ugo株式会社(ユーゴー)、株式会社日立プラントサービス、株式会社日立システムズは自律走行する業務DXロボット「ugo」シリーズを活用した工場点検作業の自動化サービスを発表。施設運用全体の適正化への貢献を目的に3社で協創し、今秋より半導体工場で実運用を開始、2024年度中のリリースを目指す。
2024年5月31日、3社は都内で報道関係者向け説明会を開催し、「ugo mini」が自律走行して工場内を巡回し、メーターを読み取って、数値をシステムに保存、解析する実演デモを公開した。
なお、3社は「日立システムズ DX・GXフェア 2024」で展示とパネルディスカッションを予定している。(詳細はこの記事の末尾に)
自律移動ロボット「ugo mini」完全自動でメーター読み取りデモを公開
■メーター計測の実演デモとデータ解析
「ugo」シリーズの特徴
「ugo」シリーズは前述のとおり、自律移動(自律作業)と遠隔操作に対応したハイブリッド。今回デモをした「ugo mini」を含めて、全3機種がラインアップされる。ハイエンドの「ugo pro」はヒューマノイド型で腕があるのが特徴。軽いドアの開閉、エレベータのボタンを自律動作で押してフロアの行き来も可能だ。
「ugo」シリーズは、ロボット本体を押したり、遠隔操作で走行ルートを遠隔操作で走行させることで自動でルートマップを生成し、その後は自律走行で敷地内を自動的に巡回できるようになる。メーターの位置や高さを登録して学習すれば、アナログ/デジタルメーターの高さに合わせてカメラの位置(高さ)を自動で変更し、カメラで数値を読み取って、システムに送信することができる。読み取りには日立システムズの高精度なメーター自動読み取りシステム「CYDEEN」(サイディーン)と技術連携する。
もしも、その際にメーター数値に異常を検知すれば、それをスタッフに通知することもできる。また、カメラの他に、温度センサーやマイク、振動センサーなどをロボットに搭載して、異常や故障の検知、故障予知などに活用することもできる。
また、「ugo」シリーズ自体は遠隔操作にも対応していて、アバターロボットとして、巡回警備業務などにも展開することができる(ugo社は同ロボットを警備業務にも本格活用している)。
■ugo mini(ユーゴー ミニ)〜小さくてもパワフルな”相棒”〜
■ugo 点検DXソリューション 工場/プラント/サーバールームなどの巡回監視
3社の強みと役割分担
説明会ではまず、日立プラントサービスの矢野氏から、今回、発表したサービスの概要の説明があった。このサービスは業務DXロボットが工場内を巡回して設備を点検するとともに、点検で収集したデータの分析を通して設備運用の効率化をはかるもの。
自律走行とアバターの技術を持つugo。60年にわたって現場で培った大規模工場やプラント保守のノウハウを持ち、機器管理・運用を手がけてきた日立プラントサービス。工場内のセンサーやカメラ等によるデータ収集と解析・予測などを行い、高精度なメーター自動読み取りシステム「CYDEEN」の技術を持つ日立システムズが連携して、複雑化する製造工場の課題解決を行うもの、とした。
そして「このシステムは2023年10月より国内の半導体工場で実証実験を行い、性能的に十分と評価した。2024年秋に同半導体工場で実運用に着手し、2024年度中にはサービスリリースを目指す」と続けた。更に「将来的には、収集したデータで熟練保守員の持つノウハウをAIで再現し、保守計画の立案など設備運用のさらなる効率化、自動化の中で熟練技術者の技術を継承し、エネルギー効率の改善、故障の予測・予兆検知など、設備運用の効率化など、サービス内容を順次拡充していきたい」とした。
技能労働者の高齢化や人手不足が深刻に
日立プラントサービスと日立システムズの説明によると「大規模な製造工場では、働き手不足に加えて、若年入職者の減少による技能労働者の高齢化、団塊世代の熟練技術者が引退を迎えることによる技能の維持・継承の問題が顕在化している」という。
また「人口減少に伴う人員不足や物価上昇を背景とした予算などのリソースの制約が強まっていて、生産停止リスクの低減や、緊急時の保守対応、エネルギー使用の最適化など、より高度な施設運用が求められている」とした。
サービスの特長
1.手厚い運用サポートつきの業務DXロボットで巡回点検作業を自動化
AI とカメラを搭載した「ugo」は、あらかじめ設定した巡回ルートを自律走行し、工場内の設備を点検する。
メーターの数値やランプの点灯などに異常を検知した際は自動で通知し、作業員による巡回点検の作業負担を軽減。かつ、「ugo」の不具合発生時には、日立システムズが持つ全国約 300 拠点にいる保守員が迅速にサポートする。
2.デジタル・アナログメーターの数値を自動読取り、データを見える化
「ugo」に搭載されている「CYDEEN」メーター自動読み取りサービスは、デジタル・アナログを問わず、メーター
数値を読み取ることができる。また、「ugo」本体の拡張性を生かし環境センサーを搭載することで、温度、湿度、気圧といった環境情報を収集することもできる。集積されたデータはグラフ化され、管理者は事務所にいながら工場内の機器の状況を把握することができる。
3.データを活用し、設備の運用・メンテナンスを最適化
収集したデータと日立プラントサービスの長年培った工場設備運用のナレッジを掛け合わせることで、クライアントの施設運用を効率化するソリューションを提供する。熟練技術者が持つ技術の継承支援や設備の故障予兆の検知、エネルギー効率改善の提案を通して、クライアントのさらなる業務品質の向上を実現する。
日立グループは、顧客協創フレームワークとデータ分析やAIを統合した「Lumada」(ルマーダ)を持っているが、収集したデータとその解析から、「省エネ・脱炭素推進」「予兆監視強化」「歩留り改善」「運用計画立案」など、施設全体の監視・保全・業務の効率化などを展開する考えを示唆した。
「日立システムズ DX・GXフェア 2024」で展示
日立システムズは2024年7月4日(木)~5日(金)にゲートシティ大崎およびオンラインで「日立システムズ DX・GXフェア 2024」を開催する。このイベントは「ミライをつくるチカラ ~DXで変わる世界、GXで広がる可能性~」と題して、DX・GXの観点から企業が取り組むべきデジタル化事例や、クライアントのビジネス課題・業務課題を解決に導く多彩なソリューションを紹介するイベントとなっている。
ugo、日立プラントサービス、日立システムズの3社は、会期中に展示とパネルディスカッションを実施する予定。詳細は、下記のウェブサイトを参照。
日立システムズ DX・GXフェア 2024
https://www.hitachi-systems.com/seminar/2024/20240705.html
■第二弾、インタビュー記事に続く
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。