NVIDIA 自動運転開発に生成AI対応の「DRIVE Thor」を採用、次世代Blackwellアーキテクチャ搭載 世界最大のEVメーカーBYDとの連携強化

NVIDIAの創業者/CEOのジェンスン・フアン(Jensen Huang)氏は2024年3月18日(カリフォルニア州サンノゼ現地時間)、GPUのテクノロジーカンファレンス「GTC 2024」の基調講演において、新エネルギー車両やトラックからロボタクシー、ロボバス、ラストワンマイル自動配送車に至るまで、運輸業界の大手企業が、次世代の消費者車両および商用車両に「NVIDIA DRIVE Thor」(ソー)集中型車載コンピュータを採用したことを発表した。
現行の「DRIVE Orin」と次世代「DRIVE Thor」については別記事「NVIDIAの自動運転プラットフォーム「DRIVE」をEVメーカーが続々と採用へ 「NVIDIA DRIVE Thor」や「DRIVE Orin」搭載」も参照。


DRIVE Thorは、自動車業界で最も重要になりつつある生成AIアプリケーション向けに設計された車載コンピューティング プラットフォームだ。DRIVE Orinの後継システムである同システムは、機能豊富なコックピット機能に加え、セーフティ対応とセキュリティ対策、高度な自動化や自律運転のすべてを集中型プラットフォームとして提供する。


Transformer、生成AIに最適なNVIDIA Blackwellアーキテクチャに統合

また、基調講演では、この次世代AVプラットフォームには、Transformer、LLM、生成AIワークロード向けに設計された新たなNVIDIA Blackwellアーキテクチャが統合されると発表された。関連記事「NVIDIA 大規模言語モデルと生成AIにも特化した「Blackwell プラットフォーム」とは 性能向上は最大30倍、コスト/エネルギー消費は最大1/25に



なお、NVIDIAの自動車担当バイスプレジデントであるシンジョウ ウー(Xinzhou Wu)氏は次のように述べている。

NVIDIA 自動車担当バイスプレジデント Xinzhou Wu 氏

アクセラレーテッド コンピューティングは、自律性と世界の交通業界全体を再定義する生成 AI などの革新的なブレークスルーをもたらしました。DRIVE Orin は今日のインテリジェント車両に最適な AI カー コンピューターであり続けていますが、現在、モビリティ リーダーたちが次世代の AI 対応車両のロードマップに NVIDIA DRIVE Thor を導入することを計画しています



2022年には180万台、2023年には300万台以上を販売したとされる世界最大のEV/PHEVメーカーとなった BYD は、「NVIDIA DRIVE Thor」を将来の車両のAI処理や頭脳として採用することを公表した。さらにBYDは、シミュレータ「NVIDIA Isaac」やデジタルツイン「NVIDIA Omniverse」を活用、クラウドベースのAI開発とトレーニングのためにNVIDIAのAIインフラストラクチャーを使用して、デジタルツインの仮想工場や小売に関するコンフィギュレータ用のツールやアプリケーションを開発する予定だ。
「GTC」会場では、Lucid Air、Mercedes-Benz Concept CLA Class、Nuro R3、Polestar 3、Volvo EX90、WeRide Robobus、Aurora搭載トラックなど、NVIDIAの技術を搭載した最新の車両が展示された。さらにNVIDIAは、LenovoからZeekrまで、さまざまなパートナーのECU(電子制御ユニット)を展示し、NVIDIA DRIVEの幅広い採用を紹介している。

更にカンファレンスでは、フォード、GM、Geely(吉利汽車)、JLRなど、NVIDIAの自動車関連パートナーによるセッションが行われた。

■ Automotive Update from GTC 2024

■ NVIDIA AI Tools for Autonomous Vehicle Developers




次世代AIフリートはアクセラレーテッドコンピューティングを採用

NVIDIA DRIVE Thorは、生成AIが運転体験を定義する時代の到来を告げ、自動車の世界に革命を起こそうとしている。GTCでは、いくつかの大手EVメーカーが、DRIVE Thorを搭載した次世代AI車両フリートを公開しており、以下のEVメーカーは、DRIVE Thorで将来の自動車ロードマップを構築することをすでに発表しているLi AutoとZEEKRに加わることになっている。

関連記事「ジュネーブ国際モーターショーで新興EVメーカーがNVIDIA DRIVE Orinを搭載した最新モデルを発表 注目の3車種を紹介

BYD

世界最大の電気自動車メーカーであるBYDは、NVIDIAとの継続的なコラボレーションを自動車からクラウドまで拡大中だ。BYDは、DRIVE Thorで次世代EVフリートを構築することに加えて、NVIDIA Isaacおよび NVIDIA Omniverseプラットフォームとともに、クラウドベースのAI開発およびトレーニング テクノロジにNVIDIAのAIインフラストラクチャを使用し、仮想工場計画および販売向けコンフィギュレーター用のツールとアプリケーションの開発も計画中だ。



Hyper

GAC AIONのプレミアム高級ブランドHyperは、2025年に生産を開始する次世代EVに DRIVE Thorを採用したことを発表した。Hyperは現在、レベル 2+の運転能力という先進的な機能を備えたフラッグシップ モデルHyperGTの動力源としてNVIDIA DRIVE Orinを使用している。


XPENG

XPENG もまた、次世代EVフリートのAI頭脳としてNVIDIA DRIVE Thorプラットフォームを使用することを発表。次世代カーコンピューターは、EVメーカー独自のXNGP AI支援運転システムを強化し、自動運転と駐車機能、ドライバーと搭乗者のモニタリング、その他の機能を可能にする。



長距離トラック、配送車両、ロボタクシーの強化

DRIVE Thorは、乗用車以外にも、トラック輸送、ロボタクシー、商品配送車両など、安心、安全な運転業務を確保するために高性能コンピューティングとAIが不可欠な他のセグメントの多様なニーズにも応える。また、次のようなモビリティ プロバイダーの多くがGTCで先頭を走っている。


Nuro

商用車および消費者向け車両用のレベル4自動運転技術を開発するNuroは、Nuro Driverを駆動するためにDRIVE Thorを採用した。Nuro Driverは、Nuro独自の AIファースト ソフトウェアとセンサーと、NVIDIAの自動車グレードのコンピューティングおよびネットワークハードウェアを組み合わせた統合自律走行システムで、今年後半にテストを開始する予定だ。

NUROのデリバリーモビリティ




Plus

自動運転ソフトウェア ソリューションの世界的プロバイダーであるPlusは、レベル4ソリューション SuperDriveの将来世代が自動車グレードの安全準拠のDRIVE Thor集中型コンピューター上で実行されることを発表した。Plusは、自動運転システム内のDRIVE Thorのコンピューティング パフォーマンスを活用して、トラックの周囲の世界を理解し、安全な運転判断を下す。


Waabi

自動運転用AIを構築しているWaabiもまた、DRIVE Thorを活用して、初の生成AIを活用した自動運転トラック輸送ソリューションを市場に提供しており、今後はDRIVE Thorを Waabi Driver に統合し、安全で信頼性の高い自動運転トラックを大規模に駆動する予定だ。


WeRide

WeRideは、ティア1パートナーのLenovo Vehicle Computingと協力して、DRIVE Thorで構築された商用アプリケーション向けのレベル4自動運転ソリューションをいくつか作成中だ。このソリューションは、レノボ初の自動運転ドメイン コントローラー AD1 に統合されており、機能安全、冗長安全設計、融合、拡張性が必須となる都市中心の幅広いユースケースに使用される予定となっている。

「GTC2024」展示ホールで公開されていたWeRideの「L4 ロボバス」





偉大で強力な DRIVE Thor

早ければ来年にも量産車に搭載される予定のDRIVE Thorは、生成AIエンジンやその他の最先端機能を備え、1,000テラフロップスのパフォーマンスを発揮する新しい Blackwellプラットフォームを活用して、安全で高セキリティの自動運転マシンを実現する。なお、NVIDIA DRIVEの最新情報はNVIDIAのGTC基調講演のアーカイブ動画て確認できる。

■【動画】GTC March 2024 Keynote with NVIDIA CEO Jensen Huang

「GTC 2024」公式ホームページ:https://www.nvidia.com/ja-jp/gtc/

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ロボスタ編集部

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