アナウト株式会社は、AI技術を用いて人体のあらゆる重要臓器を視覚化する手術支援ソフトウェアを開発している。同社は、手術中にリアルタイムで「疎性結合組織」の位置や領域を推定し、強調表示することで「医師の視覚支援を行う手術用画像認識支援プログラム」(製品名:外科手術視覚支援プログラムEureka α」(ユーリカアルファ)が、2024年4月12日に厚生労働大臣より製造販売承認を取得したことを発表した。販売準備が整い次第、製品の販売を開始する。
手術の動画をAIが解析し、解剖学的構造物等の位置や領域を推定し、外科医にリアルタイムに提示できるプログラムで、医療機器としてこの分野での承認は国内初。2024年1月には厚生労働省により一般的名称「手術用画像認識支援プログラム」が新設されている。
販売名: 外科手術視覚支援プログラム Eureka α
(承認番号:30600BZX00061000)
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が公開する令和5年度までに承認されたの品目一覧及び令和6年度の承認医療機器を当社が確認する限りの情報(2024年4月17日時点)
「Eureka α」が重要な部位を推定して強調表示して手術支援
「Eureka α」は、手術用の内視鏡システムや手術支援ロボットから受けた映像信号を解析し、術者が通常確認するモニターとは異なるサブモニター上に疎性結合組織とよばれる線維性の構造物を強調表示することで外科医の視覚認識を支援する。胃、大腸、鼠径ヘルニア領域の手術において使用することが可能。あくまで構造物の認識を支援とすることを目的としており、手術操作の判断は外科医が行う。
なお、同社の技術は(兵庫医科大学病院、国家公務員共済組合連合会 虎の門病院、津田沼中央総合病院、札幌医科大学病院、千葉大学医学部附属病院をはじめとする)20以上の共同研究機関のサポートの下、エキスパート外科医が指導した教師データをもとにディープラーニング技術を活用して開発された。
また、本医療機器の開発においては東京都・NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)・川崎市など多くの公的機関の支援を得ている。
「Eureka α」開発の背景
日本の外科医療と技術開発への期待
内視鏡手術やロボット支援手術の発展に伴い、従来に比べ、より精緻な手術が可能となった。また、日本の外科系の学会は世界でも稀な技術認定制度により手術の標準化が進んでおり、日本は先進諸国の中でもっとも手術の安全性が高い国のひとつでもある。
一方でエキスパート外科医の暗黙知とよばれる技術や経験を継承し、若い医師が高い技能を習得するには時間がかかる。また、長時間の執刀による疲労の蓄積、集中力の低下など、外科医は時に厳しい環境で手術を行うこともあり、手術室内で外科医を支える技術開発の更なる進展が期待されている。
疎性結合組織とは
疎性結合組織とは全身に分布する線維性の構造物であり、臓器と臓器をつなぐ役割を果たしている。手術中に適切に臓器を牽引することで現れ、結合組織の集合体は「剥離可能層」や「剥離面」、欧米では「Fascia」「Holy Plane」とも表現されるが、手術中の大部分を担う剥離操作において重要なランドマーク(目印)となる。とくに本邦において、剥離層への意識が高い手術は安全で確実な手術であるということが多くの外科医により論じられ実践されている。
今後の展開
同社が先行して販売している教育及び研究用ソフトウェアの「Surgical Vision Eureka」は神経、膵臓、尿管や血管など複数の構造物を認識することが可能であり、既に複数の大学病院等で学生や若手外科医の教育及び研究開発に活用されている。
今後同社は、確実な精度を達成したソフトウェアの追加開発及び評価を継続していく。また、消化器外科領域から、婦人科・泌尿器科領域など、適用範囲を拡張する考えだ。
これらに加えて、最も安全性が高い手術を実践している日本の技術を世界に届けることを目指す。日本国外においてこれまで同種の機器が上市された事例は確認できておらず(※)、国際学会における技術展示や報告を通じて世界各国の外科医より高い注目と評価を得ているという。
今後、国内だけではなく、欧米・アジア諸国での研究及び事業開発の加速化を予定しており、同社は「特に国内外の事業開発領域を中心に弊社事業にご関心をお持ちいただける方の採用へのご応募もお待ちしております」とコメントしている。
※米国食品医薬局(FDA)が公開する承認されたの品目一覧を当社が確認する限りの情報(2024年4月17日時点)
アナウト株式会社