シャープと東北大学 量子アニーリングで1000台規模の自動搬送ロボットを同時制御するエンジン開発に成功 全体最適化を27年度に実用化へ

シャープは、国立大学法人東北大学と共同で、量子コンピューティング技術のひとつ「量子アニーリング」を応用し、千台規模の自動搬送ロボットを同時制御可能なエンジンの開発に成功した。

物流業界で深刻化する「人手不足の解決」をテーマに、自動搬送ロボットの多台数同時制御技術に関する共同研究に、昨年より取り組んできた。シャープは2023年12月の時点で、500台規模の同時制御を達成していて、今回の発表はその約2倍となる千台規模の同時制御に成功したもの。


この実現には、量子アニーリングの計算方法を、汎用コンピュータ上で疑似的に再現するシミュレーテッド量子アニーリング(SQA:Simulated Quantum Annealingの略)技術の活用により、従来は計算量が膨大になるため実現が困難だった千台規模の自動搬送ロボットの最適経路を生成した計算するエンジンの開発に成功した。

また、このエンジンにAIを組み合わせ、大規模物流倉庫向けアプリケーションの研究も開始。AIを用いて商品の需要予測から入出庫管理、商品・作業者配置までを最適化することで、入出庫フロー全体の生産性を向上するソリューションの開発に取り組む。2026年度中に性能評価や実証実験を行い、2027年度内の実用化を目指す。


シャープと東北大学の共同研究

シャープは、自社および他社向けの生産設備の開発で培った技術をベースに、自動搬送ロボットの開発を20年以上前から手掛け、独自の集中制御システム「AOS(AGV Operating System)」を実現している。
一方の東北大学は、量子アニーリングをはじめとする量子コンピューティング分野における有数の研究・教育機関であり、さまざまな社会課題解決に向けた実装化への取り組みを強力に推進している。
今回ターゲットとする物流業界では、ECの拡大などを背景にした取り扱い量や品種の増加に加え、「2024年問題」により、人手不足の深刻化が課題となっていて、多台数の自動搬送ロボットを活用した省人化・効率化へのニーズが急速に高まっていると想定している。両者の強みを融合することで、物流倉庫における劇的な生産性向上に貢献する技術の共同開発を行うことで2023年の合意に基づく成果として発表した。

なお、このエンジンのさらなる高性能化、およびアプリケーションの開発に関する研究は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「量子・古典ハイブリッド技術のサイバー・フィジカル開発事業」に採択された。


SHARP Tech-Day’24に参考出展

2024年9月17日(火)~18日(水)に東京国際フォーラムで開催する技術展示イベント「SHARP Tech-Day’24 “Innovation Showcase”」にて、「次世代SQAロボットストレージシステム」として、このエンジンを活用したソリューションを参考出展する。「SHARP Tech-Day’24」に関する情報や参加登録は、以下の特設ウェブサイトを参照。

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ロボスタ編集部

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