工業教育向け「ROS 2」と「生成AI」ロボット教材の開発でアールティとバイナスが連携 工業高・高専、職業訓練校向け

AI・ロボティクスプラットフォームを開発している株式会社アールティは、ロボットエンジニアリング事業、FA教育システム事業をおこなう株式会社バイナスと「工業教育向けROS 2・生成AIロボット教材」の開発に着手したと発表した。工業高校等をメインターゲットにしたもので、2025年4月以降、バイナスから製品発売やサービス展開を目指す。



教材開発の背景と目的

開発する教材は「工業高校の単元:生産技術」をターゲットとした内容をめざす。AI・ロボット教育は、ここ数年で必修化されたプログラミング教育と同様に、教員間でも教え方や教材の模索が続いている。
特に、新学習指導要領に明記されているAIについては、各単元や授業内においてどのように習得させるか、先端的で変化の速いAIの分野ではどのように情報収集するのがよいのかが議論されている。

そこで、アールティとバイナスは、両社が共通に取り扱っているデンソーウェーブ社の小型協働ロボットアーム「COBOTTA」をロボットとして、世界的にデファクトスタンダードになりつつある「ROS」(ロス:オープンソースのロボット用ミドルウェア)の最新バージョンである「ROS 2」を中心に「Python」のプログラミング言語と生成AI等の最新の技術を取り入れる形で3年間の授業に利活用できる教材を開発する。



両社の強みを生かした教材開発


バイナスはFA教材の開発に40年以上取り組む

バイナスは、全国の工業高校や大学を顧客とした工業用機器を取り入れたFA教材の開発に、40年以上取り組んできた。教育分野での信頼関係を背景に、ロボットやFA機器メーカーと協力し、民間向けのFA設備の製造・販売も手掛けている。

特に、自動化が難しいとされる手作業や食品加工の自動化など、設備専業メーカーでは対応が難しいチャレンジングな案件において、実証実験から量産まで一貫して積極的に取り組んでいる。粘り強く設備を仕上げる姿勢が評価され、多くのユーザから信頼されているという。


アールティは人型ロボットや犬型ロボットを開発

アールティは、先端技術を中心に、大学、研究所向けのAI、ロボット開発のプラットフォームや教材を国内外に提供してきた実績がある。自動化が困難とされる食品業界の生食のピック&プレイスでお弁当製造を世界で初めて人型ロボットで実現するなど、AI、ビジョン、サービスロボットの開発では注目されているベンチャー企業。

参考:唐揚げの盛り付けする人型協働ロボット、アールティの「Foodly」 2022年撮影

また、アールティ代表の中川友紀子氏はROSの日本のコミュニティである一般社団法人ROSConJP(ロスコンジャパン)と米国のROSの管理団体であるOpenRobotics(オープンロボティクス)の理事であり、日本でのROSをリードする企業でもある。

AI・ロボット教材開発では業界をリードする両社がタッグを組んで、この教材を開発することでエンジニア教育に貢献する考え。


教材の概要

ロボット技術の概要
AI技術の概要
プログラミング基礎
ロボット制御用ミドルウェアとROS 2について
ロボットシステム実習



・ターゲット層
 工業高校
 工業高等専門学校
 ポリテクカレッジ、ポリテクセンター等の職業訓練校


ROSとは

ROSは、デファクトスタンダードになりつつあるロボット向けのミドルウェア(ソフトウェアの開発)。全世界で開発者数が爆発的に増えており、各種AIとの連携もROSは相性がよく、次世代ロボット技術として非常に注目されている。次世代技術として、AI、ロボットエンジニアの育成、確保は喫緊の課題となっている。また、今後、少子高齢化が進む日本でも、諸外国からのエンジニアの採用が大いに検討され、AIの活用が進む中、産業界でも世界的に育ちつつあるROS人材の採用に取り組み始めている。


株式会社バイナスについて

バイナスは、日本を代表する自動車、電子・電機、機械、食品等の製造業に最先端センシング技術を駆使した産業用ロボットのアプリケーションを提供。自動化が困難とされている手組み作業や食品加工等の自動化に積極的に取り組み、数多くのユーザから評価されている。

40年以上の実績ある人材育成を目的としたFA機器、産業ロボットを学ぶ実習装置は工業高校・高等専門学校・職業訓練校をはじめ、数多くの教育機関に導入実績がある。

人材育成はバイナスのミッションと捉え、産業用ロボットをはじめ、AI、IoTなどの最新技術を学ぶ実習装置を開発。「ロボットアイディア甲子園」、「ロボットSI検定」等の産業用ロボットに関わる業務自体を発信する企画にも積極的に携わる。

公式サイト
https://bynas.com/

株式会社アールティについて

「Life with Robot-ロボットのいるくらし-」の実現を目指して、最先端のAI&Roboticsにおける技術開発に挑戦し、AI・サービスロボット分野での高度人材育成から、教育・サービスロボットの自社開発、受託開発まで幅広い事業展開。
人型ロボットをはじめとするサービスロボットの開発・販売においては多くの実績がある。大学、企業向けの教育ロボットキットなども多数発売し、多数の学会から貢献賞などの受賞。また、ROSコミュニティへの貢献や、マイクロマウスなどのロボット競技会等エンジニアの育成支援も積極的に行なう。

近年はサービスロボットの教育や受託開発で培った技術やノウハウを活かし、食品工場で人手不足を解消するための協働ロボットや、工場向けのAIビジョンシステム、製造ラインなどの開発にも注力。

公式サイト
https://rt-net.jp/

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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