NVIDIAがヒューマノイド開発プラットフォーム提供を発表 ディズニーの二足歩行ロボットが登壇 Jetson Orinから次世代Thorへ

NVIDIAは創業者/CEOのジェンスン・フアン氏による「GTC 2024」基調講演で、ヒューマノイドロボット(ヒト型ロボット)を開発するためのプラットフォーム「GR00T」(ジーアールゼロゼロティー)を発表した。NVIDIAは新世代GPUと生成AIを含むヒューマノイド開発用のSDKやライブラリ、プラットフォームを提供し、全面的に支援していく。

NVIDIAの創業者/CEOのジェンスン・フアン氏

また、それに伴い「Isaac Robotics」プラットフォームのメジャー・アップデートも発表。ヒューマノイドに搭載する超小型AIコンビュータは「Jetson Orin」の後継として次世代SoCの「Jetson Thor」になる模様だ(今後、正式名称になるかは不明)。


なお、「Hopper」に変わる新しい「Blackwell」アーキテクチュアも発表している。関連記事「NVIDIA 大規模言語モデルと生成AIにも特化した「Blackwell プラットフォーム」とは 性能向上は最大30倍、コスト/エネルギー消費は最大1/25に


ヒューマノイドたちがステージ上に?

基調講演では、既に様々な企業が動画等で公開しているヒューマノイドロボットの映像が登場し、ステージ上でズラリとバーチャルで並ぶ圧巻の光景が展開された。またディズニーリサーチが開発した可愛いロボットがリアルで登場し、その愛らしい動きに場内が沸いた。このロボットはJetsonを搭載し、Isaacプラットフォームで開発されたという。

二足歩行のヒューマノイドたちがステージにズラリ勢揃いした圧巻の光景(バーチャル)

スペシャルゲストとして突然登場した2体の可愛いロボットは、ディズニーリサーチが開発したもの。Jetsonを搭載し、Isaacプラットフォームで開発された

ファン氏が声で呼ぶと、それを認識してロボットの一体が近寄ってくる

2体のロボットと掛け合いをするフアンCEO。場内は大いに盛り上がった。

下記の動画の1時間50分あたりから。

■Don’t Miss This Transformative Moment in AI


Orinから新しいアーキテクチュアThor(ソー)へ

エッジAIコンピュータとしては現行の「Orin」シリーズが最も高性能だが、ヒューマノイドロボットを制御するには、テキストや音声での指示に対応し、カメラ画像やセンサーデータの入力と推論、必要に応じてライブデモを取り込んでその通りに実行(真似)したり、ロボットが行動する計画を出力することも必要となる。
そのため、従来より高性能なSoCが求められることになり、「GR00T」プラットフォームに最適な「Jetson Thor」による新しい「Blackwell」アーキテクチュアへと移行する予定だ。


ヒューマノイド開発のためのロボット開発用トレーニング・シミュレータ「Isaac Robotics」プラットフォームはアップデートされ、「Jetson Thor」、生成AI基盤モデル、CUDAで高速化された知覚および操作ライブラリ等が提供されるだろう。


同社は現在、130万人以上のロボット開発者がNVIDIAプラットフォームで開発しているという。そのうちの10万人以上がROS環境で取り組んでいる。自律マシンを開発している企業は6000社以上にのぼる。Jetsonプラットフォーム用にSDKやソフトウェア・ライブラリや、開発シミュレータ「Isaac」、コンピュータビジョンなどの「Metropolis 」、デジタルツイン環境を構築する「Omniverse」を提供してきた。
これらによって、短期間で安全に、廉価で効率的なロボット開発を実現してきた。それはデジタルツインやバーチャル環境でAIやAIモデルを含めてロボットをトレーニングし、テスト運用し、改良・進化させることで、現実の開発環境のように、ロボットの損傷、事故、故障などを避け、効率的に開発を進められるメリットがある。

「GR00T」を搭載したロボットは、自然言語を理解し、人間の行動を観察することで動きをエミュレートするように設計され、現実世界をナビゲートし、環境に適応し、対話するためのスキルや柔軟性を持ち、迅速に学習していくプラットフォームを目指す。
すなわち、「Jetson Thor」はトランスフォーマー世代のマルチモーダル生成AIモデルを実現、実行するために、800テラフロップスの8ビット浮動小数点のAIパフォーマンスを提供するエンジンを備えた、NVIDIA Blackwellアーキテクチャに基づく次世代GPUとなる(Orinと比較すると論理上約3倍程度高速か?)。100GB のイーサネットに対応し、設計と統合の作業が大幅に簡素化される。

現行の「Jetson orin」と比較してトランスフォーマーで使用される浮動小数点演算のパフォーマンスが8倍以上、IOのパフォーマンスは2.6倍高速だという。ヒューマノイドでは多くのカメラやLiDARなど多くのセンサーが使用されるため、このパフォーマンスは非常に重要で、センサー、音声、マイク、スピーカーなどのデータ処理と制御に対応する。

IsaacとOmniverse関連の情報は別記事でもお伝えする予定。また今後、「GR00T」や「Jetson Thor」詳細の情報が入り次第、ロボスタでお伝えしていくのでお楽しみに。

なお、「GTC 2024」は始まったばかり。有識者やメーカーのAI開発者等によるセッションはこれからたくさん視聴できるので、興味があれば登録(無料)して、オンラインで参加しよう。
GTC 2024 参加登録はこちらから
> 【続編】NVIDIA ヒューマノイド・マニピュレータ・自動搬送ロボット向けに「Isaacのメジャーアップデート」を発表 安川電機が「GTC 2024」でデモ展示

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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