日本メドトロニックやキヤノンら、CT検査画像を立体視で観察するMRトレーニングシステムを開発 肺の立体的な構造理解を促進「MR Anatomy」

日本メドトロニック株式会社、キヤノン株式会社、キヤノンITソリューションズ株式会社、ザイオソフト株式会社の4社が連携し、CT装置(コンピューター断層撮影装置)で撮影した肺の構造をMR複合現実(Mixed Reality)で観察できるトレーニングシステム「MR Anatomy」の開発を発表した。
「MR Anatomy」は医療従事者向けのトレーニングシステムで、提供開始は2024年7月上旬を予定。2024年中に、4施設の呼吸器外科への導入を予定。発売から3年以内に30施設での導入を目標とする。

外科医によるMR Anatomyの利用イメージ

特に肺がん手術では区域切除と呼ばれる、より小さく腫瘍を取り除く手技が増加している。それに伴い医療従事者による更なる精緻な肺の構造の理解が求められている。このシステムは、現実世界に高精細な実寸大の肺の3D画像を表示、臓器や血管、病変の位置関係など、解剖学的構造の理解を深めることで、医療現場の教育・トレーニングの質の向上を目指す。

MR Anatomyの視点イメージ(見え方)高精細な3D画像の観察が可能


高精細な3D画像での観察により肺の立体的な構造の理解を促進

ザイオソフトの3次元医用画像処理システム等によって出力された「3Dデータ化した肺のCT画像」を、キヤノンのMRシステムで現実空間に実寸大の3D画像で表示。2D画像では把握することが難しかった、症例ごとに異なる病変の位置や血管の走行、臓器の大きさなど、肺の解剖学的構造を実寸大で立体的に表示することで、高精度な理解が可能になるという。トレーニングでありながら実際の検査画像を使用することで、さらに理解を深めることができる。

このシステムを活用することで、長年の経験で培われる肺の立体的な構造の理解を促進し、医学生や若手外科医をはじめとする医療従事者の教育・トレーニングの質の向上に貢献する。
なお、このシステムは教育・トレーニング用途のシステムであり、医療機器ではない。疾病の診断・治療・予防等に用いることはできない。


簡単準備と直感的な操作により手軽に使用することが可能

3Dデータ化した肺のCT画像を、専用アプリケーションを用いてPCでドラッグ&ドロップするだけでセットアップが完了し、すぐに観察を開始することができる。さらに、表示した肺の3D画像は、体験者の手で拡大・縮小や回転させることができ、直感的に操作することが可能。

■サービスの詳細
名称:MR Anatomy
料金:月額使用料25万円(税抜)
利用方法:ノート型PCの専用アプリケーションに(CT画像をもとにした)3D画像を取り込み、キヤノンのMR用ヘッドマウントディスプレイ「MREAL X1」を通じて、3D画像の肺のモデルを観察する。なお、クラウドへのデータのアップロードの必要はない。

画像作成から観察までのイメージ


医療現場の課題

外科医が安全で正確な手術を行うためには、臓器の構造を立体的に把握することが重要。しかし、その習得は容易ではなく、数年を要するとも言われている。特に肺がん手術では、区域切除と呼ばれる、より小さく腫瘍を取り除く手技が増加しており、それに伴い更なる精緻な肺の構造の理解が外科医に求められている。
そこで近年では、3次元医用画像処理システムで3D画像を制作し、平面のPCモニター上で観察をしているが、実寸大ではなく、かつ立体視できないため3Dの利点を生かしきれていなかったという。特に医学生や若手外科医にとっては、平面のPCモニター上で、短期間で立体的な構造を理解するのは容易ではない。


各社の役割

メドトロニックはこれまで、患者のダメージや痛みが少ない低侵襲な肺切除術に使用されるステープラーやシーリングデバイスなどの高度な技術を提供してきた。60年に渡って外科医の意見を収集し、その意見を製品、サービス、ソリューションに反映してきた。医療現場での課題に対し、キヤノン・キヤノンITSが共有するMRに関する知見と技術、そしてザイオソフトの持つ2DのCT画像をリアルな3D画像に再構成する技術を組み合わせることで、「MR による高精細な解剖観察」が可能になった。
メドトロニックが4社合同での開発の実現をリードし、本システムの販売を担う。現場の声と技術をつないだ本システムの提供により、医療従事者、患者さんを含む、医療全体の発展に貢献する考え。


今後の展望

2024年中に、4施設の呼吸器外科への「MR Anatomy」の導入を予定。そのパイロット導入の成果を検討の上、発売から3年以内に30施設での導入を目標としている。また、肺以外の臓器での活用や、術前シミュレーションにおける使用ニーズが高まった際には、医療機器としての申請を目指す。

本システムは教育・トレーニング用途のシステムであり、医療機器ではないため、疾病の診断・治療・予防等に用いることはできない。

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ロボスタ編集部

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