内閣府の調査では、2025年には高齢者の5に1人が認知症状態であると推計されており、認知症の患者やその家族が安心して生活できる共生社会の実現は、大きな社会課題となっている。
NTTドコモは、MRIで撮影した脳画像から将来の脳画像を予測し、自動生成するAIを開発し、2024年1月17日と18日に東京国際フォーラムにて開催した「docomo Open House’24」で展示した。
今回開発した技術は、将来の脳の委縮や記憶力に関連するといわれている「海馬」の体積の変化を可視化するもので、可視化された将来の脳の状態を見ることで加齢に伴う脳の変化を見ることができる。
記憶司令塔とも呼ばれている「海馬」に注目すると、海馬が萎縮しているのが解る。萎縮すると「認知機能」に影響が出る可能性が高いと言われているという。ただ、加齢に伴うシミュレーションのため、萎縮を抑える方法を生活に進んでとりいれることで、今後の萎縮を抑えられる機能性もある。例えば有酸素運動を適度におこなうことは海馬の萎縮を抑え、喫煙は海馬の萎縮を進行させてしまう調査結果もあるという。
「将来の自分の脳はどう変わっているのだろう?」という思いに答えることができるだけでなく、脳ドッグでの定期的な検診を促したり、自身の生活習慣を健康的にするなど、利用者の行動変容を支援することで、脳に起因する病気を抑えるきっかけになることが期待できる。
ドコモでは、認知症の専門医と連携し、スマホからユーザーの承諾を得た上で生活習慣情報を取得し、それを未来の脳画像へ反映するヘルスケア技術へと展開する可能性も示唆している。
脳画像に敵対的生成ネットワーク(GAN)を活用し将来の脳画像を予測
脳の健康を維持・改善するためには、健康的な生活習慣を送ることに加え、定期的な脳ドックの受診といった意識的な行動が大切だが、自身の生活習慣が脳の健康にどのように影響するかを想像することが難しいという課題があった。
この課題に対し、YUADの医学博士・精神科医・認知症専門医千葉悠平医師による医学的監修と、Biomyによる協力のもと、脳画像に画像生成技術の一つであるGAN(敵対的生成ネットワーク:本物に似たデータを生成する生成器と、本物のデータかどうかを見分ける判別モデルが、競い合いながら学習することで、高品質なデータを生成する技術)を活用することで、MRIで撮影した脳画像から将来の脳画像を予測する生成AIを開発。脳全体や認知症、記憶力と関連するといわれている海馬の体積が将来どのように変化するかを予測し、画像を生成する。
本技術により、専門家でなくても脳の状態を理解することが可能となり、健康的な生活習慣への改善や定期的な脳ドック受診につながることが期待される。
将来の脳画像を予測する生成AIの概要
脳の神経画像のデータセットが提供されている Open Access Series of Imaging Studiesから約500人、約15万枚の脳画像のデータセットを取得・活用し、画像生成AIモデルのひとつであるGANをもとに脳画像生成AIを開発。
モデルに年齢などの情報を入力するタイミングを工夫することで、生成する画像に年齢などの情報が反映されやすくなっている。
今後について
今後は、スマートフォンやアンケートから得られる生活習慣情報なども加味した将来の脳画像の生成や、脳を健康に保つための行動変容を促すAIの開発に取り組む。
また、ヘルスケアアプリや脳ドックと連携し、生活習慣改善や脳ドックの受診意識の向上、脳ドックレポートの付加価値向上を実現し、健康寿命の延伸や医療介護費の抑制などの社会課題解決に貢献するとしている。
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