日鉄エンジニアリング、三菱電機、モーションリブ及び慶應大学の4者は高度な力覚の必要な作業を可能とするリアルハプティクスを搭載した6自由度パラレルリンクロボット「ヘキサロボット」を開発した。
今回開発したヘキサロボットは、接触を伴う高度で高負荷な力覚の必要な作業と、リアルハプティクス(慶應大学で発明された力触覚伝送技術でアクチュエータの力加減を自在に制御することができる技術)を適用した遠隔操作が可能。これにより、産業用ロボットが普及する中でも依然として人に頼らざるを得なかった「非定型作業」を、ロボットに代替させることができるとしている。
接触を伴うより複雑で高度な力覚の必要な作業を可能に
ヘキサロボットは、日鉄エンジニアリングが開発したリンク構造のアームと三菱電機製MELSERVO-J5シリーズのサーボアンプとサーボモータで構成されており、三菱電機製MELSEC iQ-Rシリーズのモーションユニットによるリアルタイム制御を実装することで、繊細かつ高応答なモーション制御(位置・速度・力)を可能にし、人の手首のような動きを実現した。また、三菱電機製産業用ロボットMELFA RV-FRシリーズを連携させることにより、接触を伴うより複雑で高度な力覚の必要な作業を可能にした。
さらに、モーションリブが開発した力触覚制御ICチップAbcCore2通信モジュール「RT-TSN1」を用いることで、AbcCoreとサーボアンプとのフルデジタル接続を実現し、ヘキサロボットと相似構造を持つヘキサ操作機でのリアルハプティクスを適用した遠隔操作が可能となった。
遠隔操作での高度な力覚の必要な作業が可能なヘキサロボットは、モノづくりや製造業における嵌合、研磨、研削作業などの複雑な熟練作業への適用が期待でき、人材不足や現場作業環境の改善などの課題を解決するとしている。
各社の取り組み
日鉄エンジニアリング
日鉄エンジニアリングは、製鉄・環境・エネルギー・都市インフラなどの、各種プラントの設計・建設から操業・保守までグローバルに事業を展開している。その中で、近年の慢性的な人材不足や技術伝承、現場作業環境の改善といった課題を解決すべく、これまで機械化が難しかった非定型作業を含む、各種現場作業の機械化・自動化(Think Robot)を進めている。日鉄エンジニアリングは2013年より慶應大学とリアルハプティクス技術の産業適用に関する共同研究を行っており、すでに複数の現場において、微妙な力加減が必要な作業の機械化を実現し、全て安定して稼働している。
三菱電機
三菱電機は、重電システム、産業メカトロニクス、情報通信システム、電子デバイス、家庭電器などの製造・販売を行っており、FAシステム事業の領域においては、顧客の生産性向上に貢献する高速・高精度のACサーボシステムを展開してる。MELSERVO-J5はCC-Link IE TSN(Time-Sensitive Networking)に初めて対応したACサーボアンプであり、最小通信周期31.25μsと速度周波数応答3.5KHzで、高度なモーション制御が可能です。性能・機能を大幅向上し、装置の革新的進化に貢献する。
モーションリブ
モーションリブは、機械が力触覚を自在にコントロールするために必要なリアルハプティクスについて、機械への実装を可能にするための研究開発から、キーデバイスであるAbcCoreの製造販売まで行う慶應大学発ベンチャー企業。AbcCoreは力センサや特殊なモータなどを必要とせず、市販のモータを使って力加減や力触覚伝送の制御を実現する点に技術的優位性を持っており、このAbcCoreは、すでに80社ほどの企業に先行提供されており、共同研究や、実用化が始まっている。共同研究を行う「ソリューション事業」、AbcCoreやすぐ使える製品を提供する「デバイス事業」、技術を提供する「ライセンス事業」の3つの事業を柱に、お客様の製品企画から量産販売までをサポートできる体制を構築している。モーションリブでは、リアルハプティクスの実⽤化をさらに加速するために、共同研究企業様の募集を積極的に行っている。
慶應義塾大学ハプティクス研究センター
ハプティクス研究センターは、大西公平特任教授が発明したリアルハプティクスの研究開発および広く医療・産業界に普及させることを目的として2014年に設置。リアルハプティクスは、人間が物体に触った際に感じる硬さや柔らかさ、風船のような弾力、自律的な動きなどの力触覚を伝送して、遠隔にいる操作者の手元で同様の力触覚を再現できる技術であり、この技術には力触覚を検知するセンサが極めて少なくてすむという利点もある。リアルハプティクスに関連する幅広い研究と開発や基本から応用まで多種多様な研究開発課題に取り組み、国のプロジェクトをはじめ企業との積極的な共同研究開発を行っている。
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