが万が一故障して機能しなくなった場合、対角のローターを停止することでバランスをとって安全に着陸することができる。
日本初となる、AIを活用して巡回・侵入監視を行うセキュリティドローンの誕生
説明会では冒頭で常務執行役員の上田氏から、今回の会場にはセコムが所有しているヘリコプターの保管庫があることを紹介し、実際に2機ヘリコプターが駐機されていた。このヘリコプターは大規模災害があった際等に、いち早く現場に駆けつけて上空から被災状況を確認したり、機材や人材を空から送るのに活用できるという。この実績により上空から見る有効性や、空を活用することの重要性を理解しているからこそ、ドローンの有効性を認識し、警備や安心に活用したい、と語った。
また、同社はAI、IoT、ロボティクスなど様々なICT機器を積極的に活用し、警備業界のDXを推進していて、今回のドローンの発表もその一環であることを紹介した。
続いて担当部長の長谷川氏が登壇した。
セコムは2011年頃よりセキュリティ分野でのドローン開発に着手し、2015年に「侵入監視サービス」として、日本初のレベル3対応の商用ドローンサービスを開始、そこで得た要望を元に、新型の開発に携わってきたことなど、これまでの経緯を紹介した。
次に、開発センターの尾坐氏が登壇し、「セコムドローンXX」の機能と特徴、進化した点などを細かく紹介した。
これまで解説してきた機能の他にも「3Dマップを活用したリアルタイムナビゲーション機能」なども紹介した。
なお、「セコムドローンXX」と名付けた理由は、「安全管理(Safety)」「巡回(Patrol)」「監視(Surveillance)」といった「セキュリティ(Security)」用途だけでなく、「撮影(Photography)」「点検(Check、Inspection)」「防災(Disaster)」など、さまざまな用途(X)において変革(Transformation=X)を起こしていく、という思いが込められている。
主な仕様
■格納庫
「セコムドローンXX」は、夜間飛行、目視外飛行、ご契約先建物から30m以上の距離が確保できない飛行を行う可能性があることから、2022年12月5日施行の航空法ならびに関連する施行令におけるカテゴリⅡ(レベル3)飛行に該当。
セコムでは2015年12月の「セコムドローン」のサービス開始以来、民間防犯用に適した機体、格納庫、独自の飛行マニュアル、警備サービスで培った24時間365日の監視体制などを組み合わせて、サービス提供の実績を積み重ねてきた。そのノウハウを活かし、「セコムドローンXX」のサービス提供にあたっては、場所、電波状態、立入管理措置など、お客様と事前調整を行う。また、本サービスの開始に際しては、国土交通省への飛行許可・承認申請が必要となる。
小型無人機に関する制度の詳細については国土交通省のHPを確認のこと。
・国土交通省HP:https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000003.html
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セコム公式サイト
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。