NTTコムや北大ら 遠隔の3病院を結び5G「視診」「触診」実験に成功、遠隔で触感の再現を実証 道内の中核病院3拠点で

NTTコミュニケーションズは、北海道大学量子集積エレクトロニクス研究センターの池辺将之教授、北海道大学病院/大学院医学研究院の岩崎倫政教授、遠藤努特任助教、北海道大学大学院情報科学院修士課程野津綾人氏らの研究グループ、BIPROGY、テクノフェイス、慶應義塾大学、モーションリブ、AnchorZと共同で、「視て触れる」新しい医療通信システムを開発し、北海道大学病院・帯広厚生病院・函館中央病院の3拠点を結んだ遠隔視触診の実験に成功した。

背景

北海道では患者の移動や地域による医療格差が問題となっているが、全国的にも超高齢社会の到来や、高度専門医の都市部偏在により、地方での医師不足が顕在化し遠隔医療へのニーズが高くなっている。

一方、遠隔医療を高度化するにあたっては触診の点で課題がある。

外来診察では、医師は患者への聴聞、視診、触診とともにX線などの画像検査や採血検査などのデータを合わせて診断を確定する。特に整形外科医・皮膚科医・乳腺外科医などにとって患部の触診は極めて重要となっている。遠隔地では、対面診療と比較し、触診できないことが誤診のリスクを上昇させる懸念から、遠隔医療の実現を困難にしてきた一因でもあり、従来触診は数値化できず医師の経験に基づいてなされていたため、経時的な患部の形態変化や熱感などの触覚情報からの病気の推察方法を医師間でデータ共有することは容易ではなかった。

5Gで触診向けセンシングと視診向けの高精細動画の伝送

本技術の活用イメージ

遠隔医療の技術推進に向け、
1:触診向けセンシング機器及び触覚情報の遠隔における再現機器と制御技術
2:5Gを活用した触覚情報と視診向けの高精細動画との連動技術
を開発。医師がセンサーで取得した触診情報を動画フレームごとに埋め込むことで、触覚情報と動画内の時空間(触覚場)が完全に同期して紐づけされ、触覚情報を含むコンテンツ・データベースとして機能できるようになる。

これにより視触診情報の他医師への共有が可能となるため、転院時の情報連携や医学生への教育に活用することができ、視触診情報をリアルタイムに伝送することで、遠隔視触診が実現される。

実験の詳細・成果

函館・帯広・札幌3拠点遠隔触診実験の構成

北海道大学病院、帯広厚生病院、函館中央病院を5Gで結び、上腕部のリアルタイム遠隔触診を実証した。


函館・帯広・札幌3拠点遠隔触診実験の様子
左:受信側、中央:送信側、右上:センサーデバイス、右下:触覚再現器

実験では、触覚センシングと4K解像度の動画を統合した後、遠隔地で動画と紐づく触覚を再現した。上腕部の各部位(骨部・筋肉・腱)の触感再現と弁別、各部位の弛緩・緊張状態の弁別や逐次変化の再現・確認が複数の医師によって行われた。

本技術の開発・本実験におけるNTTコミュニケーションズの役割

触覚センシングと4K解像度の動画を統合した高精度動画データを5Gおよびdocomo MECを活用し、遠隔地へ高速かつ低遅延通信を行う。

また、ソリトンシステムズ社と伝送・配信システムを連携し、独自の圧縮伝送技術を進化させ、映像伝送最大の課題だった遅延の問題を解消し、超短遅延の映像伝送を行う。

今後の展開

本技術は人間の能力を補完・向上する、あるいは新たに獲得するための技術「人間張拡張技術」の一つであり、ポスト5Gおよび6Gを活用した新しい医療システムの構築とその臨床展開が期待されており、今後も本技術の社会実装に向け、実証実験を進めていくとしている。

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ロボスタ編集部

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