慶應義塾大学 ハプティクス研究センターは「CEATEC 2024」で触覚をロボティクスに応用した「臨機応変なロボットの動作」デモを公開している。慶應義塾大学は、人の力触覚の刺激量(力触覚量)を世界で初めて高速で計算することに成功。その技術を応用したもの。
慶應義塾大学 新川崎先端研究教育連携スクエア 特任教授で、慶應義塾大学ハプティクス研究センター センター長の 大西公平氏は「人はどのように力触覚を感じて、動作に反映させるのでしょうか。その仕組みをどのようにロボットに実装したらよいと思いますか」と問いかける。
「臨機応変なロボットの動作」とは
展示されている研磨ロボットは、アームにセットされたものが金属か木材かを触覚で判断し、金属(真ちゅう)であれば断面を鏡面研磨し、木材であれば断面の周囲を面取りする。その判定は力触覚技術を使って自動で行う。それが「臨機応変なロボットの動作」の意味だ。
ロボットアームのハンド部に金属(真ちゅう)をセットする・・
AIロボットは研磨の際に真ちゅうであることを力触覚で検知して・・
断面を鏡面仕上げに研磨する。
木材をセットすると・・
研磨の際にそれをAIが検知して面取りを行う。
大西公平センター長は「ロボットはコンタクトタスク(接触作業)が苦手です。人は「対象が硬いときはこうする」とか「対象が柔らかければああする」といった臨機応変な動作ができますが、現状のロボットはカメラによる視覚に頼っているので、対象が金属や木材であっても視覚だけでは見分けづらい場合、どちらも同じものと判断して処理ししてしまいます。そこで私達は対象の性質を知るために「力触覚」を活用します」と続けた。
人は「力触覚」により、対象の性質を瞬時に把握して握ったり、動作を変えたりすることができる。ビー玉、卵、テニスボールなど、材質や性質が異なるものも「力触覚」で判断して上手に掴む。壊したり落としたりすることはない。
「AIをどうロボットに活用するか」。大西公平センター長は「人間には大脳と小脳があり、ぞれぞれ働きが異なります。AI分野では比較大脳の研究が盛んに行われていますが、小脳は本能的な動き、暗黙知としてあまり研究は進められてきませんでした。しかし、2つの大脳と小脳それぞれの機能に着目して分析、数値化することで組み合わせ、人間のように臨機応変に動作させることが可能であることが解ってきました。私達はその研究を進めて、一例として今回このようなデモを作ってみました」と語った。
慶應義塾大学は世界で初めて「力触覚量」の高速計算に成功
慶應義塾大学は、人の力触覚の刺激量(力触覚量)を世界で初めて高速で計算することに成功した。力触覚量はその大きさを表す「強度」と触ったときの感触を表す「質感」で定義でき、いずれも具体的な数字データとして毎秒1000回も計算できる。
この新技術によって、ロボットも触った瞬間に数字で表される力触覚を持つことができるという。
力触覚データが得られれば、過去に記録された動作から対象にふさわしい動作を瞬間的に生成することができるので、人のように臨機応変な動作が可能になる。その実験例を会場の研磨ロボットで実際に確かめることができる。
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力触覚をロボットに活用した例を他にも展示
他にも展示ブースでは、力触覚を活用して、出荷前のスナック(袋菓子)の梱包の「空気漏れ」の有無(目に見えないパッケージの破損)を判別したり、遠隔で触覚を伝達するデモなどを見ることができる。
大西教授による講演『ロボットが臨機応変に動作する!』を開催
10月18日(金)の14:45~15:00に、大西公平特任教授による講演『ロボットが臨機応変に動作する!』も予定されている(会場内ピッチステージ)。
力触覚をロボティクスに応用する現状と未来に興味がある人は必見のブースと講座になっている。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。