DFA Roboticsが清掃ロボットを箱根町の湯本富士屋ホテルに「導入実証サポート」で導入 清掃品質の高さ・均質化を証明、導入効果も公表

DFA Roboticsは、神奈川県ロボット実装促進センターが主導する支援制度「導入実証サポート」を通じて、箱根町の「湯本富士屋ホテル」に、清掃ロボット「PUDU CC1」を導入した。

「PUDU CC1」の導入により、清掃時間を10〜20%程度削減し、清掃スタッフの業務効率化を実現。また、汚れを数値化できるキットを用いて検証した結果、清掃ロボットは人が行う清掃よりも汚れを落とすことに成功しただけでなく、清掃場所に関係なく清掃の品質がキープできることが分かったという。(この記事の後半で「導入後の効果」を掲載)



観光客数や宿泊施設は増える一方、人口減少が進む箱根町

都心から好アクセスで、美しい景色や温泉が人気の箱根町は、新型コロナウイルス5類移行や、インバウンド需要の高まりを受けて、2022年には1,736万人もの観光客が訪れている。その一方で、人手不足の問題は深刻化しており、共同通信が実施した人口減少に関するアンケートに箱根町は「労働人口が減少すると町を支える観光業などにも影響が出る」と回答し、働き手の減少を危惧していることが伺える。

事実、箱根町の人口は10,978人(2022年時点)と決して多い数字ではなく、15〜64歳の生産年齢人口は6,133人、構成比55.6%(いずれも2022年時点)となっており、年々人口減少の一途をたどっているが、2016年時点の箱根の宿泊施設は191軒に対し2022年には207軒に増えており、宿泊施設での働き手がより必要とされている。


人手不足解決に向けて神奈川県は「ロボット実装促進センター」を開設

箱根町をはじめとする神奈川県内の人手不足問題を受けて、神奈川県は「ロボット実装促進センター」を開設。ロボット実装促進センターでは施設が抱える課題のヒアリングから、ロボット企業とのマッチング、導入実証サポートによって施設を支援する。

2023年10月より実施した「導入実証サポート」では、既存のロボットでは課題解決を得られない7施設を対象に、ロボット企業と協力して施設の仕様に合わせた活用ができるようサポートを行った。DFA Roboticsが支援した「湯本富士屋ホテル」も導入施設の1つで、他にも商業施設や病院などが導入実証を行った。


清掃ロボット導入実証の背景


DFA Roboticsでは湯本富士屋ホテルの清掃業務の負荷軽減の解決、また浴室環境でのロボットの清掃効果を実証するため、1台4役の清掃ロボット「PUDU CC1」の実証導入を行った。




導入当初は脱衣所に段差があり、走行のたびにロボットを持ち上げる手間が発生してたが、DFA Roboticsがスロープを設置し、ロボットがスムーズに走行できる環境を実現させた。


概要
目的 人手不足による省人化、スタッフの負担軽減、業務効率化
施設名 湯本富士屋ホテル
住所 〒250-0392
神奈川県足柄下郡箱根町湯本256-1
機体・台数 1台4役の清掃ロボット「PUDU CC1」1台
導入エリア 脱衣所、浴室(男湯・女湯の両湯)
実証期間 2023年12月27日〜2024年3月10日


実証導入における取り組み

・清掃ロボットの運用(起動~タスク実施、遠隔操作)のレクチャーを実施
・機体の日常メンテナンス方法を説明し、イレギュラーな不具合を削減
・実機を操作しなくても遠隔でタブレット上で清掃開始~清掃データの収集、清掃中のロボット状況の把握が可能にできるよう、アプリとの連携を実施
・スタッフとの衝突などの安全性を加味して自立走行時のスピードを調整
・スロープや浴室エリア内の段差からの落下防止のため、マップ上で禁止エリアを設定/階段に落下防止シールを貼付しロボットの落下防止策を実施
・スロープ設置後にスロープでお客様がけがをしないようにゴムシートで補強

導入後の効果

1:清掃スタッフの省人化・省力化に成功


外部委託の清掃スタッフを1~2名削減可能になり、適切な人数で運営できる状態になった。また、清掃時間は10%~20%程度削減(1回あたり15分程度)に成功した。

2:清掃エリアの拡大


浴室内清掃における床面の清掃7~8割をロボットが代替することで、行き届かなかった細かな清掃を実施することができ、パブリックスペースの清掃面積が3.4倍に拡大。バックヤードにおいては週2回程度の清掃が、夜間に清掃ロボットを活用することで毎日の清掃が可能となった。

3:清掃品質の均質化


清掃現場の汚れを数値化し清掃品質を検証できるキット「ルミテスター」を活用した人とロボットの浴室内床面清掃品質の比較結果として、人の清掃よりも汚れを落とせただけでなく、検査場所による数字のばらつきがないことから清掃品質が均質化できていることがわかった。

導入施設の声

富士屋ホテル株式会社 副支配人 秋山氏

コロナが落ち着き始めた昨年頃からホテルと宴会場の予約が増加し、今いるスタッフの数で対応するには負荷がかかりすぎてしまうため、スタッフの負担軽減と業務効率化のため清掃ロボットの実証導入プロジェクトに参加しました。

業務用の清掃ロボットを見るのは初めてでしたが、とてもスムーズに走行できるのが印象的でした。また、スタッフが掃除した後にロボットで掃除するとたくさんのゴミが取れていて、吸引力の高さと、人の清掃では取りこぼしがあったことに驚きました。

清掃ロボットが大浴場まで清掃できることは全く知りませんでしたし、事例も聞いたことがありません。今回DFA Roboticsが取り扱う清掃ロボットは、大浴場の清掃にも対応できるということでお願いしました。大浴場は広いため、人の清掃では汚れが残ってしまう箇所も出てしまいますが、清掃ロボットは全体をくまなく掃除し、パワーも落ちないのがメリットだと感じました。

元々大浴場の入り口に段差があったため毎回ロボットを持ち上げるのが大変でしたが、DFA Roboticsがスロープを開発してくれたため、ロボットが自動で大浴場まで走行できるようになりました。さらに、当ホテルのリピーターに電動車椅子をご利用のお客さまがいらっしゃるのですが、スロープのおかげで車椅子も通れるようになったことが副次的な効果としてありました。ホテルがより利用しやすい環境に改善されることは、リピート率の向上にも繋がると思います。

当ホテルは今年で創業50周年を迎え、第一弾として客室リニューアルを行いましたが、現在パブリックトイレをバリアフリー対応に改修したり、温浴施設の段差のある畳敷き休憩室をフラットなラウンジスタイルに改装し、車いすの方やベビーカーをご利用のお客様が不自由なく出入りできるよう工事中です。次の50年に向けて、どんな方にも快適にお過ごしいただけるようバリアフリーも強化しているところでしたので、そういった意味でもスロープを開発いただけたのはよかったです。

今後も人手不足への対策として自動精算機、自動調理機器の導入や、お客様用アプリから温泉やレストランの混雑状況がわかるようにするなど業務効率化を図っていきたいと考えています。




導入された清掃ロボット「PUDU CC1」


湯本富士屋ホテルに導入されたPudu Robotics社製の清掃ロボット「PUDU CC」は、1台で吸引・水拭き・掃き・乾拭きの4役を担う自動走行可能なサービスロボット

。これまで前述の作業を人の手で行うには、複数の器具を使用し多くの時間が必要でしたが、「PUDU CC1」は1台で全ての動作が可能で、人が清掃を行うよりも圧倒的に工数が削減される。

清掃範囲のマップを記憶し、清掃レポートを自動生成するため、掃き残しや吹き漏れ、掃除のし忘れなどのヒューマンエラーから解放され、省人化・業務工数の削減に寄与。機械に任せられる仕事を解消することで、スタッフはより多くの時間をお客様へのサービスに充てることが可能となった。

今まで各施設で「人」が行っていた業務を担当するだけでなく、導入することで利益を生み出す環境づくりに寄与し、オペレーションの改善を図ることで、業務効率を向上させ、各施設が抱える課題を解決する。

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ロボスタ編集部

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