川崎市で都県をまたぐ自動運転バスの実証実験スタート、2027年度にレベル4の社会実装を目指す 出発式と試乗会を開催

川崎市は、自動運転EVバス(レベル2)の実証実験を2025年1月27日から開始、関係者と報道関係者を招待した自動運転EVバスの出発式と試乗会を川崎生命科学・環境研究センターで開催した。



近隣の小学校5年生の2人が児童代表として参加し、川崎市の市長にメッセージを読み上げるひと幕があった。


なお、川崎市では令和9年度(2027年)にレベル4での実用化(商用化)を目指している。

車両は自動運転レベル4のシステムを搭載したティアフォー製「Minibus2.0」全国に先駆けて導入。2024年12月25日に納車し、今年に入ってから既に400km近くの実証走行をこなしてきた。

新型の「Minibus2.0」。従来モデルと比較して、カメラを含むセンサーの数が増えて大幅に性能強化されている

右折をする自動運転バス 提供 川崎市

左折をする自動運転バス 提供 川崎市


深刻化するバス減便と運転手不足の課題

川崎市が自動運転バスの実証を積極的に展開するのには深刻な運転手不足とバスの減便という実状がある。平成30年度と比較して、令和5年度は川崎市の人口が3.8万人増加しているにもかかわらず、路線バス便は2,300便が減少(18%)。今後は更に深刻な状況が予想され、10年後には現状から3割程度も運転手が減る試算となっている。

提供 川崎市


実証実験の走行ルートは異なるタイプの2ルート

実証実験の走行ルートは2つ。いずれも、川崎鶴見臨港バスが路線バスとして営業運行を行っているが異なるタイプの2ルートが用意された(自動運転ルートが1、手動運転ルートが1)。

ひとつは「大師橋駅~天空橋駅」(運行ルート1)。川崎市川崎区と東京都大田区をまたぐ、全国初の試みとなった。もうひとつは、川崎市川崎区「川崎駅~市立川崎病院」(運行ルート2)。川崎駅前を含む、交通量がとても多い地域だ(そのため今回の実証実験では完全手動運転で運行し、地域住民に自動運転の認知度アップを目的としている)。

なお、出発式の試乗会は「走行ルート1」の一部で約2Km強を運転士と遠隔監視つきの自動運転で走行した。(体験レボートは別記事で掲載する予定)


羽田連絡線:大師橋駅(神奈川県川崎市)~天空橋駅(東京都大田区)

全国初の試みとなる都道府県をまたぐルート(神奈川県と東京都)。自動運転バスのレベル4の認可や、信号と自動運転バスとのシステム連携などは、各都道府県や警察署等との交渉で行われるため、地域単体での実施より難しい。実際、今回の実証実験では神奈川側には信号協調システムが導入されているが、東京都側では期間的に間に合わずに信号協調システムは見送られている(カメラで信号の認識が行われている)。

レベル レベル2で運行(一部区間は手動)
期間 2025年1月27日~30日、2月4日~7日
2025年1月27日は、川崎生命科学・環境研究センター(LiSE)から天空橋駅の往復
ポイント ・都道府県をまたぐルートは全国初
・車両側で信号情報を取得しながら走行する信号連携を実施(キングスカイフロント交差点)


川崎病院線:川崎駅~市立川崎病院

令和7年度の実証実験に向けて、センサー類を起動しながら有人運行を行い、走行データを蓄積する。駅前を走る自動運転用バス車両を多くの人に見てもらうことで、社会受容性を向上させる目的も持つ。

レベル レベル0で運行(完全手動で運行)
期間 2025年2月1日~2日
ポイント ・多くの人が行き交う川崎駅前を走るルート
・令和7年度の実証実験に向けて、センサー類を起動しながら有人運行を行い、走行データを蓄積
・駅前で多くの人に自動運転バスを見てもらうことで、社会受容性を向上

川崎市は「この実証実験は交通量や大型車の混入、路上駐車が多い都市部ならではの道路状況が、自動運転バスの走行に与える影響を検証し、運転手不足などの課題解決や都市の利便性の維持、都市部での自動運転レベル4実装に関するノウハウを全国に横展開するモデルの構築に向けた重要な一歩となる」としている。

■自動運転バスの試乗会(2025/01/27)、運行ルート1の復路(提供 川崎市)


出発式と説明会を開催、小学生も参加

実証実験の開始日である2025年1月27日、川崎生命科学・環境研究センター(LiSE)でテープカットを含む出発式が行われた。
川崎市長の福田紀彦氏、川崎市議会議長の青木功雄氏、大田区長の鈴木晶雅氏、国交省の藤田礼子氏、経産省の今野順子氏らが出席し、この取り組みの注目度の高さがうかがえた。また、バス運行の主体となる川崎鶴見臨港バスの野村正人社長、A-Driveの岡部定勝社長、ティアフォーのCSOの三好航氏、京三製作所の國澤良治社長らが出席した。


出発式に先立ち、説明会では福田市長や国土交通省の藤田氏らが登壇して、自動運転に対する期待を述べた。

川崎市長の福田紀彦氏(左)、国土交通省 関東運輸局長の藤田礼子氏

説明会や出発式には、自動運転レベル4の実装を加速させることを目的に設置した「川崎市レベル4モビリティ・地域コミッティ」の関係者なども招待された。

出発式のあと数人が、福田市長とともに自動運転バスに試乗。運転士は乗っているものの、ほとんどの区間での自動運転バスを体験した。


ほとんどの区間を自動運転モードで走行した


小学校5年生の代表児童から市長に向けてメッセージ

また、近隣の殿町小学校これまで自動運転とSDGsについて学んできた市立殿町小学校5年生の代表児童が学習内容や取組への期待を発表。殿町小学校 5年生の児童代表として犬童旬人さんと佐藤愛虹さんが福田市長にメッセージを読み上げた。



【殿町小学校 5年生の児童代表からのメッセージ】
今日は、自動運転バスの出発式に参加できて、とてもうれしいです。
私たちは今、総合的な学習の時間にSDGsについて学習しています。一人一人が興味をもった目標について、現状や取り組み、自分たちにできることなどを調べました。そして、先週の金曜日に学習発表会で発表しました。
また、自動運転バスからSDGsについて考えました。初めは、自動運転バスとSDGsは、あまり関係がないと思っていました。でも、クラスのみんなで考えるなかで、さまざまな目標と関連があることが分かりました。例えば、11番の「住み続けられるまちづくりを」や13番の「気候変動に具体的な対策を」という目標です。川崎市では、運転手が不足してバスの便数が減っているということを知りました。
自動運転バスが実現すれば、便数を減らさずにすみ、便利で住みやすい町になると思います。自動運転バスは、EVバスだから環境にもやさしいと思いました。
このように、持続可能な社会づくりのために、川崎市が全国初の取り組みを行っていることを知って、すごいことだなと思いました。自分たちが住んでいる町の中を走るのもわくわくします。2月5日に実際にバスに乗るのが、とても楽しみです。
そして、この川崎市の取り組みが全国に広がっていったらいいなと思います。


実証実験の概要


車両について

車両 ティアフォー社製Minibus 2.0
ポイント 自動運転レベル4のシステムを搭載した最新型EV車両で走行
・従来モデルと比較し、バッテリーの強化による航続距離の向上や複数のシステムにより冗長性が向上した最新車両で実証実験を実施
・本車両の納車及び公道での走行は全国初


一般向け試乗会

2025年1月28日〜2月7日に一般向け試乗会を開催する。試乗会は事前予約制となっており、川崎市のホームページから先着順で予約を受け付けている。なお、羽田連絡線は残席がないためキャンセル発生時のみ予約が可能となっている。

羽田連絡線
日程 2025年1月28日~1月30日、2025年2月4日~7日
時間 9時~16時(1日あたり7便)


川崎病院線
日程 2025年2月1日~2月2日
時間 9時~16時(1日あたり14便)


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ロボスタ編集部

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