大日本印刷株式会社(DNP)は、自動運転車の社会実装に向けて、車両の走行映像や位置情報などの実走行データをAIで分析し、自動運転車の導入検討に必要な情報を提供する「AI駆動型アセスメント」の取り組みを開始した。第一弾として、2026年9月から長崎県で実施している実証に活用している。
長崎県の産官学連携で「長崎版AI診断手法」を検証
今回の実証は、長崎県が進める「自動運転車の社会実装に向けた長崎版AI診断手法の検証事業」をDNPが受託して実施するものだ。
長崎県、DNPに加え、県内の大学も含めた産官学連携のもと、長崎市などで収集する実走行データをもとに危険場面や地域ごとの特徴を分析し、2027年3月31日までに「長崎版AI診断手法」を検証する計画だ。
自動運転車そのものではなく「導入条件の検討材料」を整えるAI活用
自動運転技術では、周囲の状況を認識し走行を判断・制御するための車両側AI活用が進む一方、地域で自動運転車を社会実装するには、道路の形状や交通量、歩行者・自転車の動きなどを把握した上で走行ルートや時間帯、運行・監視方法などの条件を検討する必要がある。
DNPは、こうした導入条件の検討にもAIを活用できると考え、実世界から得られるデータをAIが利用できる形に整え、AIによる分析結果と人による確認を組み合わせて導入検討に必要な情報を整理する取り組みを「AI駆動型アセスメント」と位置づけた。DNP自身が自動運転車を開発するわけではなく、データ整備と分析の支援に徹する点が特徴だ。
構造化AI技術を活用した3段階のプロセス
実走行データをAIが利用できる形に整備: 走行映像から道路環境や歩行者・自転車などの状況を読み取り、AIが危険要因を検索・比較・分析できるデータへ変換
分析結果を導入条件の検討に活用: 実走行データから得た道路・周辺環境の情報や危険場面を、既存の交通事故・危険シナリオ等の知識データと照合し、地域・地点ごとの特徴を分析
開発した基礎技術を長崎県の実走行データへ展開: タクシーなど既存車両10台以上から収集したデータをもとに「長崎版AI診断手法」を検証
DNPは、AIが地域の安全性や自動運転車の導入可否を自動的に判断するものではないとしており、AIによる分析結果と人による確認を組み合わせて情報を提供する立て付けとしている。
アマゾン ウェブ サービス ジャパンの支援で開発したプロトタイプ
DNPは2026年3月からアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社の「フィジカルAI開発支援プログラム」の支援を受け、ドライブレコーダー映像と位置情報をAIで解析・構造化する「AI駆動型アセスメント」のプロトタイプを開発した。
先行検証では、走行映像から事故リスクを抽出する処理時間を、人が同様の作業を行った場合と比べて約79%短縮した(6本の動画・10件の事故リスクイベントを用いたプロトタイプ段階での暫定評価で、実運用における性能や効果を示すものではないとしている)。
他自治体への展開も視野に
DNPは長崎県での検証を踏まえ、他の自治体や地域への展開を目指すとともに、自動車メーカーや自動運転開発企業、交通事業者等との連携を進める方針だ。今後は自動運転を先行領域としつつ、映像やセンサー、位置情報、行動データ、ログデータ等の実世界データをAIが利用できる形に整え、分析・評価に活用する事業開発も進めるとしている。
同社が培ってきた印刷と情報処理の技術・ノウハウを生かし、フィジカルAIの社会実装を支援していく考えだ。
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