NVIDIAは2024年6月2日、ロボット開発で知られるBYD ElectronicsやSiemens、Teradyne Robotics、Googleの親会社のAlphabet傘下のIntrinsic社などが、次世代のAI対応自律マシンおよびロボットの研究、開発、生産に「NVIDIA Isaacロボティクス」プラットフォームを採用すると発表した。
BYD Electronics、Siemens、Teradyne Robotics、Intrinsicが採用
BYD Electronics、Siemens、Teradyne Robotics、Intrinsicは、NVIDIA Isaacアクセラレーテッドライブラリ、物理ベースのシミュレーション、AIモデルを自社のソフトウェアフレームワークやロボットモデルに統合していると、NVIDIAは公表している。開発したロボットは、工場、倉庫、配送センターを効率的、かつ安全なものにし、反復作業や超精密作業のためのインテリジェント・アシスタントとして機能させている。
これについて、NVIDIAの創業者でCEOのジェンスン フアン (Jensen Huang) 氏は次のように述べている。
NVIDIA 創業者 / CEO ジェンスン フアン 氏
ロボットの時代が到来しました。動くものはすべて、いつかは自律的になるでしょう。私たちは、シミュレーション アプリケーション用の Omniverse、Project GR00Tヒューマノイド基盤モデル、Jetson Thorロボティクスコンピューターなど、NVIDIAロボティクススタックを進化させることで、生成物理AIの加速に取り組んでいます。
「Isaacプラットフォーム」には、ロボットメーカーが自社のテクノロジー・スタックに統合できる一連の NVIDIAアクセラレーテッドライブラリ、AI基盤モデル、シミュレーションテクノロジーが搭載されている。
NVIDIA Isaac ROS
ROS コミュニティ開発者に NVIDIAアクセラレーションとAIモデルを提供するモジュール式ROS 2パッケージのコレクション。
NVIDIA Isaac Perceptor
Isaac ROS上に構築されたリファレンスワークフロー。AIベースの自律移動ロボットにマルチカメラの3Dサラウンドビジョン機能を提供。
NVIDIA Isaac Manipulator
Isaac ROS上に構築されたリファレンスワークフロー。環境をシームレスに認識、理解、対話できる AI対応ロボットアーム(マニピュレーター)の開発を簡素化。
NVIDIA Isaac Sim
NVIDIA Omniverseプラットフォームに基づいて、物理ベースの環境でロボットをシミュレーション、テスト、検証し、合成データを生成するためのリファレンスアプリケーション。
NVIDIA Isaac Lab
AIロボット基盤モデルのトレーニングのための強化学習、模倣学習、転移学習に最適化された Isaac Simのリファレンス アプリケーション。
Isaacエコシステムが急速に拡大
現在、アジア、ヨーロッパ、北米のロボティクス、および自律マシン開発のリーダー企業が「NVIDIA Isaac」を早期に採用しているという。
Siemens
産業オートメーションソフトウェアやシステム開発で知られるSiemensは、強力なソフトウェアインザループ機能のために「NVIDIA Isaac Sim」を使用している。Isaacテクノロジーは、SIMATIC Robot PickAI (PRO)やSIMATIC Robot Pack AIなどの高度なロボティクス・スキルのSiemensの開発とテストを短縮・効率化している。AIビジョンソフトウェアは、AI駆動の認知機能を提供し、産業用ロボットシステムが、ユーザーによるAIの事前トレーニングなしで、任意のアイテムを自律的かつ確実にピックアップして梱包できるようにするという。
Siemensは、産業グレードのAIを提供し、自動化ソリューションとシームレスに統合し、NVIDIAを搭載したSiemens産業用PC基盤に展開するときに使いやすくすることで、ロボティクスの最前線にAIを推し進め、産業用ロボットのエコシステムにビジョンAIを提供している。
Intrinsic
2022年後半にOpen Source Robotics Corporationを買収したAlphabetのソフトウェアおよびAIロボティクス子会社であるIntrinsic は、ロボットに依存しないソフトウェアプラットフォームで「Isaac Manipulator」のテストに成功した。Intrinsicは、Manipulatorを使用して、グリッパー、環境、およびオブジェクト全体で機能するスケーラブルで広く適用可能なロボット把持スキルの可能性を実証した。
Intrinsic の CEO である Wendy Tan White 氏は次のようにコメントしている。
Intrinsic CEO Wendy Tan White 氏
基盤モデルが産業用ロボットに大きな影響を与えるための道を切り開くために、NVIDIA ほど優れた協力者はいません。私たちのチームが NVIDIA Isaac と Intrinsic のプラットフォームの統合に協力することで、何百万もの開発者と企業にもたらすことができる潜在的な価値は計り知れません
BYDグループ
BYDグループは、エレクトロニクス、自動車、新エネルギー、鉄道輸送など、4つの主要産業において世界中で強力な製造拠点を持っている。その子会社であるBYD Electronics(BYDE)は、ハイテクで革新的な製品を提供する世界有数の企業であり、NVIDIA Isaac SimとIsaac Perceptorを使用して、工場に完全な物流ソリューションを提供する様々な自律移動ロボットを開発している。
BYD Electronics のシニアビジネス開発ディレクターである Chris Yotive 氏は次のように話した。
BYD Electronics シニアビジネス開発ディレクター Chris Yotive 氏
BYDEは、顧客が物流アプリケーションの展開を加速できるように支援することに重点を置いています。NVIDIA と共同で、NVIDIA Isaac を搭載した高度な自律移動ロボットを開発しました。これにより、作業員の安全性が向上し、生産コストが削減され、顧客向けの生産インテリジェンスが強化されるでしょう
Universal Robots(UR)とMobile Industrial Robots(MiR)
Teradyne Roboticsの傘下企業であるUniversal Robots(UR)とMobile Industrial Robots(MiR)は、AIをオートメーションに統合するためにNVIDIA Isaacを使用している。URは、Isaac ManipulatorをPolyScope Xソフトウェアプラットフォームに統合して、新しいコボット ソリューションの開発に取り組んでいる。MiRは、Isaac Simを活用して合成データを生成し、MiR1200 Pallet Jackをシミュレートして実世界の展開に備えている。
Teradyne Roboticsのグループ プレジデントである Ujjwal Kumar 氏は次のように語っている。
Teradyne Roboticsグループ プレジデント Ujjwal Kumar 氏
ロボティクスにおけるお客様の課題に取り組む鍵は、業界が協力して 1 つの共同作業を行うことにあります。NVIDIA Isaac の高度な AI とシミュレーション機能を、当社の大規模な自律型モバイル ロボットとコボットのインストール ベースに接続することで、私たちはイノベーションの限界を押し広げ、複数の業界に迅速なソリューションを実現するでしょう
その他のIsaac採用企業
NVIDIA Isaacプラットフォームはモジュール式で、企業は個別のテクノロジーまたは複数のテクノロジーを組み合わせて採用することもできる。
高度な知覚ベースの自律移動ロボットの開発にIsaac Perceptorを活用している企業には、ArcBest、BYD Electronics、Gideon、idealworks、RGo Roboticsなどがある。
AIベースのロボットアームの構築にIsaac Manipulatorを活用している企業には、Solomon、Techman Robot、Vention、安川電機などがある。
Hexagon、Husqvarna Group、MathWorksなど、100社を超える企業がロボティクス アプリケーションのシミュレーション、テスト、検証に NVIDIA Isaac Simを採用しており、Isaac Labは、Agility、Boston Dynamics、Figure AI、Fourier Intelligence、Sanctuary AIで採用されている。
Computex でロボティクスのイノベーションに注目が集まる
ジェンスン フアン氏はCOMPUTEXにおける自身の基調講演で、輸送、ヘルスケア、工業生産で使用されるロボットのデモを行った。あるデモでは、世界最大の電子機器メーカーのFoxconnが、NVIDIA IsaacをベースにNVIDIAのロボティクスパートナーが開発したAIロボットフリートをフィーチャーした、NVIDIA Omniverseで完全にシミュレートされた自律型工場を披露している。
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